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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
SOMA
106/446

106.情報を整理しよう

「あ”、来やがった」


 俺たちは外を調べていた。もう流れ

から察しがつくかと思うが、情報になり

えるものは一つとして出なかった。


 義堂は「暗い」と言いながら嫌々

探していたようで、探すのにも今は

暗くなりすぎているといえば確かに

その通りではあるが、俺はその一般的な

常識が通じない。逆に探しやすい程だ。


 外というのは家の目の前の道路とか

そういうことではなく庭という意味だ。

やはり昔ながらの日本家屋だということも

あって、庭もでかいから何かおいしい

情報でもないかと探していたのだ。ま、

そうおいしい話なんてものは転がって

いなかったというのが結果なのだけども。


「どうだったミコ」

「うーん、情報なしっす」

「そうか」


 俺と義堂が圭佑君から話を聞いた後に

一応、似たようなことを本田……あっ、これは

俺と同級生のほうの本田であってだな……

あーめんどくさっ! ようは宗一郎にも

似たようなことを聞いたのだ。しかし

学校で聞いた通り、その霊云々なんてのは

この家では見たことがないの一点張り。

霊感も元から低い体質なのだから嘘を

ついているなんてこともないだろう。


「それで一応、ばあちゃんの話を聞いて

 おきたいのだが……」

「えッとね、ま(ry」


 要約すると、本田のおじいちゃんが死んだのは

やはり本田の言う通り圭佑君の生まれてすぐに

後のことだったらしい。だから圭佑君は本田の

おじいちゃんの存在を知らないし、それなら霊を

見たときに「どこか見覚えがある」と勘づく

こともないのもうなずける。そして葬儀はミコの

察した通りではあるがミコの一族の総本山である

御前神宮で行われたそう。そしてそのまま

御前神宮の納骨堂に遺骨を納めようとした

ところ、家に十分なスペースがあるならば

そこに遺骨を納めませんか? と提案され、

その提案にそのまま乗っかった。とはいっても

もう7年前のことで、その場で何が起きた

までは覚えていないとのこと。それはまぁ、

仕方がないことではある。


「それでそっちの成果は?」

「霊が二人いるらしいっす」

「(゜Д゜ )」

「圭佑君はその浴室で見た霊はな、どうにも

 二人いたらしいんだよ…… それも片方は

 大きくて、もう片方は小さいってよ」

「(゜Д゜ )」


 んな顔すんな。


「ん”-……それで……他には?」

「他にこれと言ってないよ。だって俺もまだ

 ここで霊を見てすらいないんだから」

「まぁ、私もそうだけど…… って何普通に

 霊が見える宣言してるの?wwwイター」

「うるせ」


 それとここで補足ではあるが、さっきから

本田兄弟の祖母と祖父の話ばかりが挙がるが、

ちゃんとお父さんもいればお母さんもいる。

ただし、今の時期だけは仕事の関係上で家を

開けていることが多く、そのため弟の面倒を

見る役としてアパートに住んでいる兄が一度

帰還したということらしい。もちろん、本田の

ばあちゃんも面倒役に出てもよかったし、そう

本人も言ってるようだったのだが、やはり

年も年で不安になったとのこと。


 親孝行な孫なことだ。ん? これは

親ではないか。うん、違うな。


 ここで一度情報をまとめておくとしよう。


 この家の風呂場で霊が出てきたのが今から

一週間前で、それを確認しているのはこの

家では圭佑君ただ一人だけ。さらにそれでは

おさまらずそのあとに圭佑君の寝ている隣に

現れたりと、浴室に限らずその霊は様々な

場所に現れる。


 そしてその霊というのは二人いるという

ことだ。しかしこれなら場所を転々とする

理由も説明できる。片方が浴室に現れる

霊とすればもう片方はよりフリーダムに

動ける霊だと説明できる。それに霊の

特徴もこれなら解決できるのだ。


 霊というのは前も言ったが死んだ者の

強い気持ちから成るものであり、それを

逆に言えばその気持ちに特化した霊にしか

成りえないということなのだ。例えば、

誰かに恨みながら死んだ人がいたのであれば

その人から成った霊は「怨念」を持って

活動する。が、その霊にはそれ以外の

感情なんてものは持ち合わせるはずがない。

もう一つ例えると、誰かに逢いたいと

望みながら死んだ者は「怨念」ではなく

「渇望」を持っている。これももちろん

霊には「渇望」ただ一つの感情しかないし

「怨念」なんて感情は持っていない。

つまり、霊の感性は必ず一つに統一される

ということなのだ。


 長く説明してしまったが、ずばり言うと

「泣く」霊が「微笑む」なんてことはないし、

「微笑む」霊が「泣く」なんてこともない

ということだ。


 だからこの家には

”寝ている横で笑う霊”と

”浴室(とは限らない)で泣く霊”の

二人がいるってことだ。


「ってことはやっぱりおじいちゃんが

 化けて出てきたって線は考えられないって

 ことでいいのか?」

「そこまでは分からないかな? 私もあの

 納骨堂を見ただけで完全に完璧で欠損が

 一つもないだなんて言えないし……」

「はぁ…… つまりもしかしたらおじいちゃん

 以外にもう一人霊がいるってのもあり得る

 ってことか」

「あんまりうちの風評被害になること言いたく

 なんてないけど、もしかしたら、いやマジで

 ほんっっとにもしかしたらあの納骨堂に

 足りないものがあるかもしれないしね……」


 それを今から調べるのは危ない。

とミコは付け足した。


「え? なんでさ?」

「あの納骨堂はうちが作ったものだからこそ

 言えるんだけど、あれって言ってしまえば

 プラモデルみたいな感じなの」

「は?」

「だーかーら、あれはあれで完全体であって

 私が触っていい代物なんかじゃないってこと!」

「え?? だってこの家の人たちは普通に

 触ってたじゃん? さっきも素人って言ったら

 語弊があるかもしれないけど、本田が

 何気なく触っていただろ?」

「ううん、私が調べたいのはそんな表面上の

 ものじゃなくてもっと内部的な事。


  プラモデルは作った人しか作り方を

 知らないし、それを知識を持った人が

 触ってもさっきと同じようにもとに戻せる

 保証なんてないの」

「えぇ? それでも調べないよりかは……」

「これで状況が変わって、より話が面倒な

 ことになったら?」

「……」


 これは俺の理解が足りなかった。隣で

義堂(あのバカな義堂)がすぐさま理解した

ようだから今は俺のおつむが足りないのだろう。


 何が言いたいかというと、あの納骨堂は

”御前”の専門的な技術によって完璧に

仕上がってるということだ。だがそれは

あくまでそれをやる工程が同一人物であり

それを完全に真似てできるわけなんてなく、

多少の違いが現れる。しかしその違いを

”多少”と見てはならないのが御前一族の

技術だということだ。100点と99点の

違いを”たかが1点”と見るか、あるいは

完璧を逃した”貴重な1点”と見るか。

この違いだ。


 わかりやすく言うと御前一族が行う

ものは全て100点満点のものだという

ことで、それに沿ってやっても99点に

しかならない。そしてその1点で何が

起きるなんて知ったことはないってこと。


「ならこれ以上は調べようがないじゃん」

「そうだね…… だから今は手詰まりかな……」


 最低でも圭佑君が何か霊とともに何か

めぼしいものを見てくれていれば何とか

解決に向かうのだが……


 これまた前にも言ったが霊には何かしらの

母体がいる。いや俺の眷属みたいなやつらは

別個にして、大抵は骨や遺品だったりの母体に

憑くことで存在し得るのが霊だ。俺と義堂、

そしてミコもではあるがこの家で母体に

なりえる可能性があるモノを探すのが

一番手っ取り早い解決への近道になることは

重々承知でそれを探しに探しまくっている。

が、今のところそんなものはなく逆にだから

こそ、俺はそのおじいちゃんの納骨堂が

怪しいとみて仕方がない。


 現状として確認できる「母体」が

”それ”しかないのだから。


「それでさ、そのお化けってなんでお風呂場に

 いたんだろう……」

「んな”垢嘗(あかな)め”とかそーゆー妖怪とかなん

 じゃねぇんかよ」

「ギドー君、”垢嘗め”ってずいぶんマイナーな

 妖怪知ってるね…… そうじゃなくって、

 垢嘗めにしてもお化けにしてもお風呂場に

 いる意味が分かんないの」

「んな知るかよ」

「だって私たちってまだそのお化けと会っても

 いないんだから、何ともいえないし……」


「だったらよ」

「え」


 ____________


 今は7時半だ。晩御飯の時間がいつも以上に

早く、もう10時のような気分だ。そして

ひとまず俺たちは居間に戻って事の全貌を

告げた。


「はぁあ、そんでお化けはわからぬと」

「はい、すいません私の力量不足で」

「ええよ、そげな顔せんな」


 ここには家族全員が揃っている。だが

出張に出ている本田の両親はいない。

いるのは兄弟とばあちゃんだけだが。


「調べていないところとかって」

「それも考えたけど、今の状況じゃ一体

 何が起きているかを理解するのは難しいし、

 現実的にまだ霊がいるかなんてのも

 本当かわからないからな」

「ううん! いた!!」


 圭佑君が水を差してきた。俺としては

そんな水を差されるような発言はした

つもりはなかったのだが……


「違う違う! だって今までそのお化けを

 見たのは夜、それもみんな寝静まった

 時にしか見ていないんでしょ? だから

 それらしい証拠もなくても無理もない

 ってだけだから!」

「……」


 さっきは俺の言葉遣いが悪かったのか。

こんなに本気で調べても何もないから

「ありません」と結論付けたのが腹立たし

かったのだろう。トトロいたと主張する

メイちゃんと同じ理論か。


「だからここからが言いたいことなんだ」

「言いたいこと?」

「今から最寄りのバス停からの便で

 本田、お前の家に向かってもらいたい」

「は、それどういう……」


「これからその状況を再現したいんだ。

 だから危ないことにならないように

 ここから離れた場所で今日は泊まって

 ほしいんだ」

「え!? なんで!? 俺もここn」


 ミコがそれに水を差すように話し出す。


「これは可能性があるってだけでそれが本当

 なのかはまだ分からないけれど、これが

 もし”本田のおじいちゃん”の霊だった

 としたら」


 「見せたくない」とはミコは言わなかった。

死者、それも大事な家族ならば視認するのは

ものすごく危ないらしい。


 悪魔もそうであるが、血のつながりという

のは憑依にしろ契約にしろ重要とされる媒介の

一つではある。”家族だから”と甘く見ていても、

それはどんなに知っている見た目であろうが、

霊であることは変わらず、人に憑いて害なす

存在だ。圭佑君はそれが”おじいちゃん”と

分からなかったからこそ、血のつながりを

意識せず助かったと言っても過言ではない。


 これはほとんどミコの情報ではあるが

血が云々というのは俺のミコンにいる

悪魔たちにも該当する話だし、基盤となる

考え方はとっくに知っていた。


「お願いします。私、御前一族の誇りに

 かけて解決したく思います」


 それに合わせてミコと俺は頭を下げた。

それを見た義堂も空気を読んだように

頭を下げた。


 プライドにかけて霊感皆無のこいつは

霊と戦うと言ったのだ。加護を与えた俺が

諦めるなんて愚の骨頂だ。


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