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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
武器のような何かはブキである
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18.廃工場にいこう

「てめぇんとこの女は、一体なんつー教育を

 受けて生きてきてんだよ!!」

「それは、同感だ! だが、それは、本人に

 言ってくれ!!」


 今、俺は学校を飛び出し廃工場に向かっている

最中ではあるが、ミコがつかまってから今に至る

までの大筋の流れを説明しておこう。


 まず、義堂から重いブローをもろにくらった

生徒会長の夕霧 智也についてだが、ミコが

廃工場に向かう原因を作ってしまった

第一責任者でもある。というのも、義堂が

テキトーに理由を付けて説明しろと言って

いたため、その通りに生徒会長は理由を付けて

廃工場には行くなと伝えた。が、それが逆に

今回の引き金になった。俺、というかミコの

性格と性分を知らなく、何気なく理由に

「心霊現象」をつかったのだ。それを聞いた

ミコは多分


「心霊現象……だ……とッ!!?」


 と言わんばかりに除霊に向かい、あろうことか

心霊現象よりもやっかいな事態を引き起した。


 ミコを止めるはずが、まさかミコを奮い立たせて

しまったことに対し、生徒会長は頭を下げて

詫びていた。やはり、この人は「生徒会長」っぽく

ないな、こうやって頭を下げる様子を見ると。

外から見たら、学校イチの不良がカツアゲ

しているようにしか見えないが、そんな

どうでもいいことにツッコんでる時間ではない。


 頭を下げるのは俺のほうだよ。生徒会長。

 あのアホ巫女野郎の指導を怠った俺の

 責任です。本当に、本ー当に申し訳ない。


 そして、うちの学校の隠し玉である

義堂 力也は、最初は抗争のことについて

触れなかったが、生徒会長の説得もあって

諦めたのか、俺にことの全貌を話した。

大体が俺の予想通りの内容ではあったが、

義堂はそれを非常に不愉快そうに話す。

見ず知らずの一生徒が抗争に巻き込まれ

ないため、今まで戦ってきたというのに

自分からそれを説明するのが(しゃく)に触った

のだろうな。


 それに、義堂の話から話を聞くまで

知らなかったが、今回の抗争相手である

「銅栄高校」の目的は義堂ただ一人の

ようだ。ミコはそのエサにされたと

いったところか。


 義堂が俺たちのところに来る前に、

銅栄の連中から電話がきて、それでミコが

今、廃工場にいるとわかったようだ。

電話の内容は……


「おぉーい。英嶺の番犬さんよぉ。この

 女を知ってるかぁ?コイツ、よく

 わからねぇが悪魔だ霊だとかほざいて

 俺たちのところに来たんだが、ちょうど

 いいし、人質として預かってるよぉ。

 お前、自分とこの生徒を巻き込みたく

 ねぇんだろぉ。だったら俺たちが穏便な

 間に廃工場に来るんだなぁ! もちろん

 エモノ(武器)は持ってくんなよぉ?

 んじゃ楽しいパーティーにしようぜぇ」


 とのことだ。悪魔とか霊を言うところ

確かに、間違いなくつかまっているのは

ミコだ。それに、武器を持ってくるなと

言っていたということは、あいつらは

武器を使う気満々で俺たちがくるのを

スタンバイしているということか。


 それと、電話相手の言葉の語尾に対し

「クセがすっごい(千鳥)」とこの物語の

ツッコミ担当として言いたくなったが、

そんなこと言える雰囲気じゃなかった。


「チィッ!! クッソガァア!!

 あいつら、ぶちのめしてやる……」

「って義堂君! 今の彼らには人質が

 いるんだよ! ここで暴れたら

 御前さんがどうなるか分かったもの

 じゃない。一度計画を練って……」

「うるせぇぞ夕霧! 今こうやってる

 間にもナニしてるか分かったもん

 じゃねぇ。今すぐ、俺が廃工場に

 いくしかねぇだろうがァ!!」

「おい」


 俺が二人の会話を止める。


「あ”外野は黙ってろ!」

「俺はもう外野じゃない。今、全部

 知ってるし、これからどうすべきなの

 かもわかる。」

「ほう、じゃあどうすんだよ神前……」


「俺を連れてけ」


「だから、できねぇっつってんだろうが」

「いや、これが最善の策だろ。銅栄の連中の

 目的はあくまでお前、義堂なんだ。女を

 どうこうするのが目的じゃないなら話が

 早い。昼は俺をおとりとしてつかっていい

 といったが、今回はその逆。


 俺が義堂を「おとり」にするんだ。


  これが、義堂にとっても銅栄の連中に

 とっても一番都合のいい作戦だ。そのため

 には「おとり」の義堂を抜いて、もう一人

 人材がいる。そこで俺ということだ」

「なんで、てめぇじゃなきゃならねぇんだよ」


 俺は服を持ち上げて昼に義堂から一発

もらったところを見せる。昼にくらった

あざが一つとして癒えた腹部を。


「俺はこう見えても頑丈でね。もし仮に

 「おとり」が効かず、何かの間違いで、

 俺のとこに連中が来てもある程度は

 問題ない。もちろん、後で義堂お前が

 俺を助けてくれるという信頼のもと

 使える作戦だ。これでもお前が

 「NO」というのなら俺はもう何も

 できないし、しようとは思わない。だが

 これが今出せる最高の決断だとは

 言っておこう」

「ちっ……」

「義堂君!ここはこうしたほうがいい。

 神前君もちゃんと覚悟を持ってこう

 提案しているんだ。」

「クソッ!……夕霧、いや会長が言うんなら

 仕方がねぇ……てめぇを連れてってやる。

 だがな、神前。しくじったら今度はてめぇを

 ぶちのめす。いいな」

「もちろんそのつもりだ。それにこの作戦は

 お前なくして成立しないし、俺はお前の

 ことを「強い奴」だと思っている。だからこそ

 俺はお前に命を預けてやる。」


 本当は義堂よりも俺は「強い奴」なのだが、

あくまで、これは義堂個人の問題だ。ならば

俺が深く踏み入るのは悪魔としての美学に

反する。


「……ふん、おい夕霧、俺たちのことは学校中で

 噂になんてするなよ」

「とーぜん!まかせておいてよ!それよりも

 気をつけてね。武器がないからいつも以上に

 大変だろうけど」

「てめぇは俺の保護者か!安心しろ、俺は

 強いんだ。そこで首長くして待ってな」


 そして今、俺たちは廃工場の入り口にいる。

ここで俺と義堂は分かれて行動することとなる。

義堂は、銅栄の連中と正面からやりあい、

その間に俺はミコを助ける。


「おっと忘れてた。こいつをもってけ」


 そういって、何か俺に投げてきた。俺の

足の長さ程の赤い”あの”バールだ。


「俺の武器だが、今はてめぇにあずけてやる」


 そういって工場の扉をゴゴゴゴっと豪快に

開けた。これで銅栄の連中は義堂に集中する

だろう。この間に裏口からミコを探し出す。


 ってなんで、俺はミコのためにこんな

抗争に巻き込まれにゃいかんのだ……!!


 泣き言はいい。先にミコを探し出さないと。


「お”ぉ”い!! てめぇらうちの生徒に何、

 手ぇだしてやがるんだああああああ!!」


 義堂の声だ。それも怪獣のように轟音が

耳の中に残るような声量の。


「おいおいそう騒ぐな番犬君よぉ。まさか

 本当にエモノなしでここに来るとはぁ」


 俺のいる場所からは視認できないが、この

声が敵のひとりなのだろう。それと聞く限り

取り巻きが5人ほどか。1VS5とは戦力差が

ある気もするが、義堂は「おとり」だ。勝つか

負けるかではなく、どれだけ時間を稼ぐかに

かかっている。


 やっぱり、クセがすごい。


 工場とはいえ、ずいぶんと広いが人質を

拘束、監禁するとなると大体の条件は

しぼられるし、それにぴったしの場所は

ほぼ一つしかない。事務室だろう。

いや、もう事務室であった原型は

残ってないだろうが。俺は中学生のときに

工場見学でここにきたことがあり、

うっすらとだが、中の構造は覚えていた。


 もう15年と昔の話だ。俺だってよく

まぁ、こんなこと覚えていたなと思う。


 そして、難なくスムーズに事務室を見つけ、

扉の小窓から部屋の中を覗いた。当たりだ。

暗いが、中には腕と足が縛られたミコがいる。

口もガムテープで抑えられている。俺は

事務室の鍵を力づくで開け、中に入った。

開けるときガゴンと大きな音が鳴ったが

それ以上に、向こうでガンガン音を鳴らし

ながら殴り合っているから、気づかれては

いないだろう。


「ミコ……大丈夫か?……なっ……!!?」


 こいつ……寝てやがるっ!!?

 こんな状態で!!!


 確かに、眠そうなそぶりはしていたが

こんな時に、ぐっすりよく寝れるなオイ!

仕方がない、ここは俺が担いで……。


 …………ドゴォ!


 頭を何か固いもので殴られたようだ。

と、冷静でいられるのは俺がもう気絶して

倒れこんでいるからで、どうやらまだ

義堂の戦いに参戦していない敵がいたらしく

俺は後ろから鉄パイプで殴られた。


「お前、どこから来た!!」


 と、言いながら執拗に俺の頭を殴って

くる。そんなことしなくても俺はもう

動かないさ。あぁ、しくじったなぁ。

悪魔の再生能力は非常に早いが、脳震盪や

ダメージに関わらない痛みには俺は弱く

こうも簡単にくたばってしまう。


 俺がくたばったのを確認したのか、

敵は俺を置いて事務室を出て行った。

……頭から何かが垂れてくる。それは

俺の血の味がした。


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