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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
武器のような何かはブキである
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19.目覚めよう

「ん、んん??」


 気づいたら俺は保健室で横になっていた。

前のソファーでミコが寝ていた。俺の看病

でもしていたのだろうか。


 え!? あれ!? 廃工場で俺が倒れて

そのあとどうなったのか何もなく、いきなり

ここから始まる!? 作戦が失敗してたら

俺とミコはあのまま工場の事務室に放置

されているはずだから保健室でぐっすりと

優雅に眠っているわけがない。


 つーか、よくもまぁお前は今回はよく

寝るな。しかし大切な語り手の俺自身が

倒れていたからなにも話せないのも事実だ。

ひとまず、この状況を見てわかることは、

あのあと瀕死の俺と無能なミコは無事に

助けられ保健室に連れてこられた……

ということか? そして窓から外を覗くと、

かなり夜が深くなっているのがわかる。

この時間はすでに学校自体に入れなく

なっているはず……いや、前に相澤が

学校にいたのもこれくらいの時だったな。

ということは、保健室に俺とミコがいる

ことを危惧して開けているのだろうか。


 そうだ、義堂はどうした? 保健室には

いない様子だが、今回は義堂がかなりの痛手を

負ってるはずだ。それゆえに出陣メンバーでは

一番、保健室にいそうなのだが……


「あ、やっと起きた」


 義堂……ではなく、生徒会長がいた。


「義堂は、どうしたんですか?」

「義堂君ならさっき起きたばっかだよ。

 それで、寝すぎで喉乾いたって言って

 今、自販機に飲み物買いに行ってるよ。」


 やはり、義堂もかなりの深手を負った

のだろう。ああいった人種は大抵、そんじゃ

そこらの痛みじゃ保健室にはいかない

というものだ。つまり、さっき俺が

「義堂がいないのはおかしい!」と

言っていたが……


 あれは嘘だ。


「うわあああああああああ!!!」

「会長、乗らなくてもいいです」


 会長はノリのいい人だった。まさか、

コマンドーを拾われるとは俺も思わない。

それはいいとして、会長に俺が倒れていた

間に起きた色々なことを聞いておいた方が

いいだろう。


 語り手が語ってないんだ。


 語るための素材がいる。


「俺が寝てる間になにがあったんですか」

「うーん、詳しくは全く知らないんだよね。

 義堂君が君たちを肩と脇に抱えてきて、

 そのままゴミを捨てるようにベットに

 投げて、後を追うように義堂君もそこで

 ぐでぇーっと倒れたんだ」

「……」

「いやぁ、なにがあったか、なんも話さずに

 義堂君寝ちゃうからねぇ、僕も知らないんだ

 詳しいことは。こうやって、僕が生徒会長の

 権限を使って学校にまだいてもいいように

 したんだから詳しく話してくれないとねぇ」


 義堂は俺たちを連れて、あの廃工場から

俺たちを担いできたのか。学校から廃工場まで

そんなに距離がないにしろ、二人担いで

あの距離を歩くとは。さすがは不良!

ここいらあたりの馬鹿力設定ははどこの

物語の世界でも変わらず常識破れだぜ!


「それにしても義堂君とは、もうかれこれ

 1年以上付き合ってるから、義堂君が

 常識破れなことをやってのけても別に

 ビックリしないんだけれど……君もけっこう

 常識破れしてるよ」

「え」

「いやいや、回復力がすごいってことだよ。

 義堂君もあざだらけでボロッボロで来たのに

 一回寝ただけですっかりもとどおりだけど、

 神前君、君も頭がカチ割られていたんだ。

 それがもう血が止まって元気じゃないか」


 俺は確かに「常識破れ」している。なんども

言っているが俺は「半人半魔」だ。人間とは

隔離された存在「悪魔」の一介だ。生徒会長が

それを察しているのであればヤバイ……

話を変えねば。


「今、ミ、……御前さんはソファーで寝てるけど

 ベットに捨ててあったんですよね? なんで

 今はソファーにいるんですか?」

「あぁ、一番最初に御前さんが起きたんだよ。

 それで、傷だらけの君が起きるのをずっと

 待ってたんだ」


 ミコがそんな気遣いをするとは思えないが

さすがに、この物語の優しいヒロインポジか。

それくらいの可愛らしい一面ぐらいあっても

いいだろう。それに、こんな気遣いをしてる

のであればミコはミコなりに反省はしている

のだろうしな。でも残念ながら、ミコは寝落ち

して俺の目覚めを最初に見たのは生徒会長だった。

このままじゃ薄い本的な展開になりかねない。


「僕は別に何も思わないけど、君と僕で

 かけ算するのはやめてほしいな。

 それはもうダレトクなんだろうね一体」


 会長も心を読むのか、生徒会長とミコが

仲良くなる未来が予想できる。先輩なのに

裏ではタメ口で話してるんだろうなぁ……

そして保健室のドアが勢いよく開いた。

あまりに大きな音だったから壊れるん

じゃないかと思った。


「お、おきてたのかてめぇ」

「あぁ、義堂君! ずいぶんと長らく

 何を買おうか悩んでたんだね」

「あ"? 俺じゃねぇよ。神前てめぇだ。」


 え? 俺?


 ブンと義堂が俺に小さい缶を投げつけた。

中身はコーラだ。いやコーラを投げるなよ!

と思ったが、義堂なりの『優しさ』なの

だろう。ありがたく受け取るしかあるまい。


「てめぇが、何を飲めるか知らねぇから

 ずっと自販機で悩んでたんだよ。

 神前! てめぇ飲めるよなぁ!?」


 上司の酒かよ。ひとまず義堂に礼を

言った。開けるのは…………あとにしよう。

あの様子だとこのコーラ、今は爆発物(・・・)だな。


「あ"ぁ? まだミコ、起きてねぇかよ!」


 義堂がさらりとミコと言っている。

いつの間に名前の交換を済ませていたんだ、

この二人は。しかも義堂にもその呼び方

定着させようとしてるのか。俺が適当に

作ったわりに結構、気に入ってくれてて

案外、いい気がしないでもないな。

それにしても今、保健室にいる人全員に

ジュースを買ってきたのか。めっちゃ

優しいじゃないか、義堂きゅん!


 そういって、ミコの目の前に牛乳を

そっと置いて、義堂はコーヒーを飲み

始めた。どこか義堂のミコへの飲み物の

チョイスに悪意を感じるがまぁそれはいい。

俺が寝ている間に何があったかを

聞く方が先だ。


「廃工場で倒れてからの記憶がない。

 だから、詳しく聞きたいんだ。

 あの廃工場で何があったかを。」

「あ"ぁ? てめぇがしらねぇわけが

 ねぇだろ。なにボケたこと抜かして

 いやがる」


 なに? 俺が知っている……?


 ……いや、俺はこの現象を前に

体験したことが…………ある。ならば、

この話は義堂以外の人間には知って

ほしくない。


「…………生徒会長……」

「はいはい、生徒会長ですよー」

「今、開いてる教室ってありますか?」

「え、開いてる教室……? あーなるほどね

 了解了解。ここは御前さんが寝てるから

 使えないとして、そうだなぁ……生徒会室

 とかでもいいなら……」

「申し訳ない、生徒会長」

「いいんだよ、人には隠したいことの

 一つや百つだってあるさ。義堂君から

 この話を聞けないのは残念だけど」


 そういって、義堂をつれて真っ暗な廊下を

通り2階の生徒会室に向かった。生徒会室の

鍵はもちろん、生徒会長からもらっている。

生徒会室に入って電気をつけ、俺と義堂は

面を向き合って、生徒会室にある椅子に

腰かけた。


「しらねぇ……っつーのはホントだとして

 そいつはなんでだ。それをきかねぇ限り

 俺はてめぇに話すわけにはいかねぇ」

「………………俺は………………………………


 …………魔法使いで、力を使ったら記憶が

 なくなるんだ……」

「…………プッ、クハッハッハッハ!!

 んな嘘が通じるほど俺ぁ鈍くねぇぞ!」


 まぁ、そう思うのが普通だな。だが俺が

「悪魔」だというのを知られるわけには

いかない。特にこの現象(・・・・)を起こしたので

あれば、こうでも嘘をつかざるを得ない。


「いや、やめだ! これ以上、んなことを

 聞いても答えねぇのは分かってんだ。

 脅すつもりもねぇし、夕霧も言ってたが

 人には一つ百つの隠し事っつーのが

 あるもんだ。いいぜ、話してやるよ。

 てめぇが寝ていた間にあったことをよぉ」


 この話は次回に回すとして、先に言っておく

ことが一つある。


 『俺は俺の血を飲んだ時に覚醒(・・)する』


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