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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
Made in Utopia
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190.下手に出よう

「あぁ? てめぇ何の用だ」

「えー、出会いがしらそんなに怒ります?」


 結局のところ俺たち「異能部」はこうしか

できないのだ。


 くぎを刺されて、勝手なヘマをしないようにと

言われても、無用な節介がたたって逆に反感を

買うハメになったとしても、話し合うことでしか

通じ合うことができない関係がある。


 たとえ、一回様子見をしてほしいと言われた

少し変わった容態の少女の一回限りだったと

思われる関係だったとしても。むやみに首

どころか頭のてっぺんまで突っ込んでしまって

もう踏ん切りがつかないところまで話を進めて

しまったとしてもだ。


 俺はその日のうちに動き出した。


 ミコにもそのことを伝えようかと思ったが、

マヤにも言われた通り、「時間」をかけることは

もう許されない。だからこそ俺はあえてミコに

顛末を伝えず、自分一人で解決を図ることにした。


 いや"一人"と言うと少し違うな。"一人"と

"その他大勢"といったところだ。


 久々に俺のミコンがうなりを上げて百鬼夜行

かと思うぐらいの悪魔を召喚し、町の隅から

隅までを暗い夜の中から「失せ人探し隊」として

雇ったのだ。


 我が眷属である悪魔たちには当然、怒られた。

本来の悪魔の使い方ではないから至極当然、

真っ当ではある。しかも探す相手が、天敵の

天使だとくればなおさら。


 それでも、マスターのことだから何かあるの

だろうと出てきた悪魔全員がついてきてくれたのは

俺への信頼の厚さが物語っているな。


 ……信頼のない奴らがきっと学校七不思議として

学校内をうろついているんだろうがな。


 それはまぁ置いといて。それは今の本題ではない。


 ひとまず、鹿羽をどうにか見つけ出してあの

「天使」ちゃんを引っぺがさなくてはならない。

俺の憶測通り、鹿羽は自分の意志で行動を起こす

ことはあまりしない性格なのだろう。だからこそ

「天使」の言いなりになっている節がある。自分の

意志がないのはよくない! と、よく言われるが

俺からしてみれば、それは別段どうでもいいのだ。


 リーダーがいて、その考えと指示が的確であれば

万人は意見を言わずについてくるもの。


 結局、ダメなのは"自分の意志がない"ことではなく

"自分の意志がなくてもいい"ことなのだ。


 だからこそ俺はそのリーダー役をどうにかして

降板させなくてはならない。手段はもう俺には

わかりきっている。話し合いで分かり合うしかない

状況であることを祈る。そうではなかったら

拳と少しばかりの令呪で語るしかなかろう。

天使と戦うのは初めてだが、俺の力でどうにか

屈服させられるような連中なのだろうか。


「それで、お前はどうしてここに来たんだよ」

「戻ってこい。あの巫女に言われたことは

 わかってるよな?」

「あぁ、わかってる」

「なら」

「だがな、お前みたいなやつが一番気に入らない。

 悪魔のくせに何が助けるだとか言いやがって

 俺を何だと思っていやがる」


 今日中に動いたのが効いたのか発見は早かった。

張り込むことなく、その日のうちに見つかり、

実のところかなり安堵している。というのも

悪魔の力をバリバリに使うから、自分の魔力が

尽きるのも視野に入れていた。それにミコに

黙ってやっていることもあって、時間をかければ

バレることも考えられる。一応言っておくが

ここはあの御前神宮の管轄内なのだ。町中で

何か霊障があれば、あそこのパワー系除霊隊が

黙っていない。


 場所は前と同じ。廃工場の一棟。


「別に俺たちはお前に聞いているんじゃない。

 今回の依頼主はそっちの鹿羽じゃないだろう?」

「どっちでもいいだろ」

「いいや、大きく違うぞ。まぁとりあえず、


  このぶっそうな剣を首から避けてほしいかな」


 出会いは手荒と形容しがたいぐらい酷かった。


 今回はクレーンの上、つまりは外にはいない

ことを確認したあとに、工場内にそーっと入った。

俺が「おじゃまします」と言わなかったのが

悪かったのか。入口で丁重に脅されたのだった。


 入り口で歓迎されたと思えば、一周回って

丁寧なのか。


 それからはずっとこのありさまである。喉から

数センチのすんでのところで刃物を止められている。

それも、構えがぶれることなく一心に剣先を喉元を

刺したままである。体感もぶれないし、油断もない。


「何しに来たお前」

「それを言ったらコレおろしてくれるか」

「そんなわけないだろ」

「救いはねぇのか俺に!」


 やはりどう転んでも地獄行きらしい。天使の

裁きは思ったよりも絶対主義だった。


「そ、その剣どこにあったんだよ」

「生み出したんだよ」

「お前、結構何でもありだな」

「どうでもいい。どうして俺を追ってくるんだ。

 答えろ」


「仕事だよ」

「は、仕事?」


「さっきも言ったが、今回の依頼主はお前じゃない。

 そこでおとなしく、事が終わるのを待っている

 "鹿羽 歩"だ。まだ、あの時の依頼「自分に

 取り憑いている霊を取り除く」が終わってない

 からな」

「……それがどうした。お前みたいな半端野郎な

 クソ悪魔に心配される筋合いはねぇ」

「だから、お前の話は聞いていない! 早く

 その体を楽にさせろって言ってるんだ!!」

「うるせぇ! 俺と相棒は二人で一人だ!!」


 !!!??


「なんだコイツ!!」

(あっ!)


 気づかれた!?


 俺に対して、反抗的な目を向けてくるのは

重々承知であって、それに対して歯向かうなんて

子供のケンカのような行動はしない。だから

あえて、俺は話し合いからスタートしたのだ。

もっと言えば、俺に対して刃を突き立てて

くれているのであれば、こっちの思う壺でもある。


 俺が、鹿羽を探すのに何体の悪魔を使ったと

思う? 一度緩めたサイフのひもは緩いものだ。

カタをつけるためには手段を選ぶつもりはない。


「チッ!」

「背中に目でもついてるのかよ!」


 俺はキャラでもない傲慢な態度で接したのは

俺に注意を払わせるためでもある。


 俺に向けた刃も背中から急に襲ってくる敵に

即座に振りぬくことはできまい。


 ……と思ってたとも、ええ。


 不意打ちが失敗して、鹿羽が円弧を描く

ように剣を背後に振りぬいた。すかさず俺は

身の危険を感じて、一歩半離れる。


(えー、ごめーんマスター)

「いや謝るな"ヴィーハ"。それよりも……」


 見事な俺と眷属のコンビプレイが不発に終わった

ことは、正直に言って…………やばい。


(それより?)

「……!!


 "ヴィーハ"どけろ! 頼む!!"リア"」


 ガギィィィィィィイイイイン!!!!


 ミシッ


「どわあああ!!!!!!!!」


 どごぉおおおおおおおおおんんんんんん

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「あ、あぶねー……!」

「こんの、クソ悪魔が。卑怯しやがって……」


 さっきから俺は話し合いをしていたのだ。

理由は簡単「戦いたくないから」。どうにか

話し合いによって解決を図るプランA、話し合いで

できたスキを狙って鹿羽を倒すプランB。これが

俺が一日の間で用意できた作戦だった。


 ならこの作戦が失敗したらどうなる。


 「冷戦」は終わり、開幕の火ぶたが上がる。


 ファーストインパクトは2週間前と同じく、

壁に吹っ飛ばされた。前回と違うのは俺が

気絶していないことと、向こうは本気で俺を

シバきにかかってきていることが分かった

ことだ。


 かろうじて"リア"の具現化の力で前に俺の

護衛ミッションでやったように刀の形に体を

変えて、鹿羽からの攻撃を受け流すことは

できた。それでも、壁に背中が当たるほどの

パワーで圧倒されてはいるが。


 鹿羽の攻撃は、天使の羽を巧みに操った、

白鳥のように美しく華麗な攻撃…………と

いうには泥臭い攻撃だ。


 羽を出して、突進してきたのは目視できた。

その時の羽は"天使の羽"と呼ぶにはあまりに

平らで"ジェット機の翼"といった具合だ。


 一歩ほど離れていた俺らの懐に潜り込み、

居合切りの要領で、剣を下に構えた状態で、

いきおいそのまま縦に振り上げた抜いた。


 俺はその対象がさっき奇襲に失敗して

怒りを買ってしまった"ヴィーハ"めがけての

攻撃であると見抜き、即座に"ヴィーハ"を

突き飛ばし、代わりに俺と"リア"がダメージを

受けたのだ。


(マ、マスター!!)

「俺は大丈夫だ。"リア"大丈夫か」

(ゲホッ、ええ、だ、大丈夫です……。ですが、

 次は耐えれないかもしれません……)

「くっ、そうか」

(あの武器、ただの武器ではなさそうです。

 触れただけでも…………何でしょう、体が

 溶かされているような感覚になります)

「……さすが"天使"様っていったところか。

 悪魔退治ならそれなりの道具があるってか」


「終わりかよ悪魔野郎。次はぜってぇ殺す」

「くっそ、身なりは華奢なのにセリフがひでぇ」


 悪魔の天敵は天使。


 それはこの世界が生まれて、善と悪が生まれた

時からの当然の条理であり、俺もそれはわかって

いる。だが、それは逆もあり得る。天使の天敵も

悪魔なのだから。


 鹿羽の攻撃は俺ら悪魔に対して強力に働く。

一方で肉体には実はそれほどのダメージはない。

飛ばされてしまえば、その限りではないのだが、

鹿羽はもとの体は弱い。パンチひとつくらっても

「ポコッ」という効果音が流れて終わりだ。

そこに天使の力が加わることで強力になっている

だけであり、その天使の力が俺の悪魔の部分に

効果的に働いている。


 なら俺も同じことをすればいいのだ。


 俺も同じように人間の体で悪魔の力を宿して

鹿羽をぶん殴る。……いや、正確には触れると

言ったほうが正しいが。ようは、天使に"だけ"

効く攻撃で、鹿羽と対峙しなくてはならない。


 力技でもいい。あの天使を鹿羽の身から

引きはがすことが悪魔の俺ができることなのだ。


「"リア"まだいけるか」

(いえ、これ以上は……。でも)

「いい、無理するな」


 ミシッという音がしていたが、これは俺の

胸当たりの骨がゆがむ音かと思っていたが

音の正体は"リア"の刀身だった。


 直線の刀がカトラスのようにしなっている。


 ということはやはり、さっきのは剣で

"切られた"というよりも"殴られた"みたいな

攻撃を食らっていたらしい。なんて野蛮な。

俺にはあまり痛みが残っていないことから

"リア"がその超絶攻撃を受け止めてはくれて

いたのか。


 前に"ノーティ"がノビていたのもわかる。


「"ヴィーハ"」

(はいはい!)

「お前はそこで見てろ」

(え? なんで!?)

「危ない目に合わせられない!」

(でも!)


 恰好をつけるわけではなかったが、ふっと

笑って人差し指を"ヴィーハ"に向けて、

ウインクをしてやった。


「俺が死んだら前みたいに取り憑いて俺を運べ。

 死ぬつもりは毛頭ないが、頼んだぞ!」


 あーあ、まさかのバトル編突入になるとは。

戦いにまで発展させたくなかった俺、そして

バトルの白熱シーンをかけない作者が苦しむ

だけの生産性のない話になるぞ、ちくしょう。


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