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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
My Name Is ...
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147.副会長と話そう

「はぁ」


 ここまで学校に行くのが憂鬱なのは初めて

かもしれない。無論、いつものように学校に

行くのは億劫ではあるが今日は一段にやばい。


 今日は部活は休みだ。だが俺は学校に

行かなければならない。理由はもうわかっている

だろう。いわゆる上司命令ってやつだ。


「ふっ!」


 俺はひとつため息をした後に、腹に力を

入れてもう一つ息を吐く。もうここまで来たら

逆に力むような動作をしないとやってられん。


 今日はあいにくの雨だ。前に雪の後の

雨ほど嫌なものはないと言ったが、ここ数日の

雨のおかげで道路に雪は残っていなく、多少の

積もった雪が道路わきに残っているだけだ。

車の排気ガスと土のせいで綺麗な白色を

していないのがもったいない。


 今は13時。


 学校での待ち合わせの時間は13時。今はまだ

ぐしゃぐしゃになった道路を歩いている。これは

遅刻だろうな。だが、元から時間きっちりに行く

つもりもなかった。こんな陰気な気分で訪問する

のだから遅刻ぐらいさせてくれ。


「あ」


 そういえば帰りの天気はどうなんだろうか?

今は雨が降っているとはいえ、頭にかかるかどうか

なんとも微妙な量の降雨だ。だから、荷物に

なるのも嫌だと言うことで傘を置いてきている。

しかし、この様子だと徐々に天候が荒れそうだ。

ちょうど俺が帰るであろう時間にはシャワーの

ような雨でも降ってるんじゃないか?


 ま、いつ帰れるかなんて知らないが。


 俺は校門をくぐり抜ける。別に前に校舎裏から侵入

した時みたいに、校門に鍵がかかってはいない。

それに今は昼で、校舎の中を覗けば吹奏楽部や美術部が

ちゃんと活動している。夜なんてイレギュラーな

時間に本腰を入れた活動をする俺の部活とは違う。

校舎も当然開いているか。


 俺は靴を脱ぐ。下駄箱には何も入っていない。


 休みだからと下駄箱はおろかロッカーの中身を

全て持ち帰れと言われているからな。こうやって

定期的に来る生徒ならもうちょっと置いといて

いいよなんて優しい言葉をかけてくれればいいのに。

教師らはずいぶんと頭が固いことだ。


 それにこれからはこの下駄箱を使うわけには

いかない。ここは一年生専用の下駄箱コーナーで

あって、二年生はここではなくもう少し隣の

下駄箱に靴を入れる。掃除のときに担任から

後輩に備品を受け継ぐとかきれいごとを言われた

気がするな。もう1週間近く前のぼんやりとした

記憶だ。もとから覚える気もないし忘れた。


 廊下に耳をすませば音楽室方面からブオーと

金管楽器なのか? まぁ、吹くタイプの楽器の

鈍い音が聴こえる。クラシックやジャズは好きだが

どうにも最近の流行りに乗っかってなのか知らんが

うちの吹奏楽部がやるJ-POPを無理矢理演奏用に

仕立てたような音楽、あれはあまり好きじゃない。


 J-POPにはJ-POP。

 クラシックにはクラシック。

 ジャズにはジャズの良さがある。

 無理に寄せる意味が分からない。


 っていうのは俺の勝手な解釈なのか?


 まぁいい、いつものセリフでこの話は締めよう。


 閑話休題。便利な言葉だ。


 目的の場所に到着。音楽室から聴こえる音色が

ここからだとよりうるさく聞こえる。うるさいと

いうのは音楽好きに対する冒涜だな。これは

訂正する。


 こんなに緊張してこの生徒会室の前に来るのは

初めてかもな。あぁ違う、そういえば生徒会室に

屋上の鍵を返しに行くときも若干びくびくしていたか。

とはいっても今ほどではない。俺の今後がかかった

この重要な場面と比べたら屁の河童だ。


 コンコン


 こういう時でも礼儀は忘れない。どころか

大遅刻をしたのだからそれ相応の礼儀が必要不可欠

だろう。


「どうぞ」


 中から声がする。目的の人物だ。


「失礼します」

「30分ほど遅いですが何かありましたか?」

「いやなんにもない」


 いつも生徒会長が座っている席に礼儀正しく

座る彼女、六郷 加賀音がいる。それが意外でも

何でもない。逆に俺がここに呼ばれたのだから、

待ってくれてないとおかしな話だ。


「今日は何のご用件で」

「それはこっちのセリフだ。何で俺を呼んだ」


「確認事項です」

「確認事項?」

「まずはそこにお座りください」


 座っていた椅子から降り、来客用の対面する

ソファーの反対側に座る。案内された通りに

俺はもう反対側のソファに座った。


 今すぐにでも悪魔を呼んで俺にまつわる記憶を

抹消させたいが、それができる悪魔は現在バトルに

負けて絶賛療養中だ。


 そして何より万事を期すためにミコンを持って

来ていない。学校には持ってきてはいるが

目の前の副会長と対峙している時に”あれ”を

持ち運んでいるのはリスクしか伴わない。


 だから俺は先にミコンを下駄箱に隠してある。

時間にもよるが、タイミングが合えば再び記憶を

抹消するために暗躍ができるかもしれない。

可能性を信じてその時を狙ってみようかと思って

家には置いてきていない。


「はい、おとといの学校で聞いた質問の回答を

 受け取ってませんので。あの場で私はあなたの

 ことを守るように現れた悪魔について詳しく」

「それは勘違いじゃないか。俺はまったk」

「あなたの癖は分かっています。何かを隠そうと

 するときは眼の瞳孔が開くのですよ。何かを

 隠そうと必死になって思考回路を回転させてる

 ためでしょうが」

「……そうなのか?」

「自分の癖は自分はわからない。そういうものです。

 ですが神前さん、あなたは隠すのが下手すぎる気が

 しますね」


 俺を獣のようににらんでくる。あぁおっかねぇ。


「……いや、あれはミコに頼まれてやったことだ。

 詳しいことは聞いてはいないが、どうにも魔除け

 的な役割なんじゃないか? だから俺から出て来て

 守ったように見えたんじゃなくて、魔除けを施した

 俺から離れて、別の目標を見つけて飛んで行った

 んじゃないのか?」


 我ながらいいごまかし方をしたと思う。が、これが

この副会長様に効いてくれるかどうか……


「そうですか、ですがなぜあなたは自分から

 ”出ていった”と、そう言ったのですか?」

「あ」

「それにそんなことで私が納得などすると思いましたか?

 ではもう一度聞きます。あなたは何者ですか?」


「俺は人間だよ、ただの」

「いいえ」

「!?」


 そこまで全否定されるとは思ってもいなかった。

なにがこうも副会長のそのセリフの根本を担って

いるんだろうか。


「あなたたちが部活を始めてからというものの

 個人的に「神前 滉樹」という人物について

 調べていました」

「え」

「当然でしょう。正直なところ、あの部活の活動が

 成す本来の意味合いを理解できないのが本音です

 から。会長の許可を得て、個人的にあなたたち


 「異能部」及び「神前 滉樹」含む「御前 小恋」

 「義堂 力也」を監視していました」

「監視?」

「はい、ですが除霊をすると名ばかりであると勝手

 ながら思っていたにも関わらず、「異能部」の

 活動報告と相違なくしっかりと除霊ができている。

 その点は称賛に値します」


 そうか。霊感が98もあれば俺たちが除霊した

かも実際に現場に行くだけでもわかるよな。


「そして「御前 小恋」「義堂 力也」については

 事前情報も多く、何か目的があるわけではなく

 至極真っ当に部活動に励んでいると判断しました。


  ですが「神前 滉樹」、あなたについては今だ

 不明な点がある、いえ、それが多すぎます。


  マヤの持っている個人情報と異なる点が多く

 家族構成も曖昧、さらには出身すらもさだか

 ではないとなれば疑いたくもなります。それに

 御前さんから聞きましたが「異能部」は元々

 神前さん、あなたが発端者だそうで」

「あぁ、そうだが」

「そうですか。あなたが一体この学校で何を目的に

 「異能部」を設立し、活動を続けているのかまでは

 わかりません。それに個人情報がちぐはぐな点に

 ついても今は言及はいたしません。


  ただ一つ聞かせていただきたいのは、あの日の

 私にした”あの行為”についてです。仮にあれが

 自分のやったことではないと言うのであれば、

 それに見合うだけの証明とその材料を提示して

 いただきたきます。認めるのであればまた話が

 変わりますg」

「あれは俺じゃないって言ってるだr」


「最後に勧告します。憶測ですが、私はあなた

 「神前 滉樹」についての重要でかつ危険因子

 となり得る情報を握っているかと思われます。

 それもマヤの個人情報にすら載せることを拒む

 だけのものを」

「……」

「もし私がその証明に不十分かつ不明瞭な点が多く

 存在する場合は、この情報を告示することも

 可能だと言うこともお忘れなく。それでも今

 この場で自分があの悪魔たちについての情報を

 一つも持っていないと豪語するのであれば、それは

 あまりにリスクを伴うと思われますが」

「……」

「……質問が難しすぎましたか? ではこうします。

 実に単純なYES OR NO形式の質問に

 変えましょう。


  あなたは


  悪魔、あるいは悪魔と関与できる特別な存在か。


  イエスかノーでこたえてください」


 ……


 さっきから手ががったがたに震えている。なんだ

この女、今まで見た奴らよりも人を追い込むことに

長けた野郎だ。それにこんなの答えようがない

じゃないか。


 ……だが、答えるのは簡単だ。簡単で実にリスキーだ。


「……」


「……」


「の、ノーだ。俺は知らない」


「わかりました。無論その場合は証明できるだけの

 材料を提示してくれると思われますが」

「今はどうにもできない。あの儀式については

 ミコが詳しいから聞いてみることにする」

「わかりました。以上で話は終わります。仮に本当に

 違うというのであれば無礼ですね。すみません

 でした」

「……」


 それじゃあこれで。と言い、両手の震えを抑える

ように背中でグッと握りこみ、一息ついて立ち上がる。


「それにしても意外でした」

「?」


「実のところ本日、生徒会室にあなたが赴くとは

 思っていませんでしたので」

「え、そりゃあ呼ばれたからな。来るのは当然だろ」


「いえ、あの光景を見られたと思いここから逃げ去る

 かと思っていましたから。それに私を相手にして

 あれほどまでの”情けない戦い”をした後だと私の

 顔すら見たくないと思ってもおかしくないでしょう。

 と、失礼。あの現場を知らないのであればこの話を

 したところで意味がありませんでしたね」

「……」


 唇をばれないように噛む。実に当たり前のことを

言っているのは確かではあるが、ここまで俺を侮辱する

セリフを吐くとはずいぶんと腹立たしい。が、今は

耐える。今、逆上したところで全く意味がない。


 それに今日は満月だ。”デリトー”たち悪魔の力が

より増す”とてもいい”日だ。今夜にでもこの目の前の

副会長から俺の記憶を消し去るしかない。


 それができなければ俺はもう蒸発するしかない。

副会長を覗く生徒、教師全員から俺の記憶を消して

ここではないどこか別の町に行くしかない。あるいは

記憶なんて消さずにこの”学校自体”を蒸発させる

のも一つの手か。いや、俺の悪魔としての特性と

してそっちのほうが効率的か。


 それに実に悪魔らしいジャッジだな。


「どうしました? それほどまでに感癪に触る

 言葉を吐いたとは思っていませんが」

「……あぁ、気にするな。それじゃあミコにそのことに

 ついて聞いたらまた来るよ。あ、それと次の部活は

 来週になる」

「わかりました」


 俺はそのまま生徒会室を出る。さてこれから

どうしようか。全くこれからの俺の活動の目星が

つかない。一応、ミコに聞いてみるしかないが

そんなことをして俺の都合がいい言葉を受け取れる

となんて思っていない。それにあいつに悪魔が

どうこうといった時点で面倒なことになるのは

目に見えている。


 とりあえずミコンを回収しに玄関に……


「……」

「どうしたのさー。そんな物騒な顔してー」

「……何の用ですか」

「いいや、なんでも」


 そんなときに現れたのは、お調子者の食えない

ヤツと勝手に決めつけているうちの学校の生徒の

代表であり、俺たち「異能部」を裏で支える人物。


 夕霧 友也だった。


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