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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
嗤う門には複来る
132/446

132.戻ろう

 さて、これにて学校七不思議のひとつ

”音楽室の動く絵”編は終わりになり、

作者のネタ切れと、プライベートの多忙に

よって長々となってしまったこの

話もようやく……


 ってあれ!? なんでいつもみたいに

「132.話をまとめよう」ってタイトルじゃ

ないんだ? それにタイトルにある通り

「戻ろう」ってただ戻るだけなのにそんな

丸々一話も必要だとは思えないのだが……


 ……なんだ、この嫌な予感は……


「どうした、神前」

「いや、何でもない」


 タイトルまでいじってくるメタ発言を

ツッコまれたらいろいろめんどくさい。

ここは何もないようにふるまおう。


 そして今ここはベートーベンの絵の

中だ。俺たちはここから来て、ここで

”トラン”に待っててくれと言ってある。


「ったく、にしてもここに戻ってくるのが

 1ヶ月ぶりに感じるぜ」

「それ小説投稿のリアルな経過時間だから。

 大体あってるっちゃあってるわ」

「あ”? 小説?」

「イヤーナンデモナイー」

「……はぁ”?」


 ショウセツッテナニー???

オニイサン、ゼンゼンワカンナイヨー??


 結局、担いでいた”ムム”と”ビビ”のうち

”ムム”を義堂に託してしまった。重さが

たかが一人分だとしても重いものは重い。

そのおかげでずいぶんと楽にはなった。

俺の年齢はこう見えて30代前半で、

そろそろ足腰に気を付けなきゃならない

次期だからなぁ。


 ってここは肉体はないんだった。

そんなのは全然、全く関係なかったわ。


 担いでいた”ビビ”を一旦降ろす。

それを見て義堂も”ムム”を降ろして二人を

肩寄せ合って仲良さげに壁にかけさせる。

そんなことはしなくていいのだが、そっちの

ほうが見栄えがいい。


「さてと、義堂ちょっと待ってろ」


 俺は壁に手を当てる。確かここから

義堂が放り投げられた記憶があるから……


(我、神前 滉樹の名によって命ず。

 ”トラン”、応じよ)


 ……


 ありゃ? この壁じゃなかったか?

ならこっちの壁か?


(我、神前 滉樹の名によって命ず。

 ”トラン”、応じよ)


 ……


 ?? これも違う。なら二人が

寄りかかっている壁か。


(我、神前 滉樹の名によっ(以下略)


 ……


 これも違うのか。なら最後に余ったこの

壁だったか? そんなことはないと

思うが……


(我、(以下略)


 ……


 ??? あ、あれぇー……??

おーい”トラン”さーん? ここで

待っててって言いましたよねー??

まさかボイコットなんてことはない

でしょうねぇーーー??????


「どうしたんだよ、んな天井に

 手なんか付けて」

「最終手段」

「最終手段?」


 壁がダメなら天井か床しかないじゃん。

もうそれしかないじゃん!!!


 ガチャ


 急に扉の開閉音が聴こえた。ここには

扉なんてものはないし、あるとしたら

鏡ぐらいだ。


 ってこれは…… 俺の携帯?


 ピッ


「もしもーし」

「あ、つながった。ども”トラン”ですぅ」

「そういえば着信音変えてなかったなって

 思い出したわ。ってなんで俺の携帯に

 ”トラン”がかけてくるんだよ。というか

 なんで携帯に電話かけれるんだよ!!」

「いやぁ、それg、あっちょっと”メア”さん

 おやめください」

「ええやろ、ええやろ別に言うこった

 変わらへんから。おう、ダンナ久しぶり

 やなぁ。もう一ヶ月もあってへん気が

 するわ!」

「お前もそれ言うのかよ!」

「はっはっは。それはそうとそっちは

 どないしたんや」

「無事、捕獲……じゃなかった、保護に

 成功した次第だよ。それでもう用事が

 済んだから帰ろうと思ったら待ってる

 はずの”トラン”がいないんだよ。って

 ”トラン”お前どこにいるんだよ」


「あっ、はい、私は”メア”さんと一緒に

 います」

「いやそれは分かるが……って、あれ?

 てことは義堂の中にいるのか」

「はいぃ」


 ここで待ってろって言ったのになんで

義堂の中に戻っているんだ?


「あのー、ですね今はですね……


  マスターを元の身体に戻すことが

 できないんですよ……」

「……


  ……あっ、ごめん聞いてなかった。

 それで、もう一回言ってもらえる?」

「はい、あのー、ですね今はですね……


  マスターを元の身体に戻すことが

 できないんでs」

「聞こえてるから言わなくていい!!」


 戻れない? え、なにこの急展開。

やっぱり戻るのに一話どころかまた

一月近く使う流れなの!?


「それはどういう」

「それは……」

「そいつは俺から説明するわ。どうもなぁ、

 その絵とダンナらの身体が離れて

 しもたんですわ。それで”トラン”の

 ゲートっつちゅうたか? それがプツンと

 切れてしもうてなぁ。でも一応、こうやって

 電話するくらいのほっそい線では繋がっとる

 から連絡はとれるんやが」


 体が離れたっていうのは霊的にこの

絵の世界から隔離されたということでは

なさそうだ。だって言ってしまえばここに

来てからあまり時間は経っていないし、

それができるほど霊の力は弱くはない。


 ならば考えられるのは物理的に絵から

離れた。つまり音楽室から俺たちの肉体が

離れたってことに……


 ……


「もしもし」

「どうしたダンナ」

「義堂の身体、ようは憑いている母体が

 どこにあるかってわかるか?」

「あーちょっと待っといてな、


  あーっと、これは……

 ”ブシツ”じゃあないかい?」

「やっぱりかーーーああああ」


 俺たちは何者かによってあの音楽室から

身体を持ち運ばれていた。というか、

何者なんてぼかさなくてもいい。該当する

人物なんて一人しかいない。


「って、なんでそこが部室だって

 わかるんだよ。部室の場所なん″メア″

 お前に教えたことないだろ」

「いやいや、そんなこたないですよ。

 ここについては″ヴァンダー″の兄さん

 から聞いてるんで」


 聞いてるって、″ヴァンダー″をお前らと

会わせたことなんてないはずだが……

……じゃないか。元から″ヴァンダー″は

どこにもいないしどこにもいれるのか。


 さすがは「巡回」の″ヴァンダー″。

後で、色々どれだけ言って回ったか

事情聴取しておかないとな。


「んで神前、何があったんだよ」

「今の話でわかるだろ。


  先にミコが起きて俺たちの身体を

 あの音楽室から連れ出したんだよ」

「はぁ? んなことミコできんのか?」

「できたんじゃないか? そうじゃないと

 考えられないし」


 俺の一撃をケロッと耐えたのだから

意外とタフなヤツだとは思うが……


「じゃあ何だ? 俺たちゃ帰れねぇのか?」

「あぁ、ここももとの絵に戻るだろうから

 早く何とかしたいg」


「あのぉ、マスター」

「ん? どうした″トラン″」


 また電話からぬるっとした声が聞こえた。


「あのぉですね、そのぉ」

「スパッと言ってくれないか?」

「あ、はい、えー、その


  私の力がどうもですね、

 弱まってるんですぅ


  ……はい、すいません」

「え」

「ですのであまり時間がないかと」


 えぇ何その急展開。


「それはーどういうことなんだい」

「どうも、外の世界とこの世界じゃ

 仕様が違うみたいで、はい、そのー

 こうやってすぐにゲートが途切れたり

 するのもそうですが、かなり力が

 いるみたいなんですぅ」

「それは俺が供給してるから大丈夫

 なんじゃ?」


「いえ、条件がよくないんですぅ」

「条件?」

「月の力が弱まってるんですぅ」

「マジかおい」


 そうだった。元から″トラン″は満月の

時にしか活動できない結構シビアな

悪魔なんだ。さらには今回みたいな

絵の世界と夢の世界を繋げるなんて

異界と接続しているのだからちょっとした

ことで、力が途切れてもおかしくはない。


 しかも月の力が弱まってるってのは

言うまでもない。それに今日の天気予報

から察しはついていたが、これは多分

月が雲で隠れたんだろうな。俺もそれは

予想はしてはいたがここまで影響が出る

とは思っていなかったし、もっと言えば

これほどまでにこの場所に留まるつもりも

なかったから、月の力なんてものは軽視

してしまっていた。


「ですのでこの電話線もいつ切れるか

 わかりませんので、お早めに」

「お早めにって……」


 ミコに元の音楽室に戻してくれと

言ってみてくれと”メア”に頼んでも

意味がない。今は義堂の憑依霊として

活動しているのだから、外部に力を

使えるはずもないし、相手も相手だ。

霊感ゼロの部長がそれに気づくはずがない。


「じゃあどうしたらいいんだ?」

「えぇ、はい、それh」


 プツッ


 あ”っ! 本当に切れやがった!

もう一度、同じ連絡先にかけ直す。


 というか俺の電話に文字化けのように

悪魔の言葉で電話番号を出すなよ。

それと「義堂(自宅)」って連絡先の

名前はどうよ? ならここにいる

義堂にかけるのなら義堂(携帯)とかに

なるのかよ!


 が、予想通り電話はかからない。

線が切れたんだろうし、仕方がない。

……いやいやいや、仕方がなくないよ!

全然仕方があるわ! どうしろってんだよ!

それ聞く前に切れたもんだから全く

分からないじゃねーか!


「どうした神前」

「えーっとだな……要約すると、


  ミコがまたやらかした」

「またかよ」


 ほんっとあいつ問題しか起こさねぇな。

とは言ったものの、あの音楽室は冬の

暖房の効いてない教室と言うだけあって、

かなり寒かった。今まで俺がこうも急いで

事の解決を図っていたかと言うと主に

これが理由でもある。


 今、俺たちの肉体の状態は基本的に

寝ているに近い。その時の夢などの

脳内の働きかけの場所がその肉体ではなく

この絵の世界なだけであって、原則として

俺たちの肉体は睡眠状態だ。


 となればよく聞く話だろうが、

「寒くて寝たら死ぬ」なんて遭難した

山小屋での一言は。


 その通り、俺たちは時間が経てば凍死して

いたかもしれない。が、そんな丸一日寒空で

過ごすわけでもないし、大丈夫だとは思うが

ミコは俺たちをその危機から救おうと、肉体を

こたつのある部室に運んだのだろうな。

あるいは自分がかぜを引きそうだったから

さっさと撤収してしまおうと思い、俺たちを

捨てておくのをためらったからなのか。

どっちにしろ今の状況でははなはだ迷惑だが。


 今、俺たちはもとの肉体に戻れない。

仮にこの日を逃したら次の満月の日まで

ここから出ることができない。しかも

ここはもうすぐで元の「絵」に戻るときた。


 そうなればもう「寝ている」なんて

健康的な状態ではない。「植物状態」だよ。


「やらかしたっつっても、ここから出れねぇ

 とかそーゆーんじゃねぇんだろうが。その

 ミコの野郎本人はこっから出れてんだから」

「それがその通りなんだよねぇ」

「」

「ということで、ここから出る方法を模索

 しようかと思う」

「だったらこいつらに聞くんがはえぇんじゃ

 ねぇのか?」


 こいつらとはさっきそこに捨てた例の

双子のことだ。そう言って義堂が壁に

寄りかけた”ムム”と”ビビ”の元に向かう。


「お”らぁ!! てめぇら起きやがれ!!」

「うわあっ」

「うわあじゃねぇよ。ちいと面倒なことに

 なったから手伝え!」


 俺としては驚くなよとこいつらに言って

やりたいが、これはこれで面白い光景だし

見てるとするか。


「私たちに何か?」

「お、ちっとは元気になってんじゃねぇか。」

「なんとなく状況はわかってるけd」

「あ”ぁ!? わかってんのかよ!!」

「その様子から帰れないとかでしょう」

「おねえちゃんオネエチャン、一応さっき

 殴り合った仲だけど……」

「いいのよ、ある程度は回復したけどまた

 一戦交えるだけの気力はないわ。」

「おねえちゃん」


 性格が性格なだけあって、こうなれば従順に

なってくれるようだな。ここでまた話なんて

聞くもんですかと癇癪起こされようもんなら

面倒甚だしい。


「で、どういうことかわかってんだったら

 何とかする方法ってのも知ってんだろ」

「それはもちろん「外界のあなたたち」を

 「このあなたたち」に近づけさせることに

 限るわよ」

「だーかーらよぉ、それができたらやってんだよ」


「おねえちゃん……」

「いいえ、こちら側からアプローチすれば

 いいだけでしょう。それは私たちがいれば

 できることも」

「……」


 ”ムム”の言い分は正当だ。あっちが何もできない

のであれば俺たちが何とかするしかあるまい。

そしてそれにはこの「絵の世界」の創造主である

”ムム”そして”ビビ”が欠かせない。同時に俺……

というよりか、義堂がやりたくない手だろう。


「てことはなんだ? さっき血流して潰しあった

 このブスに手を貸せってことか」

「そういうことだ義堂」

「ちっ、そりゃ神前てめぇが許せても俺が

 許せねぇぜ?」

「……」


 予想通りの返答だ。義堂はもとからこういう

助けられること自体を嫌う。さらには自分と

さっきまで血みどろの殴り合いをした相手と

なれば余計嫌に思うだろう。俺だってそう思う。


「いいか? 俺はてめぇらに”聞いた”だけだ。

 ”手を貸してくれ”なんてこったぁ言ってねぇ」

「おねえちゃんオネエチャン、これが不良って

 生き物?」

「俺は不良じゃねぇ!」


 いや、不良だろ。今は軽度にしろ不良だろ。

これを品行方正だと言うヤツがいるか?


「はぁ、あなたってそこまで能なしの口たたき

 だなんて思ってなかったわ。それに負けたと

 思ったら余計さめざめする」

「あ”ぁ? なんか言ったか?」

「いいえ何も。ですが、私もここから離れると

 なればそれなりの”礼儀”と言うのがあるわ。

 私としても願い下げよ」

「礼儀?」

「それはいいわ。”ビビ”わかってるわよね」

「うん」

「マスター、こんなことを申し付けるのは非常に

 礼儀知らずだとは思いますが、


  魔力をもどしてくれませんか。


  それも多少に、力が五分に使える程度」


 義堂がそれを聞いて飛び込む。そりゃあ

そうなるよな。


「お”い! てめぇさっきのさっきまで何してたか

 わかって言ってんのか!? あぁ”?」

「ええ、もちろん。でも今からこれを行うには

 力がいるのはなんとなくでも分かるでしょ」

「また、その力でなんかしでかそうってんじゃ

 ねぇんだろうなぁ!?」

「義堂、もういい。こいつらには俺から

 色々言っておくから大丈夫だから今は急いで

 いるんだ。耐えろ」

「じゃあなんだ? こいつらを信用するって

 ことなのかよ。そりゃ虫がいいってもんだ。


  ……はぁ”ー、っつってもこいつらしか

 何とかできねぇんだろ? 神前の

 言う通りだっつーのもわかってるよ。

 だがな、俺にはこいつらにてめぇがそこまで

 肩をいれる意味がよく分からねぇんだ」


「そんなの、”仲間”だからな」

「はぁ? 仲間だぁ?」


 当然、俺のもとを離れ俺に対抗したヤツである

としても俺はこれを変えることはない。


これは俺が「異能部」で学校七不思議を

解決するときに決めた最初で最後の決意だ。

自分で捨てたものは、自分で拾わなくては

ならない。それが、俺に盾突こうがなんでもだ。


「……ちっ、しゃーねぇ。ここは神前てめぇの

 言う通り黙っててやる。その”仲間”っつー

 もんを俺も知らねぇ訳がねぇし、それに

 口出ししようってんでもねぇ」

「……」

「お”い! てめぇら、その”まりょく”で

 俺たちを何とかしろ。そいつでまた

 何か面倒ごとを起こそうってなら次こそ

 ぶっ潰してやる」

「そのつもりはないわ。それにさっきも

 言った通りそれができない程度に力を

 もらうつもりでしたから」

「おねえちゃんオネエチャン……」

「けっ、こいつら見てるとあのバカ部長と

 その妹を思い出すぜ。神前、とっとと

 帰るぞ」


 俺のほうを見てニヤっと笑って見せた。

はいはい、はなから戻るつもりだったよ。

こいつらを使っても”トラン”の力が使える

時間までに戻れるかなんて確証がないが、

道が一つしかないならそこを通るしかない。


 ”ムム”の首に手を付ける。そして魔力を

流し込m……あ、違うなこの場合は先に”ビビ”に

流し込んだ方がいいのか? ま、どうでも

いい。両方に手をかけてグッと腕の付け根

あたりに力を込める。


 腕を通してこれで魔力が送られてる

はずだ。


「どうだ?」

「これくらいでいいでしょう。それで

 マスターたちの肉体はどこに?」

「あ、そこは聞いてなかったな。それは

 ここからカクカクシカジカの方向にあr」

「マスターますたー、かくかくしかじかって

 何? 四角いムーブ?」

「お前らも察しろよ!!」


 それとなんで”ビビ”お前はタ〇トの

CMを知ってるんだよ。


 ”ムム”と”ビビ”が部室の方向(?)の

壁に手をかける。


「**********************」

「**********************」


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