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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
始まり始まり
11/446

11.メアを祓おう

 先ほどもいったが、今すぐには動けない。

そのため一旦この自称巫女と別れ、夜に

もう一度相澤のもとを訪れるという計画と

なった。


 というわけで俺は夜になるまで

やることがなくなったのに対し自称巫女は

除霊に関するグッズ諸々を用意したいと

いって先早に帰っていった。で、俺は暇を

もてあましていたので学校の近所にある

ファーストフード店でハンバーガーとポテトを

(さかな)にコーラを飲んでいる。久しぶりにこういった

店で飯を食べたが、こんな味だっただろうか?

そうか、数十年近く時間がたてば店の味を

変えるのにも十分すぎる時間か。それとも

俺の味覚の好みが変わったのか……俺は

見た目に反して年を思った以上にずいぶん

食ったのかもしれないな。それに対し、

コーラだけは一切味が変わらずシュワッと

炭酸が効いて甘ったるい。が、美味い。


(プハーーッ! まさに悪魔の味ッ!)


 と、かの干物妹(ひもうと)のような事はもちろん言わない。

言ってたまるか! いくらパクリネタが多い

小説だとしても、もうそろそろ怒られ

かねないわ!


「こらー、うまる。飲みすぎるなよ」

「俺の話、聞いてたかお前!!」


 固有名を出すんじゃない、固有名を!!

午後8:30頃、自称巫女が入店してきた。

が、この瞬間ファーストフード店を待ち合わせ

場所に設定したことを後悔することになる。


 自称巫女は「巫女服」で来たのだ。


 そんな格好で入店するなよ!!


 周りの人からしたらこの異常な風景は

どう見えているのだろうか。ロリ体質の

少女が巫女姿で俺に話しかけているこの

様子を。「私服が絶大に奇抜な人」と

思われているか「そういうプレイ」と

思われているのだろう。後者の考えをされて

いたのならこの自称巫女と無理心中という

展開になりかねないし、無理矢理持っていく

羽目になる。


「……格好もしっかりしないとダメなのか」

「もっちろん! 会社の面接に君は私服で

 行くの? これは私の「正装」であって霊を

 祓うってなれば、やっぱりこの格好で

 なくちゃね」

「そうかい」


 そうか、それなら仕方がないだろうな。


 ……いや……仕方が、ない、のか?


「で、もちろん除霊の用意はできているん

 だよな?」

「できてるわ。ドーンと来いってもんよ!」


 元気な返事をするなぁ。さっきのセリフといい

この自称巫女は見た目に(たが)わずかっこいいキャラ

なのかもしれない。ちなみに、こんなかっこいい

自称巫女はしばらくありません。(作者談)


 それじゃあ、時間もほどほど迫ってきたし、

店を出て相澤のところに行くとするか。道中、

自称巫女の格好のせいで視線を集めていたが

気にしない。


 気にしたら負け、気にしたら負け。


 まずは、家に帰っているという可能性を考慮し、

先に「相澤(あいざわ)家」を訪問した。案の定、相澤

本人は帰宅していない。俺たちと応対した

若い旦那さんを見て、ふと俺はこう思ってしまう。


 俺のほうが年増(としま)なんだよなぁ……と。


 案外、俺がのうのうと過ごした20年は俺の

心に響くものがあった。年は食いたくないもんだ。


 閑話休題


 相澤が帰っていないならば、学校でまだ寝ている

ということになる。俺たちは夜の暗い道を急いだ。

この間に相澤が目覚めて、道が入れ違っては面倒だ。

だが「相澤家」と学校は近かったため、あまり

急がなくてよかった。学校は校門が閉まっていて、

入る事ができない。あまり横着はしたくないが

柵を乗り越えるしかないだろう。


「ちょっと、こっち」

「?」


 自称巫女が俺を呼んでいる。なんだ、

大事な巫女服を汚したくないから俺に

持ち上げてほしいのか?


「ここから学校にはいれるよ」


 学校の裏まで行くと柵が盛大に壊れていた。

そういえば先週、この自称巫女は夜の学校に

一度忍び込んでいる。なるほど、こんなところに

抜け道があったとはな。


「こんな場所よく見つけたな」

「え、前に自分で壊したに決まってるでしょ」

「…………」

「そこに偶然バールがあって、これは壊して入る

 しかない!! と思って」


( ・´-・`)ドヤァ


「物騒すぎるだろ!!」


 そのドヤ顔やめろ。自称巫女の指さす方向を

見たら確かに俺の足ぐらいの長さの業務用と

思われる超絶ドデカいバールが落ちていた。

誰だよ、こんなところにバールを捨てたやつ。

やはり、この自称巫女は見た目に(たが)わず

男らしい一面があるのだろうか。ちなみに

こんな男らしい自称巫女はこれで最後だと

思います。(作者談)


 とりあえず、この自称巫女が起こした備品の

破損の案件はさておき、学校内に入ることが

できた。そして1階の保健室に直行した。まだ、

生徒が残っていることを知っていてか、校舎の

カギは開いていた。しかし保健室には夜だと

鍵がかけられるのだが"保健委員"である俺は

事前に鍵を手に入れてある。しかし、保健室に

カギはかかってなく、カギは使わずに済んだ。


 あのカーテンの向こうで相澤が寝ている。早く

メアを祓ってしまい誰かに見つかる前に学校から

出てしまおう。


 だが、そううまく物事は進まない。


 カーテンを開けたが、ぐちゃぐちゃにされた

布団しかない。


 相澤がいない。


 入れ違いになっていないことから相澤は

学校からは出ていないはず。そうか、相澤が

保健室から出て行ったから鍵がかかって

いなかったのか。


「え、ミキちゃんは?」

「わからないけどまだ学校にはいるはずだ。

 とりあえず、学校中を探そう」


 手当たり次第に探そうと思い、保健室から出た

時に上の階から声が聞こえた。


「いやああああああああ!!!」


「……この声」

「あぁ、急ぐぞ」

「うん!」


 声を聞く限り4階の俺たちの教室だろう。

急いで4階に向かった。が、自称巫女は恰好が

恰好なだけあってめちゃくちゃ足が遅かった。

それになぜか靴も履いていなく裸足(はだし)だし、

ヒーヒー言っている。これは待っていられない。


 俺は先に4階の教室に辿り着いた。教室の中は

真っ暗で、普通ならば、どこになにがあるか

さっぱりわからないが、俺は悪魔なので逆に

暗い方が目が良くなるのだ。教室を見渡すと、

片隅で震えている人影が見えた。相澤だ。


「いや、来ないで、来ないで」


 ぼそぼそとそう言っていたが構わず俺は

相澤に近づく。


「大丈夫か?」

「神前? どうしたのこんなところで……」


 声がガラガラだ。叫びすぎたかストレス性の

ものだろうな。


「保健委員だろ俺。だから、看病しに来たんだ。

 今まで、何があったかおぼえてるか?」

「……みんな、死んでいく、そんな夢を

 見ていた気がする」


 自分が死ぬ夢ではなく、今度は自分以外の

自分と関わった人が死んでいくという夢、

といったところか。


「これは今、噂の憑依する霊の仕業なんだ。

 とりあえず安心しろ。もう大丈夫だ」


 と言って相澤をそっと抱きしめた。その間に

俺は相澤の体からメアを呼び出す。


(我、神前 滉樹の名によって命ず。

 "メア"、応じよ)


(おう、昨日ぶりやなぁ、ダンナ)


 憑依霊と会話するときはその憑依した宿主

となる人物と接触している必要がある。

つーか"メア"お前、関西弁でしゃべるのか。


(で、どないしたんや? 言われた通り

 こーやってこの相澤ってねーちゃんに

 憑いとるんやが)

(もう十分働いたよ。だからもう憑く必要が

 ないから離れてほしいんだ)

(えー、んな虫がいいってもんよ。まだ

 2回しか働いとらんっちゅーに)

(悪いな、話が変わったんだ)

(まぁええんやで。俺ぁダンナのしもべや。

 反論なんてできひんよ。また呼んでなー。

 まっとるでー)


 そういって"メア"は相澤から離れ、俺の

ポケットに入っているミコンに戻っていった。

エセ関西弁だった気もしないでもないが、

そこはもう終わった話だ。あとはこれを

自称巫女の手柄にするだけだ。


「これから御前が来る。あいつは腐っても

 巫女だ。何とかしてくれるだろうな」


 一応、御膳立(おぜんた)てをしておいたが自称巫女に

除霊なんてできるとは思っていない。だから

俺がこうやって"メア"を祓ったんだがな。


「……………」

「?」


 しかし、"メア"を祓ったばかりとは言え

相澤はまだぼけーっとしたままだ。こんなに

なる程までに相澤を精神的に傷つけたとは

考えづらいんだが。


「……おい大丈夫か?」

「……だ、誰?」

「?」


 試しにもう一度、容体(ようだい)について聞いたが

意外な返答が返ってきた。


「……え、誰? いやよ! こっち来ないで!」

「いや、俺は神前……」

「違う! 神前じゃない誰かがいるのよぉ!」

「……?」


 このとき、俺は今までのミキの行動を

思い返した。ミキは"メア"に襲われ精神的に

病んだ状態だ。しかし、それはあくまで夢の中

だけで、こうやって保健室を出るなんて奇行に

走る必要なんてない。それも、何かに怯える

ような……


 精神的に病んだ状態……


 何かに怯える……


 それにミキも言っていた。

 「来ないで」と。


 …………


 俺はこれらのことから一つの結論に

至った。そして再びミキの体に触れ、

問いかける。


(まだ2回しか働いとらんっちゅーに)


 "メア"が木曜の夜と5時間目の2回しか

はたらいていないとしたら、今の相澤を

陥れているのは……!?


(我、神前 滉樹の名によって命ず!

 貴様、何者だ!!!!!!!!!!)


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