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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
嗤う門には複来る
119/446

119.マヤに会おう

「-----……」


 授業終わりに一つ、伸びをする。やはり

長時間座りっぱなしというのは、腰から

首まで固まってしまう。特に30代前後、

といっても体の年齢はまだまだ現役高校生

ではあるが、一般の人よりも20年以上

酷使し続けた身体なだけあって、ガタが

来るのも仕方がない。


 今日は水曜日。明後日にまた夜の学校に

行くのだが、俺は”ある”ことを思いつき、

ただ一人準備をしておこうかと企んでいた。


 結局言えば、俺一人で可能なものでは

ないのだが。


 今日は俺の提案で部活をおやすみに

してもらった。別に今日は他の部活から

何か「働け」とノルマをかせられてる

わけではないし、休みにするには今日

ぐらいしかない。


「……うし」


 伸びの体制から戻ると、一息ついて

そういった。楽しい楽しい魅惑の放課後

だというのに俺だけがこんな面持ちなのは

ちゃんとした理由がある。もちろん、その

準備が関係しているためではあるが。


「どうしたの、ココ?」

「どうした?」


 部長が俺を気にしている。そりゃ

俺が休むといえば気にするものだろう。


「いやいやこっちのセリフだよ。何、いつもに

 増しておっかない顔してるのかなって。

 これから歯医者にでも行くの?」

「別に嫌なことがあるとかじゃないし、

 歯医者でびくびくする奴がそんな怖い

 面持ちするわけねーだろ」


 って待て待て、”いつもに増して”って

俺っていつもおっかねぇ顔してるの?

そんな顔しているつもりなかったのだが……

……ちょっと傷つくな。


 今更だけどメンタル指数低いよねー俺。


「これから行くとこがあるんだよ」

「自首?」

「俺が何かしたの!? じゃなくてちょっと

 お偉いさんのところにいかなきゃ

 ならないんだよ」

「ふーん。じゃあギドー君誘ってMacにでも

 行こうかな。なんかキャンペーンのクーポン

 チラシでついてきたし」

「そうかい。俺も誘うつもりだったら

 なんか悪いな、断っちゃったみたいで」


「ううん、べつに」

「……それはどっちの意味だ……?」


 俺がすまないと思っていることに対して

”別に”そんなことないよと気を利かせて

いるのか、あるいは”別に”呼ぶつもり

なかったのか…… 聞いたら悲しい結末が

待っている気がするから聞かないでおこう。


 そっちに気が行ってしまい

「マックのその言い方は違うダルォ!」

とツッコミ損ねたのは仕方がない。


 で、ミコは放課後にJKのように

”放課後の帰り道にマックでお茶”

というなんとも青春チックなことを

しに街に向かい、それに義堂は連行

された。無論、男子高校生と一緒に

ファーストフード店に入るなんて

いうのは甘酸っぱい展開になるのでは

と思うかもしれないが、残念ながら

そんな展開になんてならない。


 この小説のタグに「ラブコメ」を

付けているとは思えないよな。だが

ミコ含め、女性陣のほとんどは俺の

「ラブ」の興味の範疇外なんだよ。


 それに、その様子を見て生徒会長が

黙っていないもの。そのまま偶然を

装って、生徒会長が街に向かったのを

しっかりと黙認した。


 それに


「夕霧@最近出番無いヲ


  後輩とマクドで会ったンゴwww

 マジ、ぐーぜん過ぎて運命感じるww


  16:15」


 ってツイートも確認している。

生徒会も俺たち同様おやすみのようだ。


 というか今日が生徒会もオフの日だから

こそ、行動に移そうと思ったのだがな。


 まぁ、読者全員タイトルで予想は

ついてると思うけどね。


 そして俺は一人、再び”この”場所へ

やってきた。俺の通う学校の領主に

あたる人物の豪邸であり、同じ学年の

生徒会メンバーの一人もここの出である

「英霊家」の門前だ。


 やはりこうも厳かな雰囲気を目の前に

すると緊張する性分はいつまでたっても

俺の中にくすぶっているようだ。


 カンコーン


 やっぱり心臓に響くチャイムだ。

ってあれ? 前はカンコーンじゃなくて

キンコーンって音だったよな? まぁ

キンでもカンも別にどうでもいいか。


「はい、どちら様でしょうか」

「えーーーーー、はい。あのーーーーー

 私「英嶺高校」の生徒でして……」

「あ、神前殿ですね。少々お待ちください。

 今扉を開けます」


 これまた前回と同じ対応をしてしまった。

ていうかあの執事になんで俺の名前が

覚えられてるんだよ。そんな突飛なこと

してないだろ俺。


 ってそうか。ここに来ること自体が

もうすでに突飛しているのか。なるほど。


 ギギギギギギギ


 おぉ、何度も見るけどやっぱりこういう

大きなものが動くのは見ていて面白い。

前にマヤと過ごしたクリスマスでは

マヤが裏口を通って入ったからこの

光景は見れなかったが。


 今回も裏口からおじゃますれば

よかったのか。こんなでっかい扉を

開閉する必要なんてないよな正直。


 今日は早めに来ているだけあってまだ

明るい。といっても世間的には暗いと

言えるだけの暗さではあるが、足元が

くっきり見えるだけの視界はある。

というか俺には暗いなんて概念自体が

存在しないに等しいんだけどな。一般論

だよ、イッパンロン。


 それにしても、冬ということで閑散とした

「英霊家」に続く道は前に来た時に比べ

寒々しい。クリスマスの時もここには

きてはいるが、そのときは木々の一本一本に

装飾がされていて、寒々しいどころか

温かみすら覚える光景だった。それに

比べ、何もない今日のような日は明かりを

出来る限り落としている。


 前にここが明るすぎてヘリが停まった

なんて珍事が起きたぐらいだしな。


「はい、どのようなご用件で?」

「マy、あー麻綾さんは今この家に居ますか?」

「はい、さようですが」


 危うくいつもの流れでマヤとあだ名で

呼ぶところだった。あれでも俺のいる学校の

重役に当たる人物なんだ。それなのに執事の

目の前でなれなれしく呼ぶのはちょっと

ばかし気が引ける。


 まぁ、多分だがいつも通りマヤと呼んでも

よかったのだろうな。そう執事にも言って

ありそうだし。だけれども俺はこの状況でも

最低ラインのマナーを守ることにする。


「ご案内しましょうか?」

「ああ、お願いします」


 そのまま案内されるがままに豪邸の

中を歩く。執事がいなかったらここで

何時間迷ったのだろう。


「こちらになります」

「はい、ありがとうございます。ってあれ?

 これってそのまま入ってもいいんですか?」

「はい、お嬢様も気に留めないとおっしゃって

 いましたので」


 ?


 まぁいいか、そのまま開けt


 バァンン!


 って勝手に開いた。というか部屋から

マヤが飛び出してきた。


「ココ! なんでいるのさ!?」

「そりゃあ用事があるから……って……」


 ……


「……どうしたの」

「俺がたった今思ったことを的確に

 伝えるとしたら


 なんでコスプレしてるんだよ!?」


 茶色い斑点付きのだぼだぼな着ぐるみに

緑色の帽子と蝶ネクタイ…… とネズミ耳。


「……モッ〇ル?」

「そうだフモ」

「何してんだよ」


 それもう何年前のアニメだよ。俺だって

存在を忘れかけていたぐらいだし…… って

忘れてなんてないからね? 賀東招二先生、

つい口走ったことを言ってすいませんでした。


「それで、何? 一人コスプレショーでも

 していたんじゃあるまいし」

「それはお嬢様の防寒着でございます」

「は?」


 後ろで執事が代わりに答える。


「つい出来心で購入したそちらの服が

 実に意外にも防寒性能がよく、毎年

 冬になると暖房の代わりにそちらを

 着t」

「おーい! クビにスッゾコラー!!」

「すいませんお嬢様、ですが事実である

 ことは確かな故」

「人には隠したい過去とか現実とか

 あるんだよ、ねぇ!?」


 それでは。


 そういって場の空気を読んだのか執事が

スーッといなくなった。……こわっ!


「はぁ…… ……で、ココはなんでまた

 私の家にお邪魔しに来たフモか?」

「思い出したかのようにキャラ付けするな。

 それで要件についてなんだけどさ。まぁ、

 とりあえず……


  廊下で話さないでどっか別の場所で

 話さないか? ここはちょっと場所が

 悪すぎる」


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