161.話をまとめよう
ということでいつものヤツだ。
といっても久しぶりの「話をまとめよう」
な気がするな。ずいぶんと今回の一連の話は長く
なりすぎたのかもしれない。
過去編が入ってきたということもあり
大目に見てほしい。その前にチョコ作ったり
する話があるからその分かもしれないが。
春は出会いの季節。
ということでまさかの場所から新入部員を
獲得することができた。
俺たちと同じ一年"六郷 加賀音"
副会長、学校のナンバーツーである。
形式的には「異能部」と「生徒会」の両方に
所属することになる。だから俺やミコみたいに
いつでもどこでもというほどフットワークが
軽いわけではなさそうだが、義堂みたいに
ふらっと手伝ってくれるだけでも大いに助かる。
入部理由は言わなくてもわかるだろう。一応、
まとめると「俺たち」と「俺」の助けになって
くれるというだけだ。脆い部分を補っていく、
そのためにこの「異能部」が必要になったこと。
そして"ヴァンダー"たちが何を吹き込んだのかは
知らないが、俺のこれからを案じての行動だと
いうこともわかる。
正直に言うとこれは嬉しいことだった。
俺はもともと、副会長の記憶を消すために
動いていたのだ。だが、それも失敗に終わり
最終手段のすべてを捨てる決断を下すぐらいには
追い詰められていたのだ。その最たる理由が
こちら側に立ってくれるというだけで体の重しが
はずれるってものだ。
とはいうものの、それよりも大きいのは当初の
目的だった生徒会という学校のトップ組織の
一人を手に入れたことだろう。本来はマヤに
白羽の矢を立てていたものだが、その必要が
なくなった。
それが「部活側」の話。「俺」からすると
悪魔の理解者が増えたことがやはり大きい。
それは俺が思う以上に、俺に課せられた使命や
苦しさを開放するに大きな役割を持っているとは
自身でもまだ感じてはいない。
身を案じるとはこういうことなのだろうな。
「そうだ! 副会長の名前!」
「え、名前ですか」
これから俺たちはさすがに副会長を副会長と
呼ぶわけにはいかない。それにルールとして
決めた覚えはないが、ミコが全員にあだ名を
付けているのだから、例にもれず副会長にも
あだ名をつけることになった。
「ロッカちゃん」
「えっ」
「決定!」
「「早っ!!!!」」
早い! 名前の付け方がわかりやすすぎる。
"六郷"のロ、"加賀音"のカでロッカ。
俺と同じつけ方だなこれ。
で、考案者ミコ曰く
「六郷って名前がなんか固く感じるからもっと
ふわっとしたイメージの名前にしたいな」
だそうです。
「どう?」
「ええ、気に入ったわ」
「フフン」
偉そうだ。部長なのだから事実エライ。
ちなみにこの呼び方はすぐに浸透してマヤの
いる生徒会でも使われることになろうとは、
副会長改め、ロッカちゃn
「……」
「……恥ずかしいんでしょ」
「うるせ」
男子が女子のことを○○ちゃんよびするのは
どうにも慣れない。ミコは「ミコ」で完結してる
から全く違和感なく呼べる。さすがにこの
歩く牡丹の花みたいな容姿に対してちゃん付けは
勇気がいる。
「せめて加賀音でいいか?」
「六郷でいいのよ?」
「いや、それは……」
俺もミコと同じ意見ではある。固いイメージが
あるからこそ名字で呼ぶべきだというのはわかる。
が、俺はあの墓地の出来事を知っている。その
うえで固いイメージを残した名前で呼ぶことは
俺にはできなかった。
ということであだなは「ロッカちゃん」
となった。部内で呼ぶのはミコただ一人だが。
さて、ここまでは新入部員だヤッターみたいな
楽しい空気が流れていたが、そうは問屋が卸さない
事実も残っている。
生徒会のメンバーが入部することで"アレ"が
露呈することになった。というか隠しきれるか
怪しかったため、ミコと話し合い加賀音に話す
ことにしたのだ。
「……はぁ、ほんとはダメですからね」
「はい、すいませんでした」
「はい、すいませんでした」
副会長、いや加賀音……あぁもう慣れないな!
加賀音の手にあるのはひとつのカギ。この
部活が所持しているカギなんて部室ともうひとつ
生徒会室から拝借した屋上のカギの二つ
しかあるまい。
「ですが、私に言ってくれればどうにかしますよ」
「助かるーーーー」
「それに、私も行ったことないんです屋上」
なので暖かくなってから行ってみたいです。
と、屋上のカギをなでながら微笑んだ。
(……)
(……うちの部活に入れてよかったのだろうか)
(しっ、思っても口に出さない!)
「月見とかやったよ、楽しかったよ」
なんて言えるか。
「そういや、夕霧の野郎はいいっつったのかよ」
「ええ、大丈夫と言ってました。業務を怠らない
というのが条件ですが、私ですから問題ない
でしょう」
「けっ」
「それに、私は「異能部」の一員としても
しっかり働きますよ。何でしたらミコさんよりも
頑張ってしまうかも。いつも業務報告をしている
先はどこかわかっているでしょう?」
「なーー!」
残念ながら事実だミコ、許せ。恨むなら自分の
霊感0を恨むんだ。0には何をかけても98にはならん。
「ふふっ、ではマナーですので……
はじめまして、私は"六郷 加賀音"
1年生で副会長をしています。
気軽に"ロッカちゃん"と呼んでください」




