39.驚かそう
「うー、ヤだなぁ……」
「あ”? どうしたんだよミコ。具合でも
悪ぃのかよ」
「ううん。私、お化け屋敷が苦手なんだよね」
「って、てめぇそれで本当に除霊なんて
できんのかよ。巫女だろ、おい」
義堂、よく言った。
「霊自体は怖くないんだけれど……単純にワッと
驚かされるのが苦手なんだよね。だからまだ
ぼーっといるような霊とかは別に平気だよ」
「ふーん……
……………
わ”-------っ!!!!!」
「ぎゃあああああああああ!!!!」
「ぶっははは。本当なんだなそれ」
「あ”ー、びっくりしたー……グスン」
あー、義堂君が御前さんを泣かせたー。
いーけないんだ、いけないんだー。というか
まだ入り口だぞ。入り口だけでこれほど楽しむ
とは、”ゲイジ-”が初対面で「変」の
レッテルを貼っただけあるな。”ゲイジー”は
なんとなく察しがつくと思うが、こうやって
色々モノをいう性格ではない。
「もうそれやらないでね! やらないでね!
もう、絶対やらないでね!!!!!」
「あー、わかった……
…………
お”おおおおおおおおい!!!!!」
「びゃああああああっっっっっ!!!!
やらないでっていったでしょ!!?」
「あ”? 俺ぁ呼んだだけだぜ? んな
驚かすわけがねぇだろ? おれが」
「むーぅ……」
一応、もうこの二人には”ヴィーハ”と
”ゲイジー”を連れ添わせているのだが、
気がついてないようだ。ミコは霊感が
壊滅的にない関係で感じないのは分かるが、
義堂が反応を見せないというのは、
多分、”そんなこと”よりも目の前に
いるアホをおちょくることの方が大事だ
ということだろうな。
それと大きな音自体がミコは苦手な
ようで、とりあえず大きな音さえあれば
どこでも驚きそうだ。昨日の劇でも
演出の音にも驚いていたなそういえば。
そして俺は、部員だから優しくする
なんて生ぬるいことはしないし、逆に
部員だから多少、過激なこともできる
という認識だ。なんていっても俺は
悪魔ですから。ド級のSの化身だぞ俺。
(マスター)
(どうしたんだ”ヴィーハ”?)
今、ミコと義堂に憑いている”ヴィーハ”から
テレパシーが送られてきた。”ヴィーハ”はさっき
言った通り、俺のミコンとつながることができる
悪魔で、無論そのミコンがあれば持ち主である
俺と遠距離からコミュニケーションができる。
便利なやつだな、本当に。
(さっきから見てるけど、この女の子って
私たちのこと気づいてないの? 男の方は
私たちに気が付いている風だけれど)
(あぁ、あの子は霊の感知能力が0なんだ。
気が付かないのも無理はないだろうな)
(ふーん、珍しいね。私が見てきた中でも5が
一番最低だったのに)
(……その5ってどんな人だったんだ?)
(人……ていうか虫ね。なんか”ごきぶり”って
言うらしいわ、こっちの世界だと)
あいつ、ゴキ以下なのか……。前にも
虫でも5はあると言ったが、実際に思うと
”虫けら以下の霊感”とはなんという
パワーワードなんだ……。
(あれ、男の方は気が付いてる感じだって
言ってたけど、そんな素振りの一つか
あったのか?)
(うん、さっきから私に向かって「あ”ぁ!?」
って言ったりしながら自分の背後に”威嚇”
してるよ。ここまで警戒心が強い人間も
まず見ないわね)
(霊相手に喧嘩売ってるのかアイツ)
見えない相手にも妥協しない義堂のその
精神は見習うところがあるな。それにしても
ミコのやつ、大丈夫なのか?
(それで一応道は進んでいるんだよな? 他の
客を待たせたりとかしてないだろうな?)
(そんな感じはないよ。でもさっきから小声で
「ココー」とか「ギドー君」って言ってるけど
多分、「ギドー君」は一緒にいる男の方なのは
なんとなくわかるけれど、「ココ」って誰かしら)
(あぁ、それは俺のことだ)
(はい?)
(実はあいつらと俺は同じ部活……って言っても
わからないか。要は知り合いで、俺はあの
女の子にあだ名で”ココ”って呼ばれてるんだ。
俺がここにいるって聞いて会いに来たんだと
思……)
スゥ……
空気が変わった。あ、やばい。
(……この豚畜生がぁ!! マスターに手ぇ
出しておいてタダで還すとでも……)
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
うわ、テレパシーでも殺気を感じる。
テレパシーが使えるという面で非常に
便利なことから昔からよく”ヴィーハ”を
召喚していただけあって”ヴィーハ”に
ついてよく知っている。
”ヴィーハ”は俗に言う”ヤンデレ”
という種類の病気を持っている。特に
俺が絡んでいればさらにひどい。いや、
”ヴィーハ”は元々ストーカ気質がある、
というのも能力が「人の背後に憑く」
っていうのが大きい。それに俺が
優しくしてあげてしまったのが原因で
これをこじらせ今に至っている。
……どうしてこうなったのか……。
(いやいや。俺がそうしたくてそうしたんだ。
そんな物騒なことはさせないよ)
(私というものがありながら、この世界では
別の女とイチャコラとぉ、マスター!!!)
(落ち着け)
どこでどう間違えたらこんなことに
なってしまったのだろうか。やはり、
悪魔の扱いというのは難しいということか。
ベクトルが違う気がしないでもないが。
(大丈夫だ。俺はこの世界の「人間」には
興味はないって前から言ってるだろ。あの
女に関しては……そう”道具”程度にしか
思ってない)
(ふしゅぅぅぅっ……。そう……なんだ……
マスターは「人間」を好きにならないのか)
(あ、ああ)
(なら、私は射程圏内ってことでいいの?)
(…………
うん、まぁそういう認識でいいよ)
(ぱあぁぁぁぁぁっ。なーんだぁ。
先に言ってよーもー
マスターったらイケズー)
昔から”ヴィーハ”の性格はこんなんだが、
俺に感情を持つようになってからさらに
めんどくさいことになっている。いつか、
しっかりと「お断りします」と言わないと……
……半殺しにされそうだけど……な……
(そういえば”ゲイジー”は一応はたらいては
いるんだよな?)
(もちろん、でも「飽きた」って言って今は
入り口で寝てるわ)
(それ、はたらいてないね)
まぁ、効果がないなら正直やる必要が
ないから別にいいんだけどね。いや、
だとしても寝るなよ! 職務中だろ!
(”ヴィーハ”ちょっと悪いが”ゲイジー”の
こと起こしてほしいんだが、さすがに
寝るのはちょっと……)
(えー、正直私も眠たいから寝たいんだけど。
だって私たち「悪魔」で基本的に夜行性なん
だから仕方がないでしょ。こんな昼間に
呼ばれたことなんて一回もなかったし)
確かに俺も含め「悪魔」は夜に人を襲う
という意味でも昼間はあまり力を使わない
ようにしていて、この時間帯は寝ている。
俺の場合はこのあたりは人の生活に慣れる
という意味も込めてこんな生活はしてない。
”ゲイジー”は昔から無口な割にマイペースに
行動する傾向がある。そして大抵いつも
眠そうで、実際のところよく寝る。
ヴぁーーーーー!!!
「うわああああああああ!!!!
た、食べないでください!!」
食べないよ。
ミコが俺じゃなく、他のお化け役の
人にびっくりしている。声から察するに、
もうそろそろ俺たちのところに来そうだな。
(”リア”そろそろ仕事だぞ)
(………………ん、ふぁああ。あ、もう仕事か)
(お前も寝たんかい)
隣にいながら気が付かなかったわ。
俺の隣にいると生真面目な”リア”も
こうやって気が抜ける風潮があるのだが、
なんでだろうか……
…………
(”リア”お前俺のことすk)
(え、ええ、いやいやそんなことは微塵も
思ってないし、私たち悪魔は”恋”とか
男と女できゃぴきゃぴとかはしないし、
それにマスターはマスターだから私なんか
眼中にないことなんてわかっているs……)
(…………)
って言いながら顔を赤面させている。何?
今、魔界で「恋愛小説」でも流行っているのか?
だったら結構、流行に遅れているじゃないか。
今はやっぱ”異世界召喚”とか”異世界転生”だろ。
……と思ったけど今こいつら現に今
”異世界召喚”されてるじゃん。
魔界から現世に。
ちなみに言っていいのかわからないが、この
小説が現代を舞台にしている理由は、他の人気
小説のほとんどが”異世界”ばっかだったため
「異世界以外の”面白い”小説はないのか!?」
と作者が言ったことがきっかけだ。作者は
思い切り「外道」を進むスタイルなのだ。
閑話休題
話がずれすぎた。
ミコたちが俺の持ち場の目の前に来た。
”リア”さん、今です!!
ヴぁああああああああああ!!!!
「あ”? なんだてめぇ」
「え、何? どうしたの?」
「いや、なんでもねぇ。なんかいた
気がするんだが……気のせいだろ」
知ってはいたが二人とも反応薄いな。
真面目なだけあって本気で驚かしにいった
”リア”がかわいそうに思えてくる。
「わからないよー? このお化け屋敷
「出る」って噂がバンバン出てるし」
「あ”? んなわけねぇだろ。んな年に
なってこんなことも信じてんのかよ」
「え、当然でしょ? でなきゃこんな
部活やってないし、巫女なんてやって
ないわ。私もギドー君みたいなことは
たくさん言われてきたけど、それでも
ここまで私が頑張れているのは、霊とか
悪魔がいるとかを信じているってこと
だけじゃなくて、ココのことが大きいの」
「あ”? 神前が?」
「うん。私にこの部活の話を持ち出したのは
ココってことは話したよね。その時は私
ずっとそんな感じで馬鹿にされてて、色々
ヤなことをされていた……ってことまでは
知らないはずよね」
「…………あぁ、初耳だ」
「そんな時に。私のことを真っ先に信じて
助けようって動いてくれてのがココなの。
今までだったら、私の力不足が理由で一切
なんにもできなくって本当に私が巫女として
信じてくれるはずがなかったのに、ココは
そんなのお構いなしに私を巫女だと見込んで
助けてくれたの」
「ん? 「巫女と見込んで」ってシャレか?」
「おぉ! 本当だ! ……じゃなくって私を、
こんな私を巫女として見てくれているって
人がいるってだけでも私は頑張れる力になる
……と私は思ってるわ。だから、霊とかは
信じるし、それを何とかしてあげられる存在だ
って自負できるの。なんて言ったって、私は
最強の巫女”御前 小恋”なんだから」
\\ババーン//
「……けっ、んな今までの動きを見てりゃわかる。
こんなところでかしこまって言う必要はねぇよ。
てめぇと神前が”頭のねじがぶっとんだ”ヤツ
っつーのははなっから知ってるし、それを承知で
この部活に入ってるんだ。文句はねぇよ。
だがさっきの「霊を信じてる」とかを馬鹿にした
つもりはねぇが、そう聞こえちまったなら
そいつはわりぃな」
「ううん、いいよ。だって私たち部員同時でしょ?
そんなことでギャーギャー言ってられないよ」
…………
「ミコ、義堂……」
「う”わああああああああ!!!!!!
ココだぁあああああああ!!!」
「お、やっと出てきやがったか」
”リア”の時よりも驚いてくれていると
いうのは少しだけ嬉しい……が……。
「……ミコ、おい今「ココだー!!」って
驚いてたよな? あれは一体どういう意味だ」
「あ、いや、それは……」
「おい、んな事よりも先に言うことがあんだよ。
じゃねぇとこんなおっかねぇとこになんか
入る気にならねぇよ」
え、義堂怖いって感情もってるの?
「は? どういうことだ」
「仕事お疲れさんだとよ、夕霧の野郎が。
仕事中は電話の確認できねぇだろうから
俺たちに伝言を頼んだんだろうな」
残念ながら、電話を確認できる機会は
全然あったし、多分それはミコと義堂を
”お化け屋敷”に入れたい生徒会長の思惑だ
と思われる。とはいえなかった。




