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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
My Name Is ...
160/446

160.掃除しよう

「はいはーい! もっと前前前」

「あ"、こんぐれぇか?」

「まだ前、前」

「お"らっ」


 ドゴォ!


「あだぁ!!!! 前すぎるよギドー君」

「ミコてめぇが前っつったんだろうが」


 今は部室のカーテンレールの上を掃除中。

義堂の方にミコを乗せて、ミコがモフモフしてる

手持ちサイズのホウキで上を払っている。


 やると思ったよ。


 というか義堂ひとりでその上なら届くだろ。


「早くしやがれってんだ! まだかよ!」

「あー、ちょっと待って。後はこれを付けて……」

「重いんだから、早くしろ!!」

「ハーー! 私まだ軽いほうですーーー!!

 体重はリンゴ3個とか言えるぐらいは

 余裕ですーーーー!!!」


「早くしろ!」


 俺が怒鳴ったわ。いつまでカーテン掃除の下りで

行を使うつもりだお前ら!


 なんだかんだあって今は春休みの真ん中ぐらい。

他の部活は掃除やら次年度の用意とかはとっくの

とうに済んでいる状態だ。


 ならなんでこんなに「異能部」がこんなに遅いの

かと言われてもそれが原因としか言えない。そう、

その「他の部活の掃除やら次年度の用意」に

駆り出されていいたことは今までの部活事情から

して当然の結果だよな。


 「異能部」とは……


 ……ん? 話を読み飛ばした? いやいや

大丈夫ですよ、ちゃんと前のお話では墓地で

マスターこと俺がバトってましたとも。


「つーかよミコ、てめぇ部員とかどうすんだよ」

「……まさか、ギドー君に心配されるとは

 思ってなかった」


 わかってる通り考えていないだろ。副部長である

俺に相談が来たわけでもないから、一人で色々

考えている…… わけがない。そんなんができる

キャラじゃない。


「ヒュッ、ヒュ、ヒュー~~~」

「吹けてないぞ」


 ごまかすの下手すぎるしベタ過ぎるだろ。


「そんなことよりココは前に街で何してたの!?」

「ここでこっちに振るな!」


 ごまかすのに俺をダシに使うな! それに

そればかしは答えにくいわ、マジで。


「副会長に呼ばれただけだって」

「だけ?」

「だけだよ」


 ソレダケデス、ハイ。


「ほら、カーテンの留め具全部つけたぞ」


 俺も負けじとごまかす。負けてたまるか。


 了解!と言ってミコは義堂の背中から

飛び降りる。義堂が下におろすと思っていたが、

ミコは待ってました! と言わんばかりに背の

高い義堂の背中からマットの上に着地したのだ。


 忘れがちだが、ここは部室を名乗ってはいるが

もとは使われなくなった体育倉庫。まだその

名残が少しだけ残っているのだ。


 ……とはいっても残っているのはパイプ椅子や

マットなどの「運ぶのがめんどくさい」ものや

「何かあればもしかしたら使う」ものだけで

他のボールや小さななにかのパーツはとっくに

現在進行形で使われている体育倉庫に運び込み

済みだ。


 あーあ、またほこりが舞ってるよ。ケホッ


「あぶねぇだろうが!」

「ギドー君なら大丈夫でしょ」


 多分、その大丈夫は義堂じゃないだろ。

ミコのほうを言ってるだろ流石に。


「じゃ、もっかい登るからギドー君」

「なら降りなくてよかったのでは」


 ただマットにダイビングボムかましたかった

だけかよ。へいへいと義堂も頭を下げた。

イヤイヤな顔をしつつも、扱いには慣れてます

といった具合に。


 ぐずるとめんどくさい子供の対応だろもう。


「せーのっ!」

「お"らよっ!」


 肩車の状態から勢いよく姿勢をあげる。後日

ミコは逆フリーフォールみたいで意外と面白かった

と話す。けど、いいとこ負担やべぇからなあれ。

体格が小さいとはいえ、五体大満足の女子高生

肩車で持ち上げる(しかも2回)のはしんどいだろ。


 まぁ、その役が義堂だから俺としても一切の

心配もしていないんだが。


「って、んだよてめぇら。俺がいねぇときに

 なんかあったんかよ」


 その状態でよくしゃべれるな義堂。


「まぁ、色々とあったけど特に何もないさ。

 ちょっと後で話さなきゃいけないことが

 ひとつだけあるくらいで。それも結構

 重大なこと」

「「え」」


 基本的に「異能部」では巫女である部長の

サポート役みたいなポジションに居座っている

俺からの話というのは案外珍しかったりする。


 話すのは、当然あの日のことなのだが。


「いや、これからの部活をどうやってこう

 みたいな話だ。ミコもそれくらいは考えて

 るだろ」

「ギギギギギギ、ちょ、ちょっと待っ」

「あ、そういえばそうだったな」


 義堂が平然としてるから気にしてなかったけど

ミコは現在足りない身長を義堂で補いつつ

小さなカーテンの穴ひとつひとつにフックを

かけている最中だ。見たところまだ3つ目だけど、

日が暮れる前には帰れるのだろうか俺たちは。


「俺たちも2年になる。新しい部員の話とかも

 しなきゃいけないし。ずいぶんと甘々に

 見られていた生徒会との話もしないとな」

「あ”? じゃあミコの言ってた神前てめぇが

 六郷に呼ばれたってのは」

「それが半分ぐらいだな」


 半分どころかそれが全てといっても過言では

決してない。今回は部活の話どころか副会長の

話が6割、俺の話が4割で進んでいるのだから。


 そういえば、義堂の呼び方で思い出したが

副会長の苗字は"六郷"だったな。いつもミコも

俺も"副会長"としか呼ばないからうっかり

忘れてしまいそうになる。一応、同学年で

名前程度は覚えていてもいいが、正直名前には

興味がないからなぁ俺。


 同学年、全く本当に似ているものだよな。

とは言う俺はその学年を超えた年齢ではある。

が、体系的な立場を踏まえるとやはり同学年と

表現するにふさわしい。


 あの容姿と態度はひとつ上の学年と言われても

納得できてしまいそうだが。


 それにしても義堂は俺たちみたいに"副会長"

とは呼ばないんだな。と、思いつつ俺たち以上に

義堂へのアプローチが多い人、ようは会長が

"六郷君"と呼んでいるからそれでなじんでいる

のだろう。


「どうせ、夕霧の野郎がうるせぇだけだろ」

「いや、それはないかな。だってその話に会長は

 一切触れていないからな」


 いや触れたな確か、逆鱗にも触れたが。


「んで、そん話と今やってる掃除ってのは

 関係あんのかy


  早くしろ、ミコ!!!」

「せかさないでよ!」


 お前まだ5つ目じゃねーか。半分も行ってない。

マジで日暮れまでに帰れるかわかんねぇなこれ。


 春になりつつあるこの季節。少しづつではあるが

日の長さが日に日に長くなるのを感じる。

西日が入りにくいこの部室にとっては日の長さなど

考える必要もないといえばそれまでだが、ここは

「異能部」なのだ。昼の長さ、よりも夜の長さが

気になる季節ではある。


 今日は本当はこのまま夜の見回りをしようと

計画していたが、ミコが今日はちょっと無理だと

いうことで掃除だけをすることにした。


「で、掃除と関係あんのかって聞いてんだ」

「他の部活もやってるんだ、俺たちが今やることに

 別に何か特別なことはないだろ」

「ちげぇよ、どうせ今日はねぇっつって言ってただろ。

 んなときにわざわざ、呼んでまでやるっつーのは

 神前てめぇっぽくねぇだろ」

「そうか?」


 そうだった、ミコは用事があると言ってるのに

"わざわざ"呼んでまでこれをさせるのは確かに俺の

やりそうなことでは決してないよな。


 明日のことは明日の俺が何とかする。


 この言葉が身から沁み出ている俺らしくもない。


「ううん、ココが呼んだから丁度よかっただけだよ。

 私もほんとうは今日、集まりたいなーって思って

 いたし」

「てめぇは手動かせ!」

「発言権ないの!?」


 義堂さんや、一応その方、うちの部長ですけど。


「んだよ、やっぱ俺がいねぇ間になんかあったん

 じゃねぇか」

「それを話すんだよ」

「ならとっととこいつを下ろしてやりてぇg」

「あーーー!!待って待って待って!!!!!

 まだ一か所止まってないから」


 グイッ!


 あ


 無理矢理、はじのフックをかけるところに手を

伸ばそうとしたミコ。その重心の変化に義堂は

対応できなかった。


 精一杯の対応はした様子ではある。ミコは

固い床に顔から落下するなんてヒロインにあるまじき

グロい転び方をすることはなく、なんとか

方向を転換してテーブルの置かれている畳の上に

落とすことができた。


 が、落ちたは「落ちた」のだ。


 痛そうなのは「痛そう」ではある。


 しかもテーブル付近、つまり俺のいる場所だ。


「だあああああああああああああ」

「ぎゃああああああああああああ」

「あぶねぇっつってんだろうが!!!」


 俺は落ちてくるミコをキャッチすればよかった

のだろうが、そこまで頭が冴えているはずもなく

シンプルにミコが正面から畳の上にダイブする

ように落ちてきた。それに対して俺はあまりの

出来事に、反射的に避けたのだ。このまま避けずに

いればそのまま俺の手元or膝上に着地なんて

ことを考えたが、落ち方が落ち方だ。ダイブの

名にふさわしく頭から飛んできやがったのだ。

それはさすがに俺が考えうるキャッチのパターンの

全てがうまくいかないと勘が訴えていた。


 から避けた。俺も単純にケガだけは嫌だ。


 悪魔でも痛いものは痛いんだわ。


「でっ!」


 ビダン!


 この効果音がしっくりくる落ち方だ。俺が

審査員なら10を入れるほどに実にバラエティズムな

落ち方だ。


「…………あいた~」

「それで済むのか」


 丈夫だなっ!


 キッとこちらを目を向けてきた。なんで支えて

くれないんだと言わんばかりの雰囲気だ。というか

唇がそう言わんとしている。


 が、それはドアの音でせき止められた。


「ずいぶんとにぎやかですねここは」

「はぁまったくだよ」


 開いたドアの前にいたのは、凛とした立ち姿が

目立つ副会長の姿だった。やはり今回の話には

副会長がいないと締まりが悪くなる。


「いつもこんな感じなのでしょうか?」

「いや今日は…… ……あぁいつもだよ」


 途中、見栄を張ろうかと思ったが無理だった。


「あ”、また夕霧か?」

「いえ、今日は私だけです。それに会長には

 ここに来ることをすでに話していますので、

 これから来ることはないでしょう」


 行きたい様子ではあったが、と付け足す。


「私も業務があるのですぐに戻りますが、少々

 話さなければいけないことがあるので」

「「?」」


 ちょうどよかった。俺も話があるんだ。


「……決まったのか」

「はい、それにとうに伝えてありますから」

「え」


「あ」


 とミコがボソッとつぶやいた。


「……さては、お前……」

「……ヒッヒッフ~~~」

「なんか産むのかよ」


 ラマーズ法の口笛とか新しすぎるだろ。


「えーーーーと、そーーーーーいえばーーーー

 会長からそんな話を聞いていたよーーなーー」

「……」

「あれ? 何もないの?」


「やっぱりごまかすの下手だろミコ」

「てへっ☆」


 うざっ。おっと感情がむき出しになってしまった。


「……そう、だから掃除をすると言っていたのね」


 副会長は部屋を覗きながらそう言った。俺も

言われてやっと気が付いた。


 ミコはさっきから掃除のついでに用意していた

ものがあった。と言ってもそれも新年度の用意の

ためのものだから、あまり気に留めていなかった

俺も鈍いのだが。


 カーテンにぶらさがる洗い立てのカーテン


 と、カラフルな紙のリース。


「それ新入部員のためのものだって言ってただろ


  ……あぁ、そういうこと?」

「そういうこと!」


 義堂だけがはぁ? みたいな顔をしている。


 その顔に副会長はくすっと笑って見せる。笑顔も

気品を感じる、そのスタイル見習いたいな。


「これは……申し訳ありませんが、もしかして

 本日は私のために集まったということですか?」


 はい! と俺とミコは口をそろえて言った。


「……わかったわ。では本題を話しましょうか


  私を「異能部」の一員にしていただけますか」


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