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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
前の祭り
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37.楽をしよう

「あ、来た来た。今日もご苦労だねぇ」

「いや、生徒会長が呼んだんでしょう?」


 今日は学校祭の後半。つまり、2日目だ。

そして俺たち「異能部」は昨日と同様に、

朝早くに生徒会室に呼ばれたのだ。だが、

大方の流れや、今後の予定とかはメールで

ある程度知っているため、重要ではあるが

それほど重要な集まりにはならないはず

なのだが。


「で、夕霧ィ。また俺たちを呼んで一体

 何話そうってんだよ」

「ん? いや、昨日頑張ってもらったから

 ちょっとだけ”お礼”をあげようかなと

 思ってね」


 生徒会長は、おもむろにミコに茶封筒を

渡した。中身は7000円だ。俺はこの

金額には覚えがある。


「え、会長、何ですかこれ? 賄賂?」

「部費の足しとでも思ってくれていいよ。

 昨日、そこの副会長君からちょっとした

 商談を持ち出されて、それに乗っかった

 んだ」

「え!? なんでこんなに!!?」


 ミコの言うことは間違っていない。

これは正真正銘の”賄賂”だし、義堂の

写真を売り込んだときに出た利潤だ。

もちろん、モデルの義堂はそのことを

知らない。それにしても分割払いするの

かとおもったがまとめて、しかも翌日に

持ってくるとは。


「話はそれだけなんだけれど、神前君に

 お礼の一つはいってもいいんじゃない?

 用意したのは僕だけれども」

「へー、そんな交渉してたんだ…」

「お、おお、そうだな」


ごめんよ、俺はとっくに黒く染まって

しまっているんだ。俺を尊敬の眼差しで

見ないでくれ。それに、その金は俺が

裏で”仲間”を売って手に入れた金だ。

義堂にもう一度、俺は言わなければ

ならないことがある。


 あざーーーーーっす。


「それで、今日の予定なんだけれど

 基本的には昨日と同じような動きに

 なるだろうけれど、それぞれ行く場所が

 違うと思うな。まぁね、やってみてから

 それは連絡するとして」


 俺は最初は俺たちと同じ一年のやる

”お化け屋敷”の手伝いで、義堂が例の

”執事喫茶”を昨日からの続投。そして

ミコが一年の”コスプレ喫茶”での

手伝いだそう。


 うわ! めっちゃみてぇミコのコスプレ!

どこかのタイミングでその店寄りてぇ!!


「今日は特にいうことがないからそれじゃ

 解散!! 頑張ってねー」


 そういって生徒会長は俺たちを生徒会室から

はき出し、そのままどこかに行ってしまった。

生徒会長はどうもお忙しいようだ。本当に

忙しいのかはわからないが。


「それじゃ、持ち場に行くか」


 義堂は1階で、俺とミコは4階だ。義堂の

執事喫茶は1階の被服室と調理室をぶち抜いて

被服室側は机やいすで店として機能させて、

調理室側では料理を作っている。そのため

あそこの出してきた料理はかなりクオリティが

高いと、昨日時点でかなりの話題になっていた。

しかも、イケメン執事が応対してくれるとなれば

よりその噂に拍車がかかるものだ。対してミコが

今から行くコスプレ喫茶は主に料理といった

物ではなく、ただ単に好きな恰好に着替えられて

”おまけ程度”にお茶が飲めると言った感じだ。

その店で使っている機器も料理部から拝借した

ホットプレートとかで、実にチープなものだ。

だが、俺はイマイチあのような店は好きではない。

人と関わるのが嫌というのもあるが、


 まぁ、つまりは、

「モノを食べる時はね誰にも邪魔されず自由で

 なんというか救われてなきゃあダメなんだ

 独りで静かで豊かで・・・」

 ってことだ。


「ココ、久しぶりにネタ突っ込んだわね……」

「前にやったのは岸辺露伴だったか?」

「いや、廃工場の千鳥かな?」


 なんつー下卑た会話なんだ……

 いつか俺たち怒られるぞ……


「ココはこれからお化け屋敷だっけ?

 私はこれから部室によってから現場に

 向かうからそれじゃあね」

「あぁ、そっちも頑張れよ」


 ピース


 元気そうに、それも満面の笑顔でピースを

みせて部室に向かった。いつの間にか義堂は

先に喫茶店に向かっていたようで、俺も

そろそろ仕事にかからなければな。


 ……なんだろう、なんか嫌な予感がする。


 その予感はある意味当たっていた。


「生徒会長からめちゃくちゃ推されてたけど

 神前君って生徒会長と知り合いなの?」


 また生徒会長は俺の嘘情報を流しているのか。

至極、やめていただきたい。そして俺の役目は

その大きな期待に比例して、中でのお化け役

となった。次は俺が役をやる番かよ。


「んーと、ここに衣装があるから、とりあえず

 着てもらってあそこの陰に隠れておいて。

 そして人がきたと思ったら”ンバッ!”って

 出てきて引っ込んでくれればいいから」


 あー、なんか急に帰りたくなってきた。


 そんなことを思っていたら、もう本番になって

しまった。そのとき、俺に一線の電撃が走る!!


 これ、俺の眷属にやらせればいいんじゃね?


 それこそ主人失格というところだが、ここ数日

悪魔の召喚をやっていなく悪魔たちもそろそろ

飽きが来始めている。だったら、人を驚かすという

大役を買わせてやろうじゃないか! 悪魔は自身の

欲望の一つである「人の害悪となる」を満たすし、

逆に、お客さんは「本物」がいることで想像以上の

臨場感を味わえる。そして何より、俺が休める。


 WIN-WIN-WINの関係だと言える。


 俺は隠し持っていたミコンを取り出す。ミコンに

一つ魔法陣を描き、教室内にいる別の人たちから

気付かれない程度の声で唱える。


「***********」


 とは言ったものの、この手の悪魔というのは

予想がつくとは思うが、とてつもなくいるわけで

今回は誰を呼び出そうか考えていなかった……。

さて、誰を呼び出して客にどんな恐怖体験を

味わわせてやろうか……。誰かに見られている系か、

背後からの気配系か、はたまた俺がいままでに

赤の他人にやってきたように、単純に驚かす系か。


 いや、そうだな、うん

 よし、全部使うか。


「”具現召喚・ゲイジー”

 ”具現召喚・ヴィーハ”

 ”具現召喚・リア”」


(………………どうしたのマスター)

(ってアレ? あんたたちも呼ばれてたの?

 てっきり私だけかと)

(ちょっと何!? あ、マスター! って

 急に何かあったの!!?)


(あー、俺の勝手な都合で呼んで悪いな)


(そんなことないわよ、だって私マスターと

 こうやって会えるってだけでいいもん)

(ちょっと! やめなさいよヴィーハ!

 私だって同じなのよ! だからそんなに

 マスターにすり寄るんじゃないわよ!)

(……)


 ”ゲイジー(英語:GAZE)”


 ふつうは「見入る」とか「見張る」などの

熟語とともに使われるが、この単語一つでは

「凝視」「熟視」という意味がある。その通り

なのだが”ゲイジー”は見つめるだけの能力で

あって、特にすごい力とか何かを動かすなんて

力はない。ちなみに”ゲイジー”という名前では

最初は呼んでいなく人称変化である「ER」を

付けて”ゲイザー”と呼んでいた。が、個人的な

好みによって少し変えて”ゲイジー”と

呼んでいる。こっちの方が女の子っぽいかなと

いうことで。


 ”ヴィーハ(英語:VIHIND)”


 勘の鋭い読者なら気が付くかもしれないが

これはスペルミスだ。正しくはVではなくBで

「BEHIND」と書き、「背後」という意味だ。

この悪魔は言ってしまえば、俺のミコンと

人をつなぐ存在なのだが、別に単体でも

背後にいるという圧迫感がある悪魔だ。

正しい使い方としては、人の背後に憑き

対象が恐怖を覚えているところにミコンから

出した別の霊を憑かせるという”触媒”の

ように扱う。


 ”リア(英語:REAL)”


 これは説明のいらないくらい有名かつ

基本的な英語のため説明を省くが、これは

「具現」という意味で使う。というのは

この悪魔はこの姿のまま驚かせるような

”美しくない”驚かせ方はしない。その

人物が一番忌み嫌うものを「具現」させる

タチの悪い驚かせ方をする。この霊こそ

”ヴィーハ”のような人と霊をつなぐような

悪魔がいて本来の力を発揮するが、今回は

そこまで客を驚かせるつもりはない。


 ちなみに”ゲイジー”は無口な性格で、

”リア”は冷静な委員長気質。そして、

”ヴィーハ”はやんちゃでよく”リア”を

よく怒らせている。なんでこんなにも

こいつらについて詳しく、これほどまで

俺が好かれているのかというと


 俺が例のいたずらによく使って

 あげていたからだ。


(で、マスター。久しぶりに呼ばれたは

 いいけれどここはどこ? それに

 今日は明るい時間に呼んだ……わりに

 ここは暗いのね)

(どーせ、マスターのことでしょ? また

 気が向いたからーとか言って私たちの

 ことを呼んだと思うよ)

(‥…また?)


 すまん、あの頃は若かったんだ。だから

もうあんな使い方はしないでおくよ。まぁ、

今も似たような内容で呼んではいるのだが。


(えーとだな。ここは”お化け屋敷”って言って

 だな、お化け……まぁお前らみたいな奴らを

 娯楽の一部にしたもののことだな)

(は? 人間って何? バカなの?

 アホなの? 死ぬの?)


 ……俺も正直そう思う。


(それで、俺は今その娯楽の手伝いをするん

 だが、お前らの力を使えばいいんじゃないか

 と思ってな。それに、お前らも最近俺が呼んで

 ないから暴れ足りないだろ? いや、だから

 ってトラウマ級に怯えさせたらダメだけど)

(………………ボソボソ……)

(あ、ゲイもやりたいって言ってる。いいよー

 私たちもなんだかんだいって暇だしねー)


 ということで悪魔を言いくるめることに

成功し俺は無事、楽ができそうだ。悪魔を

言いくるめるってけっこう難易度が高そうに

聞こえるが、想像以上に俺に甘ちゃん

なんだなこいつら。それと”ヴィーハ”、前も

言ったが”ゲイジー”をそう略して呼ぶな。

”ゲイジー”は萌え要素高い悪魔なんだから、

そんな雄々しい呼び方は似合わない。


 ”ゲイジー”と”ヴィーハ”はお化け屋敷に

お客さんが入って早々に憑いてもらう。

これで客の恐怖ゲージをあげておいて、

最後のトリとして”リア”をバーンと出す。

それで俺は、裏方でスマホでもいじって

のんびり過ごす。


 完璧じゃあないか。


 そして、このお化け屋敷がこの後

ものすごい話題になるのはまた後の話。


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