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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
worker in the dark
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26.真実を見極めよう

「でっでっでっでっでっでっでっで…………」

「BBBBBBBBBBBBBBBBBBBB」

「あれ……? 銅像の変化が止まった!」


「前回の続きをしなくていい」


 今、俺たちは部室にいる。それもミコと

約束した明後日の放課後だ。ミコは

義堂と一緒に茶番を担当した。義堂も

よくその茶番に乗っかろうと思ったな。


「で、進化キャンセルした後は

 結局どうなったの?」

「もうそのネタはいい!」


 あの時、”マト”を主人の名によって

呼んだが進化キャンセルよろしく何も

起こらなかった。俺を拒否したのか?


 いや、その可能性のほうが高いだろう。


 俺が出せる「悪魔・霊」は眷属として

ミコンによって縛ってあり、状況に応じて

呼び出すことができる。ちょうどいいし

ポケモンで例えようか。俺のミコンは

「大容量のモンスターボール」であり、

何かあれば、


「いけ! 相棒!!」


 ……といった具合に出すことができる。

そして、モンスターボールから出た

モンスターはトレーナーの言うことを

聞いて、その通りに動いてくれる。では、

そのトレーナーがいないならばどうなる?

ようは「逃がす」ということになるが、

それが主人のところに帰るなんて都合の

いいモンスターなんていないだろう。


「で、何か私がいない間に色々とあった

 らしいし、聞きたいんだけど」


 ”部活動”をするならこの情報は共有

しておかないと解決はしないだろう。そして

俺と義堂は銅像のあれこれを話し、結果

ミコは「私はイラナイ子なんだ」と拗ねた。


「だって! 私がいなくてもなんかいい感じに

 話が進んでたんでしょ!? 巫女の力なんて

 使わなくてもいいんでしょー!!」


 ……メンドクセー……


 「いや、霊がいるんじゃないか? とまでは

 わかったんだ。だが、除霊となるとやっぱり

 巫女であるミコの力がいる。だから、こうして

 また集まってるんだろ?」

「……」


 口をとがらせて悔しがってる。何か気を

聞かせて言っておかないともっと面倒な

ことになりそうだ。


「とりあえず、おとといの俺たちが出した

 結論は、男二人じゃ何も解決しなかった

 ということだ。最強の巫女”御前 小恋”の

 力がいるんだよ! 頼む!」

「……」

「……」


「……………

 よく聞こえなかったからもっかい言って……」

「お前、絶対あんまり傷ついてねぇだろ」


 やっぱりミコは放っておいてもよかったか?

いや、そういうわけにはいかない。ミコから

この噂の詳しい内容を聞いておかないと。俺は

いじけるミコに噂の概要を聞いた。ケロッとして

話し始めたし本当に傷ついてないようだな!

俺の”思いやり”を返せ!!


「えーっと”動く銅像”についてでしょ?

 銅像については、本物を見てきたらしいし

 場所とかの説明は省くけど、定番中の定番の

 ”学校七不思議”よねぇ。この話は今年になって

 出てきたもので、前はそんな銅像があった

 だなんてこともみんな知らなかったらしいの。

 この噂が学校内に流れ出してから、その

 銅像の存在を知った人がとってもいて、

 昔のその銅像がどんなものだったかを知ってる

 人がいなくて、情報が少ないのよ」

「最初にその現象に会った人は?」

「うーん……、言伝(ことづて)だから信用性がないけど、

 確か、夜に学校に行ったら台座の上から

 二宮金次郎がいなくなっていたけれど、

 翌日にもう一度、その銅像を見にいくと

 フツーに二宮金次郎が戻ってきていた。

 ……って感じかな? それから、こんな現象が

 いろんな人に見られたことからこれが

 ”学校七不思議”の一つになったんだって。

 でも、夜になってからしか現象が起きて

 いないから、噂だと二宮金次郎は夜に

 動き出すって言われてるよ」


 活動時間が夜なのはわかるが、問題は

俺たちが台座を見た時だ。


「あ”? 俺たちが夜に見にいったら

 もとに戻っていたぜ。そいつはなんでだよ。

 まさか、二宮金次郎が俺たちに勘付いて

 バレねぇようにふるまったわけじゃねぇだろ」


 俺はその説が一番正しいと思っている。

霊にも自我というものがある。特に俺、

つまりは前の主人が探しているとなれば、

気付かれたくはないだろうな。


 気が付けば今は6時だ。おとといは確か

これくらいの時間に台座を見つけたんだっけ?


「確かこれくらいの時間から銅像は

 とっくにいなかったよな?」

「あぁ、そういやそうだな……」

「今、その現地に行っておくか。タイミングが

 よければ動く瞬間を見ることができる

 かもしれない」


 おとといよりかは早めに行動するつもりだが

それで解決するとは思えない。これは別に、

確固たる理由があるわけではない。直勘だ。

だが、早め早めで行動しておかないと

後手に出る可能性が出る。物事は早いに

こしたことはない。


「私、その銅像の場所までは知らないから

 連れて行ってほしいな」

「あぁ、暗ぇから気を付けてついて来いよ」


 そういって義堂はミコをエスコートした。

 義堂のギャップ萌えが激しいですなぁ。


 しかし、曇っているせいもありおととい

よりも今日の6時は暗く感じる。暗い方が

霊は活発に動き出すから、もうとっくに

居なくなっている可能性があるな……。


 そして、俺たちは台座のところまで

やっとの思いで辿り着いた。明かりも

ないから、ミコは足元がおぼつかない

様子だった。それに巫女服だからなぁ。

動きづらいだろうに……。それに、とっくに

俺たちは後手に回っていたようだった。


「あ”! クソが! もういねぇじゃねぇか!」


 俺たちは出遅れた。それに気付いた義堂の

判断は早かった。早口で俺たちに言う。


「お”い! 俺は探しに行く! 神前ィ

 てめぇはミコ連れて探しに行け!

 今のミコには誰かついてねぇと

 危なっかしいんだよ!」


 そういって義堂はダッシュで元の

道を戻っていった。ミコは草履(ぞうり)を履いて

いるため、こんな草木がうっそうとしたところを

スムーズに歩けない。それに暗いから余計

苦労している。


 草履も用意するのか……恰好は一丁前だな。

 ”恰好”だけはな!!


「え? 義堂君は?」

「二宮金次郎を探しに行ったぞ。って

 そのこと聞いてなかったのか」

「いや、聞いてたけど……なんのことか

 わからなくって……」


 わからない?


「え? 何がわからないんだ? だって

 二宮金次郎の像本体がなきゃ何も

 始まらないだろ?」

「ん? ココは何を言ってるの?


 二宮金次郎ならいるじゃん


 ほら、あそこの台座の上に」

「え?」


 最初は冗談だと思ったが、暗いだけあって

あの台座には”二宮金次郎”が乗っていた

ということまでは分からないはずだし、

確かにミコには二宮金次郎の像が見えている

ようだ。ミコには見えて、俺と義堂には

見えない……。あれ? こんな現象、

前にあったような……。だが、そうだとしたら

義堂があの時に銅像を見つけることは

できないはずだ。


 ……急にいなくなる銅像。

 ……夜の暗いときに活動する。

 ……ミコにだけ見える。


 …………


 …………


 暗いときに活動する……?


「……あっ!!!」


 何が起こったか全て理解したが、これを

確信に至らせるためには情報が足りない。

……いや、あの時と同じことをやればいいんだ。

が、それに必要な”道具”を使わないだろうと

部室に放置してきてしまった。


「おい、ミコ!!」

「えぇ!? どしたん?

 そんな緊迫して??」

「携帯もってないか?」

「え、こんな時にアドレス交換とか

 チャラいナンパ男でもやらないよ

 もっと雰囲気を大事にしt……」

「ちがーう!! ライトをつけたいんだよ」

「ライト? 目が慣れてて私はもう見えるし

 いらないんじゃ……? いや別にいいけど

 なんで、必要なの?」


 そういって俺にミコは自分の携帯を

渡してきた。というか、本当に携帯だった。

スマートフォンじゃなくてガラケーだこれ。

俺も30歳近くにもなると、こんなものにも

ノスタルジーを感じてしまうなぁ……。

そんなことはどうでもいい。ガラケーでも

ライトをつけるだけならスマートフォンと

どっちでも変わらない。俺は”#”を長押しして

ライトをつけ、台座の上を照らす。

今の若者は”#長押し”という行為を

知ってるのだろうか……?


 やはりか。

 台座の上にはいなかったはずの

 二宮金次郎がそこにはいた。


「うん、ミコ。あの銅像はやっぱり

 何か憑いている気がする。だから

 除霊の準備をしておいてくれ」

「? なんかよくわからないまま話が

 進んだ気がするけど了解した!!

 この私、最強の巫女”御前 小恋”の

 出番なのね!? まかせなさい!」


 ミコは目を閉じ、ミキに憑いた霊を

祓った時のように唱えだした。効果は

ないけどね。その間に俺は銅像のもとに

向かい、おとといと同じように銅像に

語りかけた。


 すまないな。そりゃ俺が呼んでも

 反応しないわけだよな。

 ”名前”を間違うとは主人失格だ。


(我、神前 滉樹の名によって命ず。

 ”ロズ”、応じよ)


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