28.話をまとめよう
「……で、私たち生徒会の協力なく、無事
その「学校七不思議」は解決したのですね」
「いや、厳密には解決してないな」
では、いつものまとめに入ろう。
今回は、無事「学校七不思議」の一つ
「動く銅像」の謎を解明できた。これに
尽きる。そして「異能部」に念願の
部室ができ、今後はそこを拠点に
活動することになりそうだ。
色々、問いただされそうだから先に
言っておくと、ミコがいなかったら
この問題は解決しなかった。そのため、
今回のミコの活躍は100点満点中
100まではいかないにしても80点は
固い。残りの20点は巫女としての
スキル不足によるものだから諦めてくれ。
そして、俺とミコは事の終わりを告げる
ため、生徒会に赴き副会長と相対している。
「そうですか、それはよかったですね。今後も
このように問題を解決していただければこの
学校はさらに平和的になるでしょう」
「お、おう。それは、どうも」
「ですが、あまり解決しすぎるのもあまりよろしい
ことではございません。平和ほど退屈なものは
ありませんので、この活動もほどほどにお願い
したほうがよろしいかと」
「あぁ、そのことについても俺たちは話に
来たんだ。じゃなかったら、こんな場所で
話そうとは思ってないさ」
「……と言いますと?」
「……この話は、なかったことにしてくれないか」
これは"ロズ"と約束した、いわば俺の勝手な
都合のいい頼みではあるが、副会長がそう解釈
しているなら、それはそれでいいだろう。
それが、ミコに提案した"お願い"であり、
ミコはもちろん反対した。部のキャリアを
公表しないということなのだから、いつまで
たっても部活動の評価は低いままである
ことを意味するからな。だが、理由を話して
いくにつれて理解したのか、承諾をしてくれた。
これは「異能部」の今後の活動を左右する
重要な選択だ。部長が決めるべきだろう。
「なかったことにするとは一体」
「あの銅像はもう"動かない"。だが、まだ
動くといううわさを流しておいてくれ。いや、
俺たちが働いたという事実を隠すだけでいい。
とりあえず、あの銅像はうちの学校の大事な
「財産」だからこそ、注目されるような
プラスの要素を消すのはよくない」
「……わかりました。ではあの日に言った通り
私は一切のこの話を聞かなかったことに
してあげましょう」
「あ、あとさ、銅像周りの草木をもう少し
綺麗にできないかな?」
ああいう陰湿なところにこそ、霊は
憑きやすい。……なんて付け足しの理由で
ごまかしはしたが、これも"ロズ"との
約束を守らなければならないという
使命でしかない。
「二宮金次郎を綺麗にしてくれ」と。
そうすれば"ロズ"もきっと満足だろうし、
噂目当てに銅像を見に来る人が増えるだろう。
俺はこんなだが、アイツの主人だ。
これくらいしてやらないとな。
「あれ、そういえば会長は?」
ミコが思い立ったように言う。
確かに生徒会室にいないな……。
「ええ、会長は死にました」
「……えっ」
「冗談ですよ」
副会長、あなたが言ったら冗談でも
冗談に聞こえないからやめてくれ。
見たか、ミコのさっきの驚愕の顔を。
撮ってやりたかったわ。
「会長は今、部室の訪問に行っています。
学校祭まで残り1週間を切ったので、
それぞれの部からの要望を聞いています」
生徒会長から先日、部室にあった仏像の
詳しい案件を聞かされた。どうやら、
「心霊現象を扱うんでしょ? なら少しでも
"保険"があった方がいいと思ってね」
といっていたのでそのまま「異能部」の
備品(お守り)として扱ってもよいらしい。
……うわ、いらねぇー……。
それとこれは後日談なのだが、この仏像の
命名式が行われた。というのもミコが俺に
あだ名を付けたとき同様「仏像と呼びたくない」
ということだった。いや、巫女がそんなこと
言っちゃあかんやろ! と思ったがそこで俺が
ツッコまなかったのでそのまま命名式が行われて
しまった。結果、あの仏像は「井上」と名付け
られた。理由は単純明快「いのうぶ」だからだ。
「では、私も忙しいのでこれで要望がないの
でしたらお引き取りお願いしたいのですが。
それと、銅像の清掃については会長と話あって
保健委員会、及び生活委員会に詳細を伝えて
おきたく思います」
「サンキュー、それじゃあ頼んだ」
用事も済んだことだし、俺とミコは生徒会室から
出ることにした。これでやっと「動く銅像」は
何一つ思い残すことなく解決だ。部室に義堂を
残したままだし、部室に戻らないt……
あれ、義堂? と、生徒会長?
「あ"終わったかてめぇら。夕霧がうちの部活に
用があるっつって来たんだが、てめぇらが
いねぇからってずっと居座ってやがって
邪魔だったから、連れてきてやったぞ」
生徒会長、部活を訪問せずなんでうちに
居座ってんだよ。いや、「異能部」もその
訪問先に当たるのか。だが俺たちは
学校祭には参加しない方針だ。
「あー、生徒会室にいたんだね。だったら
先に言ってもらえたら僕がこうやって
君たちの部室にいかなくてよかったのに」
「生徒会長、副会長から話を聞いてますが、
俺たちは部として学校祭には……」
「いやいや、違う違う。君たちには要望を
聞きに来たんじゃないよ」
はい?
「君たち確か除霊以外に"お悩み相談"も
やってるんだよね? だから、生徒会から
学校祭関係で色々お願いをしようかなぁ
と思ってね」




