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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
嗤う門には複来る
134/446

134.話をまとめよう

 さて恒例のタイトルだ。


 特に話さなくてはならないのは二つある。

ひとつは、”ムム”と”ビビ”についてで、

もうひとつは……いや、やっぱりそれはまた

後で話すとしよう。


 まず今回の事件(?)の立役者である

俺の自慢の眷属二人についてだが、当然

こいつらに軽い罰を与えなくはならない。


 別にそれを明確に示しているわけではないし

晩飯ヌキ! とまで厳しいものではない。


 前に”デリトー”にやったみたいな

ものだ。だが、それとは違うのが一点。


「あのさ”ビビ”」

「マスターマスター、どうしたの?

 おねえちゃんじゃなくて私なの?」

「いや、どっちでもいいしどっちが答えても

 よかったんだが…… まぁいいわ、二人に

 ちょっと聞きたいことがあるんだ」


 ひとつはこれも恒例ではあるが自分たち以外に

学校内で別の霊を見たかだ。が、ずっと絵の

中にこもりきりだった二人なのだから

わからないと答えるのは目に見えていた。


 だが、それではなく俺の眷属として

俺に対して聞きたいことがあったのだ。


「こうやって俺の眷属をミコンに戻している

 今だから思うけど、なんで俺の元から

 離れようなんて思うんだ?」

「……」

「いやいや、そりゃあもちろん思春期の男の子

 よろしく”独り立ちしたい”と思ったと

 いってもかまわないが、俺の魔力を補給して

 比較的、何不自由ないミコンの中で暮らす

 分には俺の元から離れたいと思う理由が

 あまり思いつかないんだ」


 これは完全に自分勝手な思い込みだとは

わかっている。俺がどれだけ自己評価しようと

それは「俺」の中でしか通用しない常識だ。

客観的に見ればもしかしたら非常識だとも

捕らえられるだろう。だからこそ、上司である

俺から逃げ出そうと本気で挑んだこの姉妹に

聞いてみたいことのひとつだった。


「それは……


  ただなんとなく……ではないですわね。


  マスター、あなたはとても優しく私たち眷属に

 対して十分な奉仕をしてくれる人物だとは

 思っています。ですが、それは逆に言えば

 対等な返答がないのと同じです」


 対等な返答。俺は繰り返す。


「私たちは魔力を十分に得て暮らしているのは

 確かです。ですがマスター、あなたが優しすぎる

 せいかその魔力の使う機会がないのです。

 どれだけ巨額の富を受け取っても、それを

 使えるだけの場がないのですよ。だから私と

 ”ビビ”は魔力を使うために出て行ったと言っても

 過言じゃありません」

「え、そんな魔力ってパンクするものだっけか?」

「いいえ、ただ「使いたい」と思うだけです。


  もちろん私たちはマスターを主にした立派な

 「悪魔」ですから、その欲望ですら強大なもの

 だということをお忘れなく」

「……」

「……フフ、マスターにそんな顔は似合いません。

 仮にも私たち眷属を破った、いうなれば強者

 なのですから。ですが、これからも私たちみたいな

 考えの悪魔がミコンから出て行くなんてことが

 ありえないわけではありません。


  だからマスター、少しでも私たち眷属を

 使ってやってくださいまし? また私たちも

 出ていってしまいますわよ?」

「……」


 俺はこの人間社会に暮らすためにお前ら

悪魔を簡易に使うなんてことはしない。

……いいや、使ってやってはいたさ。だが

それで何かしらの″問題″が浮き彫りにならない

程度にしか使ってやっていなかったのも

事実だ。特にいなくなった悪魔全員を完全に

把握していると聞かれれば嘘になるし、

使ってやっていない悪魔たちがこれから

どう動くのかもわからない。


 その時点でマスター失格なのかもな。


「俺はお前らの何だ」


「マスター。少なくとも死して滅する

 存在をこのような形で覆している今は

 忠誠を誓うべき崇高な人……いいえ、

 悪魔ですわ」

「おねえちゃんオネエチャン、それh」

「ビビ、もういいのよ。私たちは負けたの。

 そして、マスター?


  次に私たちに舐めてかかったら

 次こそ、次こそ息の根をとめる。


 そのつもりで」

「わかっている。これからは監督不届は

 しない。神ならぬ悪魔に誓ってやるよ」


 と、念を押されたのがあの金曜日から

二日たった日曜日の夜の出来事だ。


 そしてもうひとつの話さなくてはならない

ことというのはさらにその次の日のことだ。


「それで、音楽室の様子は?」


 そう、生徒会への報告である。


 そしてこれが一番面倒な作業なのだ。


「……それで、音楽室の絵はもう動くことは

 多分ないでしょうと?」

「あ、あぁそうなんだが……」

「すみませんが流石にそれを丸呑みして

 信じることはできません」


 今、生徒会室には俺と副会長がいる。

生徒会長と他のメンバーはいない。

というか、これほどの確率で生徒会室に

いる人物が副会長しかいないだけで、

副会長だけが言ってしまえば異常だ。


 それはそうと問題となったのは今回の

学校七不思議解決の経緯の説明だ。

そりゃ当然だ。音楽室で寝たら絵のなかに

入れて、そこでとんとん拍子に動く

理由が解決できたなんて話を正真正銘の

事実だと思うバカがどこにいるんだ。


「そういえば他のメンバーは」

「全員、自分の教室にいます。それで

 その原因となっていたものというのは」

「原因……。 原因は見込みの通り悪魔とか

 そういう類いの仕業だったな。幸いにも

 巫女であるミコがいて助かったが」


 一応、話の流れとミコのメンツを考え

結果的にミコのおかげで解決したという

ことにしておこう。そっちのほうが

本人も喜ぶし、言うなれば物的証拠がない

以上、てきとうな理由でも通るだろう。


 それが副会長の頭に通じるかは

微妙なところだが……。


「わかりました。これ以上に報告することは……」

「あぁ、それと言いたいことがあるんだ」


 そしてここで俺はある”約束”のために

こう告げる。


「”須田 拓也”」


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