21.話をまとめよう
第一幕の終わりに続き、全く同じ
タイトルを使うが許してくれ。そして
今回の話のまとめは正直、けっこう
多くなると思ってくれ。というのは、
前回、義堂がずーっと語るパートだった
せいで他のことに全く触れてない。
だからこの場を利用して色々と説明する
必要があるからで、まとめという名の
ひとつの物語になってしまった。
さてと、何分話すことが多いため何から
話せばよいのだろうか。よし、ならば先に
義堂の言葉の補足を一つしようか。前回、
…………ではなく前々回に俺がボソッと言った
ことなのだが「俺の血を飲むと覚醒する」
といったはずだ。厳密には「人の血で覚醒
する」のほうが正しい。
というのは元々、悪魔というのは食事が
いらなく"活動"するときにだけあるだけ
あればいい省エネなものなのだ。"メア"の
場合は"人の生気"で、俺は"人の血液"が
食事となるイメージでいい。
そして、俺は「半人半魔」であり、その
食事を血を介していて自給自足ができるのだ。
が、それは俺の体からジャンジャン栄養が
奪われることを意味するため、あまり
使いたくない手段のひとつだった。こんな
頭を殴られただけでそんなピーキーな力を
使う展開になるとは。もう少し、奥の手は
とっておきたかったというのに。
「で、私の今回の活躍は?」
「ない」
感想を聞くのが早い! そして
本当に今回に関しては、ミコ、
お前の活躍は微塵もなかったし何より
問題しか起こさなかったぞ。
ちょうどいい、ミコのことについても
話す必要がある。というのも、今回の
そもそもの原因がこのアホだったわけで、
そのせいで俺が「悪魔」とバレかけ、義堂が
腕に全治1週間の傷を作ることとなったが、
鉄パイプでボコスカに殴られ、最悪、骨が
折れててもおかしくないというのに、風邪
みたいにわずか1週間で治るというのも
おかしな話である。まぁ、頭に針一本分の
傷を負ったが、一度寝ただけで治って
しまった俺が言うのもなんだが。
で、ミコについてだが、どうも今日は
ずいぶんと寝ていたのだが、その理由が
分かり、俺はそれを聞いて笑って
しまった。というのは原因は俺にあり
俺が朝に「部活を作ろう」と言ってから
ずっとうれしくてテンションが高く、その
テンションが限界値に達し、睡魔が昼に
襲ったそうだ。子供かよ。
そうだ、あれからの抗争の話もして
おかないとならないな。本当にまとめかよ
ってくらい話すことが多いなぁ。
結論から述べるとすると抗争は実はもう、
起きることはそうそうない。それも今回の
俺の活躍の一つだった。どうも、銅栄高校で
あれから「廃工場の悪夢」という、都市伝説が
生まれてしまっているようで「英嶺高校の
近くにある廃工場でタムロしていた銅栄の
生徒が英嶺高校の連中に襲われた」
というものだ。ここまではただのヤンキーの
武勇伝に過ぎないのだが、その襲われた内容が
なぜか書き換えられ「英嶺と銅栄が喧嘩
していた時期に死んだはずの生徒の亡霊を
使って銅栄の生徒に復讐してきた」というもの
になってしまったのだ。しかもそれがあの時に
俺たちが追い払った連中によって広まったので
「え、あんな強そうでお化けなんて信じそうも
ない怖い先輩がそう言ってるんだから、
あの噂は本当なんだ!」
……といった具合にその作り話が広がり、今は
銅栄の生徒どころかうちの生徒もあの廃工場に
近づくことがなくなり、喧嘩ができるような
場所がなくなったために抗争は起きなくなった。
正直な話、「抗争」自体が銅栄高校内で問題視
されていたために、銅栄の教師がこのことを
機に生徒の喧嘩争いについて指導が入った、
というのが一番有力的な説だろうな。
だが、俺にはどうしてもわからないことが
あった。それは、なぜあの廃工場が抗争が起きる
スポットとなっていたかなのだ。他にも探せば
ありそうだが、なぜあの廃工場でだけ抗争が
起きていたのか。それだけずっとわからなかった
のだが、俺たちが廃工場に行ったあの日から、
3日後に義堂とともに廃工場を訪れたときに
その理由が明らかになった。
「で、こうやって廃工場にもう一度来たわけ
だけど、なんでここで銅栄の連中と戦う
必要があったんだ?」
「あ”んな決まってんだろ。ここが俺の
住んでるとこだからだろうが」
「えええ!!?」
意外な理由で驚いた。当たり前だ。
廃墟がマイホームだといわれたら誰だって
そう思う。
「義堂、お前まさかホームr……」
「ちげぇよ、俺が好きでこうしてるだけだ。
もちろん、ここからすぐ近くに俺が住んでた
家もあるし、おやじもばばあもいる。だがな
俺にとっちゃ、あそこは家じゃねぇし、
おやじもばばあも家族だなんて思ってねぇ。
あー……なんつーか……居心地が悪いんだ。
だから俺はこーやってここに住んでる。なんだ
てめぇ、文句でもあんのか」
……文句はない
たしかに、あの廃工場にはなぜか布団があり
ほんの少しだが、生活感があった。義堂は自分の
家庭になにかしらの問題を抱えているようだが、
それには首を突っ込むわけにはいかない。俺が
ポッとでてきてもこういう問題は解決しないし
逆に煙たがられるのが目に見えている。
「銅栄の野郎がな、最近になってここにタムロ
し始めて、俺があいつらの集まりをぶち壊して
やったからこーやって抗争が起きちまった。
俺がそもそもの原因っつーことでもほかの
生徒にかかわらせたくなかったんだがな。
ま、それよりも先に火種はあったさ、俺が
やったのは火種にガソリンを撒いただけに
すぎねぇよ」
そうだったのか、と思ったが俺はそれよりも
こんな不祥事だらけの生徒の隠蔽を行っていた
生徒会長が何気にすげぇヤツなんだなと
思い始めていた。生徒会長はもちろん、
この事件については一切学校側の人間には
バレていない。
しかし、どうしても例のでっち上げ都市伝説
「廃工場の悪夢」だけは広めるのを防ぐことは
できなかったが、生徒会長いわく
「んー、別に大丈夫そうかなぁー? あくまで
都市伝説ってだけあって、すぐにこの話も
忘れられるし。それに今はあの廃工場に誰も
近づけさせないちょうどいい理由にも
なってるしね。うちの生徒の『住む場所』を
守るのも生徒会長のつとめさ」
ともいっていたし、問題はないだろう。
というか義堂の生活について知ってたのかよ。
なら先に言ってくれればよいものを。
さて、話としてはこれで終わりになるが俺たちの
部活についてだ。現在部員は「部長:御前 小恋」
「副部長:神前 滉樹」、そして「義堂 力也」の
3人で始めることとなった。そして部活名について
俺とミコで軽く論争があった。それも非常に
ろくでもない。
「いいか、俺たちは除霊もするが悩み相談も
するって副会長に言ってしまったんだ。
だから、除霊にのみ絞った部活名は
やめよう!」
「いいえ、除霊が本当の専門分野なんだから
それを主張しなくて一体何が除霊よ!
これでフツーに「悩み相談部」とかつけたら
へー除霊できるんだー。って他の人に
知ってもらえないじゃない!」
「いいか!!………………………」
「いいえ!!!………………………」
後は省略するが、どうでもよすぎて
結局何を話していたのかすらもう
覚えていない。
で、ここはお互いの妥協案として
第三者でもある義堂に決めてもらう
こととなった。ここで気だるそうに
義堂が「『異能部』でいいんじゃね?」
といった。俺とミコはなんでそんな名前を
提案したのかがわからなかった。
「ギトーくん、なんでそげな名前に
しようと思ったんや?」
その言葉遣いはなんやねん。後、
義堂のことをギドーって呼んでるのか。
……って俺よりも名前の原形、残ってる
じゃねーか!! 俺は苗字と名前の
頭文字一文字とっただけなのに!!
「あ"? 名前なんてどーでもいいだろ。
だからコイツの名前でいいか、って
思ってな」
そう言って義堂はカバンからズルッと
例のバールを取り出した。
「え? バール?」
「バールって覚えづれぇだろ? だから
俺が勝手にコイツに「異能」って
名前を付けたんだよ、あ? なんか
言いたそうたが、どうしたミコ」
「……いやぁ、そんな変な名前つけるんだな
と思って…」
いやミコ、お前の考えていた名前の、
「ゴーストバスターズ」よりかはマシだぞ。
俺の「除霊兼相談部」も微妙だったが。
しかし、こうやって義堂に決めてもらうと
互いの妥協案として意見を挙げた訳だから、
「異能部」にするしかない。
ということで、うちの部活名はまさかの
鈍器の名前からつけられるのこととなり、
どこぞの「文豪の探偵社」みたいな
ことになってしまった。
うちの部活にはネーミングセンスの
ネの字も持っている人はいないようだ。
さて、だとしても部活ができただけで
何か部として何か活動したわけではない。
これから、忙しくなりそうだがときには
息抜きが必要だろう。
ということで、次回ははじめての
日常パート!! お楽s…
「「お楽しみに!!」」
俺のセリフをとるんじゃねぇ!




