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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
嗤う門には複来る
118/446

118.日本語を教えよう

「えーなんでー!!」

「あれはな悪魔の言葉で言うと

 ******って意味なんだよ」

「え、そんなおっかない言葉なのアレ」


 ******というのは悪魔のなかでは

「禁忌」なんてものに揶揄されるもので

言葉にするだけでも恐ろしい言葉だ。


「そんな言葉をマスターは使ってたの……

 やっぱりマスターって恐れ知らずな

 すごい悪魔なんだー」

「……あぁ、そうだ。そうなんだよ」


 そんなことはないが、都合がいい上に

気分もいいからこれでよしとしよう。


 さてそんなことをしていないで

とっととお勉強に移るとしよう。それに

前のミコとは打って変わってやる気が

ないヤツらを教えるのだから、大変な

作業になりそうだな。


「まぁ基本なんだけど挨拶からやるか。

 朝に使う挨拶を日本語でなんて

 いうかわかるか?」

「コンニチヤ!」

「”ヴィーハ”色々おしいな。正解は

 「おはよう」。まぁ俺が朝っぱらに

 お前らを呼ぶってことはないだろうが

 豆知識がてら覚えておけ。それじゃあ

 さっき言った「こんにちは」はいつの

 挨拶かわかるか”リア”?」

「え、えーと……昼……でしょうか?」

「おっ正解。っていってもなんとなく

 流れでわかっちまうか」

「……夜も……あるの?」

「あぁもちろんあるよ。”ゲイジー”

 わかるか?」

「……オバンデス?」

「どこで覚えたその日本語。違う違う

 「こんばんは」って言うんだけど

 個人的に一番覚えてほしい日本語の

 ひとつだから覚えておけよ」

「「「はーい」」」


 俺は一体なにをしてるんだろうと

思うけど意外とこの感じ好きだな。


「あいさつって大事なんですか」

「あいさつで印象がガラリと変わるからな。

 お前ら悪魔にはわからないと思うけど、

 印象っていうのは大事なファクターにも

 なりえるものだからな」

「そうなんですか、やはり人間というのは

 面倒な存在ですね」

「だから面白いと思うけどね」


 言葉には印象なんてものはつきもの

ではあるが特に印象が重要視されがちな

言葉が「日本語」だと考える。もちろん、

悪魔たちの言葉にもある程度の印象は

ありはするが、やはり悪魔は能力主義な

都合上あまり気にしないものだ。


 正直、悪魔の言語は「日本語」よりも

簡単かもしれない。唯一難しいのは

並の人間には発音できないことぐらいか。


「”プレシア”はそう思ったらあの時は

 よくやってた方だよな」

「はい、ありがとうございます」

「えー! プレシィ実践したのー!?」

「ええ、不本意ながら」


 詳しくは93話参照。


 つーかその時に問題が起きたんだよ。


「相手は相手は???」

「人でした。どうも私のことを見れて

 しまったようなので人として振舞えと

 我が主からオーダーがありまして、

 その時にニホンゴというものを多少

 ながらも使わせていただきました」

「へー、プレシィ大っ人ー。で、どう

 だったの!???」


 コイバナしてるんじゃねぇぞ?


 さっきから一番面倒がっていた

”ヴィーハ”が異様なまでに日本語に

食いついている。と思ったけどこれは

あれだ。勉強したくないから良さげな

逃げの話題を探しているだけだな。


「どうでしたかと言われましても、

 そこで私が粗相をしたため、我が

 主はこのような会を開いたのでは」

「あーわかるー、イントネーションとか

 よくわからないまま使ってたら

 めっちゃ現地の人に不思議がられる

 よねー」


 お前がそのセリフ言う資格はないぞ。

外国人がスシ屋でのお勘定のときに

How mach?(ハウマッチ?:おいくら?)と

店主に聞いたら「ヘイ! はまち!」と

はまちの握りが出され、延々に店から

出られないなんてジョークもある。

”ヴィーハ”が言っていることは

当たってはいる。が、適任ではない。


「そうそう、確か”プレシア”は一応

 喋れてはいるが、意味がイマイチ

 つかみ切れていないって感じだったな。

 今日はそれを教えておきたい」


 結局のとこ、存在しえぬ俺のいとこ

”プレシア”はアジアの屈強な民族の

一人として見なされた。そんなマッスル

思考な親戚がいるデマを広げない

ためにも必要なことだ。


「意味ですか? それなら私たちにも

 わかる気がしますが」

「それがねぇ…… 逆に言えばそこが

 日本語の難しいところなんだよ」

「「……?」」

「じゃあ例えば、泣いているって聞いて

 ”リア”はそいつは今、何を考えている

 と思う?」

「それはもちろん悲しいことがあった

 からでしょうか? 人間なのでその

 程度の感情があるかと」

「ま、おおむね当たりだ。でもそれは

 自分にとってうれしいことがあって

 感動して泣いているかもしれないだろ?


  英語とか悪魔の言葉もそうだけど。

 そういうことも考えて言葉を選ばないと

 いけないのが日本語なんだよね」

「「……」」


 ”プレシア”もそれで悩まされた。

確かあの時は「俺と一緒に寝ている」

なんて言ったんだったか? 義堂に

誤解を招きまくっただろうな……

表ざたにしてこないだけあってどう

思ってるかなんて知らないけど。


「うーーーーーん、マスターやっぱり

 よくわからないよー」

「まぁそりゃそうだよな。だからこの

 本を使っていろいろな言葉の意味を

 覚えてほしいんだよ」

「さっきと言っていることがごちゃごちゃに

 なってない?」

「いや、どんな言葉にも根底はある

 もので場面や時間、あとは人物で

 それが何を意味するかで会話する


  「察し」が必要な言葉が日本語

  なんだよね。


  そうだな……”ヴィーハ”例えば……

 俺が今からお前の唇を奪うとすr」


「ィヤーー!! マスターそんな私と

 キッスがしたいなんてー!!」

「やっぱなんでもない」


 これ以上は面倒だしいいや。

目的も達成できたことだしな。


「えーマスターのケチー!」

「悪いがそんなことをするつもりは

 ないし、今後ともやることもない

 から安心しろ」

「そんなキッパリ言う!?」


「それと俺は


 ”唇を奪う”って言っただけで

 ”キス”なんて言った覚えはないぞ


 勝手にそう思い込んだだけだ」

「えぇ……」

「でもこれが日本語の本質って言えば

 本質なんだよ。あるひとつの意味には

 無限のあらわし方がある。それが

 日本語で今でも日本語が増え続ける

 理由のひとつなんだ」


 そう考えたら小学校の先生って

すげぇんだなと思う。テキトーに

バナナとか言ってそうなガキどもに

そういう意味を教えていくのって

俺が体感してるようにめっちゃ

難しいんだろうな。悪魔の言葉が

わかるから日本語がわからずとも

コミュニケーションが取れる点、

楽ではあるが。


 先に言うとさっきから作中に登場

していない”ゲイジー”についてだが

完全に寝落ちしている。俺のベットで

親指くわえてぐっすりと。


 って寝るなよ!「はーいこの問題、

ゲイジーちゃんに答えてもらおう」的な

感じであてるぞ。これもまたやってみたい

からってだけなんだけど。


「とりあえず、ここの動詞からやるか。

 動詞っていうのは動きを表すもので……」


 ここからはミコらの勉強会と同じく

勉強風景だけが続く。絵面も地味な関係で

ここはカットして大まかな内容だけを

言うとするか。


 動詞から名詞まで教えたのだが、その

ほとんどが俺の経験則で間違えやすいもの

ばかりだった。さっきの「寝る」もその

ひとつであるし、「行ければ行く」なんて

言葉も豆知識がてら教えた。


 これくらいのことなら感覚で覚えて

しまうだけあって現状:純日本人である

俺からしてみれば難しい。


 ”ヴィーハ”がどうにもこの日本語の

概念を理解は一応できているが、それを

実践してみようと試みてもおぼつく

様子が伺える。それでもドリルの表紙が

読めるようになっただけ進歩はしている。


 それに対して”リア”がふむふむと言って

納得している風はかもしだしてはいるが、

想像以上にできていない。これは? と

聞いても「??」って感じだ。”リア”の

性格ことだから覚えるのも簡単なんだろうな

って思っていただけあって意外に感じて

しまう。


 ただでさえ俺がおろそかにしていた

教育の一つなのだから俺の眷属の中でも

先輩にあたるこいつらには頑張って

ほしかったのだが…… まぁ、そこまで

大事なスキルだとは言わないし多少なり

できるぐらいでいいか。無理に厳しく

すると逆に効果的じゃないかもな。

モンスターペアレントってやつだよ。


 そして、”ゲイジー”は……


「あのさ、さすがに起こしたほうがいいよな」

「疲れているんでしょう。マスター、ここは

 休ませてあげてください」

「えぇ、今日なんかあったの?」


「いえ、頭を使ったのでキャパが

 パンクしただけですよ」

「起きろ!! ”ゲイジー”!!」


「ムァ?」

「ムァ? じゃないよ。いつまで

 寝てんだよ……」

「……気が済むまで」

「……」


 叱るに叱れない返答が返って来た。今日は

頭を使うっつーのにそれが理由でボイコット

されちゃ意味がないだろうが……


 それにそのまま寝ていたら俺は今日

一体どこで寝たらいいんだよ。だって

今は悪魔であるこいつらのことを考えて

真夜中、それも日付が変わって3時間が

たとうとしているぐらいなんだ。これが

終わり次第、布団にもぐるんだよ俺?


 ちなみに明日、じゃなくて今日は

日曜日で学校はない。学校があるなら

こんなことをわざわざやってない。


「んーー、前もこんな感じでマスターから

 いろいろ教えてもらったけど、これは

 なんかいつもとかわってて疲れるなー」

「そうね”ヴィーハ”、私もいつもと

 違う力を使った気分よ」

「……私も」

「”ゲイジー”お前は一番言えないぞ」


 「オバンデス」って言って寝ただけ

だよなお前、おい。


「それでも一通りの会話は分かっただろ?

 それに俺も日本語を使うんだから時々、

 呼んで使ってみせるから、そこから

 覚えていってもいいぞ。使ってみないと

 わからないことだってあるんだ」

「「「はーい」」」


 これじゃあオチも何もないけれど、

時にはこんなゆったりとした終わり方を

してもいいだろう。


「我が主」

「ん? どうした”プレシア”?」

「このように日本語を教えてもらったのですが

 より、よくわからないことがあるのですが」

「え、なんか変な言葉でもあったのか?」


 俺が教えたのは基本的な日本語と、あとは

イントネーションとかぐらいだぞ?


「はい、意味を翻訳すると


 ”モウ キガクルウホド キモチエエンジャ”


  という言葉が「禁忌」に触れるとは

 思えないのですが、これはなぜですか?」

「あ、そういえば。なんでマスター??」

「……」


 ま、いつか教えてやるから今は忘れろ。


 そういってこいつらをミコンに戻して

過去の俺の発言を寝込んだ布団の中で

改めた。正しい日本語というのはもう

現代にはないのかもしれない。


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