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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
始まり始まり
4/444

4.お互いを知ろう

 御前(みぜん)の一族


 先にこの組織について軽く

話しておかなければなるまい。

わかりやすくいうともう彼女、

御前(みぜん) 小恋(ここ)がしゃべっていたが

除霊に関してはもっとも定評のある

この町の巫女、僧侶の一族である。


 おっと、ここで有識で博識な読者は

「ん? 確か巫女って処z……」

だとか思うだろうが、そこは時代の

変化だということで目を(つむ)っていて

ほしい。実際に古い慣習らしいし

時効が効くだろ。


「神前…………と言ったわね。

 さっきから目を瞑ってとか、一体

 何をブツブツ考えてるの?」


 キャラクターの物語を進めるのに

けっこう重要な解説なんだから、

あんまり横槍を挟まないでいただきたい。

キャラクターとか解説とかいろいろと

メタ発言っぽい発言だったが気にしない。


 というかこいつ今、心読み取ったよ!?


 何気に怖ぇえよ!!


「あぁ、目を瞑ってってアレのことだね。

 『ダメな巫女娘に悪魔の加護を。』の

 第一話の設定とかが甘くて、後で

 作者が泣きながら編集していること

 でしょ」


 お前もメタ発言をするなよ。

いやー本当にこれは申し訳ない、初めて

こうゆう携帯小説なんてものを書くから

イマイチ、設定を決めるなんて感覚が

つかめなかったんですよ。


「あ、それとも、第一話の最後の行で

 『悪魔のような青春』と言うところを

 ミスで『悪魔のような悪魔の青春』と

 ダブルで『悪魔』がはいっちゃっ……」

「もういいわ!!」


 もうやめて!とっくにライフはゼロよ!


 作者のな!!


 閑話休題


 さっきもチラリと御前が俺の名を

言っていたが、もうあらかたお互いの

自己紹介はとっくに終わらせておいた。

もちろん、俺は『半人半魔』の化け物

だとは言わず、あくまで悪魔諸々に

興味思考がある一般男子高校生だと

紹介してある。それはそれで軽く

問題がありそうだが仕方がない。


 なんと言ったって、俺よりも

相手のほうが問題があるのだから。

それもいろいろと。


 さてと、その問題児"御前(みぜん) 小恋(ここ)"、

自分の頭ひとつ分ぐらい小さい背丈で

小動物のようにも見えなくはない。

だが彼女は除霊のスペシャリストの下で

育ち、自身もその一人だと自負している。


 だが、霊感は皆無、0である。


 ……大事なことだからもう一度言う。


 霊感は一っっっ切ない。


 当の本人はずいぶんと高らかに

除霊ができると大声で言っていたが

(それも効果音付きで)霊が見えない

のであれば除霊どころか霊に襲われる

こともないのだ。彼女の親族たち、

つまりは巫女、僧侶のベテランたちは

彼女がただの修行不足だということで

この霊感不足を納得した……らしい。


 正直、巫女なんて言われた時には

冗談かとずっと思っていたが、どうやら

話してくれた御前の一族の細かい話から

して、そこのところは本当らしい。


 …………で、その一族の末裔が彼女、

"御前(みぜん) 小恋(ここ)"なのだ。


 だが俺は知ってしまった。俺だから

知ってしまったのだ。残念ながら、

この一族はこの代で除霊師の血の

終わりを迎えることを。親世代から

霊感を1でも継がなかったこの代で

どうあがいても廃業してしまうことを。


 ちなみに、俺は一介ではあるが

れっきとした悪魔なのだ。巫女や僧侶、

つまり除霊の専門家のような人々とは

関係を持つ気は毛頭さらさらない。


 それ以前に関わったところで別に

俺が殺されるというわけではないのだ。


 理由は明確。格が違うとでも言おうか。


 少年時代に契約した悪魔は巷にいる

生半可な低俗な連中とは違ったのだ。

本当に大当たり(・・・・)を引き当てたともいえる。

あえてかっこいい言い方をするとしたら、

「一介の人や悪魔無勢に俺は殺せない」のだ。

それくらい俺の立場は悪魔の中でも

上位種なのである。それに見たところ

この『自称巫女』を警戒する必要もない。


 理由は……言わなくても察するだろう。


 ゼロだもの、ゼロゼロ。


「で、こんな夜中にお前は学校で何を

 しようとしていたんだ」


 いきなり体育館に突入してきた自称巫女に

いろいろと話を聞いてみる。ちなみに俺は

見つかった通り、厨二病を開放していた。


「え、いやぁー、最近この学校でどうも

 お化けがでたー! とかそんな話を

 よく聞くの。なら、巫女の私が黙って

 動かないわけにはいかないじゃない?

 ほら! この巫女である私が!!」

「二回も言わんくていい」

「だから、夜の学校に忍び込んで

 そのおばけの全貌を暴こうかなって。

 も、もちろん! 見つけたからには

 きちんと祓うつもりだよ!」


「安心しろ。お前には絶っ対に

 お化けは見えないから。」


 ……とは言えなかった。

これは別に俺に残った微かな良心が

そうさせたわけでは決してない。


 単に「こっちのほうが面白そう」

だからである。この自称巫女の無謀な

孤軍奮闘を遠目で眺めておこう

と思っただけである。


「で、成果はあったのか?」


 わざとらしく小馬鹿にしたように

聞いてみた。さすがに失礼か。


「それが、一切合切ないんだよね。

 霊が見れると思ってたけれども、

 おばけはいなかったようで、残念」


 あ、そうだ霊感以前にこいつは

もともとが鈍感なのだった。

「ド鈍感」である。


 それと、重要なことを言っていた。

「霊が見たかった」と。つまり自分に

霊感がないことは、多少なりとも気には

していたらしい。


「俺は、どっちかというと霊感はある

 ほうだからこうやって降霊術を……」

「え! 霊感あるんですか!?」


 急にグイグイ来るなコイツ。


 いきなり敬語だし。


「ま、まぁね……」

「えー! ほんt……あ、ゴホン!

 へ、へぇーwwwべ、別に巫女である

 私にはもちろんもともとあるけどね!」


 詭弁(きべん)を垂らすな。お前の霊感は

知る限りぶっちぎりの最低だろうが。

俺は霊感どころか俺自身が『悪霊の類』

だから霊感があるのは当たり前なんだし。


 話を切り上げひとまず先に床の魔法陣の

残骸であるチョークの片づけを始めた。

本当は儀式が正しく終わればきれいに

何事もなかったように陣が消えるという

システムだったのだが、この自称巫女の

無駄(むだ)な邪魔によって、このように今は

腰をかがめてチョークの粉を集めている。

自称巫女はそれを見て手伝ってくれた。


 ありがてぇ。


 元凶はおめぇだけどな。


「俺ら、無断で学校にいるんだから

 見つからんうちにそろそろ帰らないとな。

 特に学校でやることなんてないからな。

 お前も帰れよ」


 床の掃除も関係して、すべての片づけを

終わらせたときには時刻はすでに22:00を

まわっている。


「あ、お前って言うなぁ! 私にも

 ちゃんと名前があるんだから!」


 んな、子供じゃあるまいし一々怒るなよ。

そんなしみったれたことで怒鳴っていたら

しわが増えるぞ。


 とりあえず、今日は妙に疲れた。

早く家路につきたいと俺は適当に返答を濁す。


「呼び方は考えとくわ」

「じゃーね。また来週ー」


 そういって小走りで御前は体育館から

出て行った。小動物らしくちょこまかと

している。


 今日は金曜日。明日から二日の

休みを挟んでまたいつもの日常が始まる。

そしてあの自称巫女とはもう話すことは

ないだろう。だが、この日のこの一件は

肝に銘じておこう。


 学校での儀式は危ないということ。


 俺はごまかすのが下手なこと。


 そして"御前(みぜん) 小恋(ここ)"、あいつの名前を。


 そして、俺たちの会話を体育館の隅で

ずっと(うつ)ろに見ていた薄気味悪い長髪の

女についてはあの巫女には言わないでおこう。


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