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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
世界で一番忙しい一日
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163.退治しよう

 さて、世間的にいわゆる過去編が終わり、さらには

仲間が一人増えて、それが終わりふぅと一息つく

タイミングでハンバーガーのお話かと思いきや、

会長とのちょこっと重苦しい話し合いになったりと

話的にも展開的にも重たい流れが続いた本作。


 もうそろそろ、ふっとんだ楽しい話のひとつを

書きたくなってきた。(作者談)


「いや待てや! しばらく話自体更新してない

 ヤツ(作者)が何言ってんだよ!!」

「え、ココ誰と話してるの」

「馬鹿(さくしゃ)と話してる」

「ルビがもう悪意しかない」


 閑話休題。便利な言葉。


 春とは目覚めの季節。寒さに耐えた生き物たちが

暖かい日の光に誘われて暗い穴ぐらや土の底から

出てくる、実りの季節である。


 悪魔のセリフとは思えんな。


 だが、それは到底事実であり俺が違うと言っても

天候がそれを許さないだろう。とはいうものの

今はもはや近代化社会。春に咲くタンポポが

アスファルトを裂いて出てくるとは言え、実際に

その目や肌で「春」そのものを感じる、つまりは

「自然」を感じることは少なくなってきていた。


 俺自身、かつては冬の寒さを身に沁みつつも

春の風に期待を寄せた頃があったのは事実。

それも200年 ……おっと0が多かった。20年と前の

むかーしむかしのお話であり、長くこの街に住み

続けていると、年を追うごとにずっと外の世界に

対する興味が薄れて行ってしまうものだ。


 これで俺が地縛霊であったり土地に関わった

悪魔であるならばその限りではないのだが、如何せん

勝手にミコンから引っ張り出しただけの半人半魔

なのだ。


 あがいても「人」なのだ。ならもっとも土地に

縛られて佇み続ける義理もなかろう。


 晴れて高校生になった俺ではあるが、変化を

問われても「こたつの温度を少々下げる」程度

だろうな。


 と、茶を一杯、窓から入るぬるい風に撫でられ、

一人、いや厳密には義堂と二人でボーーーっと

していた時だった。


 ガラッ!!


「お助けーーーーー!!!」

「……」

「……」


 ガラガラっ


 開けたドアが再び締まる。


 ガラッ!!


「お助けーーーーー!!!!!!」

「……」

「……」


 ガラガラっ


 開けたドアが再び締m


「まだやるのかよ!!」

「なんで反応してくれないのさ!!」

「いや、部員からの依頼はちょっと」

「部長権限はないの?」


 ミコが部長だろうが、課長だろうが、

扱いは変わらない。こっちは寒いんじゃ。


「暖かいって言ってたじゃん。さっき春は

 あったか~いって下りで500文字使ってた

 でしょ。あと、見てくれがもう完全ジジイ

 なのなんとかならない?」

「春でも寒いものは寒い」

「500文字の意味!」


 なんかミコのメタセリフも慣れてきた。慣れちゃ

いけないんだけど、これはこれで面白いから

別にそのままさせ続けてるけど。


 俺は茶をこたつの上に置く。というか廊下からの

風が入ってくるんだから、はやく入ってドア閉めろ。


「ん、あ”ぁ、んだよミコ」

「あ、起きてた」

「いや、今起きた。で、うっせぇから早く言え。どうせ

 なんかの依頼なんだろ」

「……ココよりも副部長にさせたくなってきた」

「あ”?」

「ランクアップの条件緩すぎない?」


 正直疲れてるんだ。何回分、俺が主軸の話を

してきたと思ってる。


「まぁ、断ることもできないからなぁ。というか

 生徒会室に行っててたんじゃないのか。その時に

 副会長よろしく加賀音がいただろ」

「そうそう、ちょうどロッカちゃんがいたからそのまま

 依頼の話をしてきたの」


 今日、加賀音は生徒会の仕事を優先する日であり

「異能部」には顔を出すことができない。


 にしてもロッカちゃん呼びは未だに慣れないな。

俺の加賀音呼びもしっくりこないが。


「じゃあいつもの生徒会からの依頼なのか?」

「ううん、私」

「え、"私"ってミコが困ってるの」

「ううん、厳密には私じゃないけど」


 ? なぞなぞか?


「えーとね、不思議な顔してるけど依頼主を

 言えばだいたいわかるから」

「はい?」


「依頼主は"御前家"」

「……はい? つまり、一家からの依頼?」

「そのとーり」


 だから私であって私じゃないのか。


 けど俺からしてみると、想像しがたかった。

理由は明確、うちに頼まずとも悪魔や霊に関わる

悩みや困りごとは解決できるからである。悪魔の

俺がそういうのだから確かだ。ということは、

除霊が今回の依頼の主題ではないのか?


「うん」

「でも困りごとっぽい困りごとが、あまりあの

 一族から出てくるとは到底思えないんだけど」


 人事関係はさすがに手に負えるし、暴力関係なら

CQC(かならず・オバQ・駆逐する格闘)がモットーの

彼らに死角も何もなかろうに。


「あるとしたら三好さんの締め切りぐらいだけど、

 それはさすがに断るし、何よりミコづてで俺たちに

 依頼するとも思えないし……」


「だから、今日は人員が欲しいだけなんだって」

「人員?」


「あと、会長」

「え、会長?」


 ________________


 話飛んでここは御前神宮。ここには加賀音を抜いた

「異能部」メンバーとなぜか会長がいる。


「話した通り、仕事を切り上げて来てくれて助かります」

「いやいや、六郷君に頼んどけば大丈夫何とかなるから」

「それ本当に大丈夫?」


 今となっては加賀音は部員だから言えるけど、早く

労働組合にダッシュしていい。生徒会という職の

名を冠していないにしろ、有益な話をそこでする

必要があるよ、もうそれ。


「それで言われたもの持ってきたけど……」

「まぁ、それ目的だからなぁ呼んだのが」


 整列!


 ミコが手をウンと上にあげて注目させる。

見てくれは選手宣誓のそれだ。


「えー、みなさまにここ、御前神宮に来ていただいた

 のは紛れもなく、私を含めた御前一家きっての

 依頼のためであります」

「ふぁぁ」

「義堂君、あくびしない!」

「あ”?」


 ミコの義堂呼びはもしかしたら初めて聞いたかも

しれない。まぁ、ギドーも義堂もイントネーション

変わらないからあまり気にすべき点でもないか。


「点呼!」

「……」

「……」

「……え、俺?


  い、イチ!」


「……」

「……」

「言えや!!!」


 先陣切った俺が間違った人みたいじゃねーか!

あとミコ、それやるなら先に番号付けとけや!


「はい、えーーー、ね。ということで、ね。

 今日は春の朗らかな風が木々をなびかせる

 よい日ではありますがーーーえーーーーー」

「話長いよーーー」

「こんな日には、部活動も、もっと活発にーーー

 えーーやっていきたいと、思います」


 はやく本題話してくれないかなぁ。こちとら

会長や義堂にも事情は説明しているわけで、

あと置いてけぼりなのは目の前の読者なんですよ。


「会長!」

「はい!」


 それは返事するのか。ええ声や。


「例のブツを持ってきてますか!?」

「はい、いやーまさかこんなところで役立つ

 とは思っていなかったけど、六郷君がこれから

 仲良くするということで今回はよろしくという

 意味でお手伝いをさせていただきますよ」

「ほんと助かります!」


 にしても実物を見たのは初めてだが、意外と

小さいんだな。そんなんで退治できるものなのか?


「本当はもっと大きいの持ってきたかったけどね。

 話を聞く限り、これくらいでも大丈夫だと

 思ってね、大きすぎても運ぶのが大変だから」

「うーん、想像がつかない」


 退治


 タイトルにもなっているこの言葉。我々「異能部」

としてはやはり悪霊やそのたぐいであったりを

真っ先に想像してしまうが、今回の限りは決して

そうではない。


 便利屋としての側面としての手伝いだ。それに

そうじゃないと会長の手伝いなんて求めない。


 そして、会長が持っているのはその退治対象を

捕まえるツールである。それこそ、十字架や聖水

なんかではない。


 かなり大きめのサイズの動物用の罠である。


「ということで、異能部の春休み、最初の依頼

 「くま退治」を開始します!!!」


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