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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
SOMA
108/446

108.夜に調べよう

 しかし前回はまさかお菓子くって終わる

とはなぁ…… 作者もびっくりだぁ。


 本当はもうちょっと長めに話を作っても

良かったのだが、あそこで切らなければ色々

面倒なことになりそうなので、これはこれで

許してくれ。


 さて本題の本田家の夜の物色だ。……うむ

この言い方は誤解を招きかねないな、やはり。


 一応昼、ではなく夕方にこの家は一度探索は

済んでいるし、どでかい家だとしてもある程度は

動き回れる。だが懐中電灯の関係で俺と義堂は

離れて活動ができない。だから地道になって

しまうが、一つ一つ丁寧に二人で探していく

しかあるまい。


 ん? この引きずり倒してるコイツ?

これは後でどこかに捨てておくつもりだ。

巫女なんだから納骨堂のあの部屋にでも

投げ捨てておけば「おじいちゃんの加護」か

何かに守られるだろう。


 ちなみに納骨堂の部屋はド級にヤバイ

雰囲気だった。まぁ、別にいいや。俺には

全く関係のないはなしだ。


「しっかし、マジで暗ぇなお”い」

「懐中電灯買ってなかったら歩くのも大変

 だろうな」


 俺は全然、むしろ懐中電灯ないほうが

見えるし歩けるんだが。確かにここは月の

明かりがある夜の廃工場のほうがまだ

ましだ。


「んでよ、神前てめぇはこんバカみてぇな話

 信じてるのかよ」

「え、俺?」

「てめぇさっきから顔が緊張してねぇんだよ」


 緊張? そんなものあるわけがない。


「そんな緊張するものかよ。どっちかといえば

 義堂、お前のほうが緊張なんて言葉が

 似合わないと思うが……」

「んなわけねぇだろうが、俺だって人間だぜ」


 人間以外は緊張しないみたいな言い方を

するなよ。若干心臓が痛い。


「てめぇがぶっ飛んだ野郎だってのは知ってるが

 まさかここまでとは思ってなかったって

 ことだ」

「ぶっ飛んだ野郎って……」

「はっ、あん工場でぶちかました”アレ”を

 忘れるほど俺ぁバカじゃねぇよ」


 あ、そうだった俺は義堂に危うく

悪魔である部分をバレかけたんだったな。


「それでてめぇは今からそん化け物と

 会おうってのに、てめぇの顔からそん色が

 見えねぇんだ」

「俺も緊張してるよ」

「けっ、よく言うぜ。どーせ化け物とかは

 信じねぇとかそういうことだろ?」


 いやそれは違う、違うぞ義堂。その

化け物が俺であり、信じるも何も俺が

”それ”なのだ。


「というか義堂は今回の話は信じている

 のかよ」

「俺ぁさっきも言っただろ。てめぇらに

 ついていくだけだとよ」

「そうじゃなくて主観的に今回の話は

 本当なのかどうかってことだよ」


「シュカンテキ?」

「……えーとだな、自分ではどう思うってこと」


 日本語は比較的分かるタイプのバカ

かと思っていたが……偶然その単語がよく

わからなかっただけだろう。うんそうだろう。


「俺ぁいると思ってるぜ」

「え」

「あ”? んだよおかしいか」


 単に俺が勝手にそういう手の話は俺以上に

信用しないタチの人物だと思っていたが……

なるほど、だから義堂は”緊張”しているのか。

人は見た目によらないっていうのは案外当たり

なのかもな。


「よくこんな根拠のない話を信じれるな」

「あ”? 俺達ゃ「異能部」だろうが。こん

 くっだらねぇ戯れ言も信じねぇといかねぇ

 ってのが条理だろ」

「……」

「ま、俺もここにくるまでは信じてなかったよ。

 ただな、あんガキが嘘をついてるって

 思えねぇんだよ」


 ”あのガキ”というのは本田の弟、圭介の

ことだろう。というかもうそろそろズルズル

引きずりっぱなしのミコに触れてやっても

いいんじゃないか?


「あんガキとはここの納戸で出くわしたっつー

 のは言ったよな。そんときにちぃと色々と

 聞いたんだが、ありゃ嘘がつける気味わりぃ

 野郎じゃねぇ」

「そんな気味の悪いって」

「いや、俺ぁ嘘がいけねぇだとは言うつもりは

 ねぇが、俺らみてぇにこうやってここに

 呼ばれてんだ。んなことしてまで嘘をつける

 ようなヤツには見えねんだよ」

「は?」

「ありゃ間違いなく俺なんかとはちげぇ

 もんを持ってるやろうってことだ」

「は??」


 いや、その発言でよりわからないことに

なったよ。あの晩御飯の風景と喧嘩の様子だけ

見ていれば誰でも”同種”だと言いそうな

気がするが……


「俺ぁ弱くねぇんだ。ま、んなこと言っても

 神前てめぇみてぇな野郎と比べりゃそん

 強ぇ弱ぇの基準ってのも違うだろうが……

 だがな、あんガキは弱ぇ。ま、それも根性

 ってもんがあるのは認めるが、そん根性が

 自分の力に見合ってるかっつーとそれは全く

 別の話だ。


  ようはよ、あんガキは”虚栄”なんだ。

 何をしようかっつーかは知らねぇが自分の

 力を過信なんてしてねぇし、だからって

 そん力をぶん回すわけでもねぇ。俺ぁ強い

 からんなことないんだがな」

「つまり、あいつは圭佑君は嘘をつく力が

 ないと?」

「いいや、虚栄っつーのは一度ほころべば

 全部ほころぶもんだ。ま、それもよっぽど

 根性があればなんとかなるもんじゃあるが、

 あんガキはそこまでの根性がねぇことを

 自覚してやがる。こーゆー奴は何度となく

 俺は見てきたからわかるが、嘘をバレたく

 ないっつって強い”フリ”をする。だがな、

 あんガキはその”フリ”だけをやってやがる。

 だからこそ自分に嘘をつけねぇし嘘なんて

 もんにすがらねぇんだ」


 虚栄。


 義堂の口からそんな言葉が聴けるとは

思っていなかった。虚栄というのは人の尺度を

測る一つの基準であり、それが見せる幻想は

人を”惑わす”ものだ。


「ってそんなこと納戸での喧嘩で考えてたのか」

「ああ、俺が殴りつけたときだな」


 もう一度言うがその筋肉思考は子供相手に

だけはやってほしくなかったぞ。圭佑君が

義堂に向かって殴りかかったのはさっき

聞いたし知っている。


「殴ってわかることってなんだよ……」

「あんガキは俺に”お前誰だ”みてぇなことを

 言ってこなかったんだ」

「え」

「んなこと言わずに殴りかかってきやがって、

 俺も気が気でねぇよ。ったく、これで俺が

 悪人を演じねぇといかねぇからよ。で、俺が

 殴ったときにまた殴りかかってきやがった。

 ま、それも俺がブチ飛ばしてやったんだが、

 これじゃらちが明かねぇから俺から何か

 あんガキにとって、いいように動けるように

 条件を出してやったんだよ」

「それが”野菜運び”だと」

「ああ、それだ。あれがなきゃあんガキ、

 死ぬまで俺に殴りかかってきやがったぜ、

 ったくよさんざんだぜ。


  まぁ長くなっちまったが、俺はあんガキが

 バケモンがいるって嘘がつけるだけの力と

 根性がないってことだ。虚栄をやるだけでも

 十分だってのにんな突拍子もなく、バケモンが

 どうこう言えねぇってことだ」

「ふーん、意外と義堂ってよく見てるよな」

「あ”? んだてめぇ? 馬鹿にしてんのか」

「それは元々だ」

「ちっ、よく言うぜ」


 俺も圭佑君が嘘をついているとは思いたくは

なかった。それには少しばかり、信用ができる

だけの要素が少なく疑心暗鬼になっていた。

しかし、こうも長々と義堂の見解が聴けたら

俺も信用しなくてはならない。


 ここには霊がいる。どんな霊かは知らないが。


「それで俺たちぁどこに向かってんだ」

「浴室から調べるぞ。そのあとに寝室、

 あとは残ったところって感じかな」

「そこにバケモンいるって確証はあんのか?」

「ああ、それは……」


 これは言っていいものなのか? これは

一般的な高校生が普通知っているような情報

でもないし、個人的な意見としては俺が

悪魔関係に手を出していることを知られて

ほしくないっていうのが本音だ。


 だが「それは」までしゃべってしまったし、

これをうまく説明できるだけの文章構成力は

俺にはない。その点では俺には”虚栄心”が

ないということだ。


「霊とか悪魔、ようは化け物ってのは見られた

 ってことが重要だったりするんだ」

「あ”? どーゆー意味だ」

「例えばよ、工場で寝ていた時に工場の中に

 一人、お化けが出てきたとする。それは

 義堂に見られたってことになるよな。そこで

 義堂はどうする?」

「ぶん殴る」

「…… まぁ、いいや。霊にとっては義堂に

 見られたことで”義堂から認識された”って

 ことになる。認識されたらそのあとも

 霊について義堂は考えるし、霊がいるって

 思っていればそれこそその霊の思うツボって

 ことだ。


  霊を信じない奴になんて霊の存在なんて

 無価値にすぎない。逆に言えば、一度でも

 ”霊がいる”と思えばその霊は力を付ける

 ってことだ。


  圭佑君が最初に見たのは浴室だったよな。

 だからそこから霊が力を付けたってわけで

 そこが言ってしまえば”リスポーン地点”に

 なる。”風呂場にいる霊”は風呂場にいやすいし

 ”寝室に出た霊”は寝室で出やすいものだ。

 だから最初に浴室から調べたほうがいい。

 そこで圭佑君は同時に二人も霊を見ている

 のだから二人分の霊が浴室を拠点にして

 動いているんだからな。後は一人だけ確認

 している寝室も調べる。これを一応、何度か

 繰り返す」

「んなことよく知ってんな」

「……ミコ、のお姉さんに聞いたんだ」


 ミコだと「え、私言ってない」なんて義堂から

聞かれた時に言われたらヤバいし、これくらい

微妙な人物を挙げておこうか。


 まぁ話はやらねば進まない。しかしこうも

話ながら歩いていれば目的地になんて

当然ついているわけで今は浴室の目の前に

いる。


 ドォン


「お”らぁ!!! 出てこい!!」

「やめろ、霊も泣いて出てこないよそれ」


 人んちのドアを蹴るんじゃない!


 やはり浴室の中は暗い。そして雰囲気だけは

めちゃくちゃ怖い。ただ静かにぴちょんと蛇口

から水が滴り、鏡は俺たちのことを無機質に

映し続けている。それにここの家の浴室は

さっきも来ているが結構広めのデザインだ。

懐中電灯を全体に照らすことはできなく、

一部だけしか照らすことができない。


 しかしこの状況でもいえることがある。


「どうだ?」

「いないな」

「ちっ、ハズレかよ」


 それどころかここには一切の霊の爪痕が

ないんだ。圭佑君がここで霊をみたので

あればここは若干であっても霊的に不安定に

なるはず。それも霊の存在感によって左右

されるものではあるが、ここは周りと同じ

雰囲気なのだ。もちろんこの家自体が

霊的に少しばかり不安定であるのは承知で

あるが、浴室だけ突飛して不安定って

わけではない。


「ここ以外に浴室なんてないよなこの家?」

「あ”? 本田もここでバケモンを見たって

 こと言ってただろうが」

「だよなぁ」


 しかし、いないものはいない。俺の眷属

である”ヴァンダー”でもない限り、この

浴室に急に来るってこともない。霊は

どこでもいそうなイメージがあるが、

ちゃんと移動はしている。それは歩いたり

飛んだり、時にはすり抜けたりして。

だから移動の痕跡を見れればいいのだが……


「で、どうすんだよ」

「ここにいても意味ないか…… いいか、

 寝室に行くか」


 その道中もやはり霊的に不安定ではない。

ここまで霊に関する情報がないのであれば

圭佑君が嘘をついているって線も考え

なくてはならないが……義堂がああ言った以上

俺も”いる”前提で調べないとな。


 寝室には本田のばあちゃんがお客さん用に

と布団を広げてもらっている。まさかここまで

やってくれるとは思っていなかったし、調べ

終わったからにはどんなに夜が更けていようが

帰るつもりでいた。が、こうもいかにも

寝ていけと言わんばかりに布団が広げてあったら

ここに留まるしかないよなぁ。


 あ、ちょうどいいしここにミコ捨てて

行くか。それに聞かなかったことにしようか

悩んだけど、こいつさっきから寝息たてて

寝ていやがる。


 俺は何が悲しくて寝てる奴を引きずらにゃ

いかんのだ!!


 ポイッ


 ごみを捨てたわけではない。決して

そんなことはない。それにとっとと起きろ!


「ま、こんまま寝かしとけ。どーせ時間も

 あれだ、おせぇし起こすのも面倒だ」

「はぁ、結局俺がやるのかよ……」


 めっちゃいい笑顔でよく寝れるよな。

さっきまでは「お前がいなくちゃ無理だ」

的なことを言っていたが、こうも撃沈

しているようでは力にはならないのも

仕方がないか。


 撃墜したのは俺ですが。何か?


 時間はまだ11時ぐらいでまだまだ

いつもの「異能部」の夜の探索ができる

だけの時間ではある。しかし、今日は

いつもに増して活動が多かっただけあって

巫女であるミコが疲労が多いのだろう。


 不服だが寝かしとくか。


「……」

「……どうした義堂」

「いや、そういや霊ってのはどっかで

 死んだ奴がなるもんなんだろ」

「あぁそうだったはずだが」


 俺は前に”ノーティ”の下りで言った

はずではあるが、義堂に対してはその

情報は言っていない。ならばこれはミコ

から聞いたものだろうな。


「ここで死んだヤツってのは、本田の

 じじいだけなのか?」

「あー……確かこの家は本田のばあちゃんが

 生まれたときからあったって言ってたし、

 そこから逆算しても…… それしかいない

 んじゃないか?」


「だったらなんで二人もバケモンがいるんだ」

「それが俺が一番気になっているんだ」


 さっきも言ったがここで死んでいるのは

本田のじいちゃん一人だけなのだ。いや

その前にこの地で殺人が起きたというなら

話は変わってくるが、そうなると80年も

前の話になるし、そんな古参な霊が今に

なって登場するなんてこともあり得ない。


 いや、仮にありえたとしても浴室で

本田のじいちゃんと二人でいる意味が

一切わからない。


「それはさすがに神のみぞ知るじゃなく

 霊のみぞ知るものだろう。それが

 わかれば苦労はしないんだけどな」

「ったく、んな悩んでるっつーのに

 ミコの野郎はぐっすり寝てるこった」

「ああ、起きたら色々言いた……い……」


「どうしたんだよ」

「……」


 どうしたも何も、その悩みの種が

いるんだよ。


「後ろ向け義堂」

「あ? なんかあったのか……よ」


 そこにあった……いや、”いた”のは

人だった。


 俺たちを傍観する者が二人。


 誰かなんてわからない。


 そこにいるのかもわからない


 そんな人がいた。


 いや、もう人なんて表現もおかしい。


 あれは人ではない。


 正真正銘、「バケモン」だあれは。


「「……………!!!!!」」



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