表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
SOMA
104/445

104.挨拶をしよう

「ばあちゃん」

「あーらぁ、気ぃつかんかったぇ。宗一の

 おとんだちかぇ」

「あぁ、学校の友達だよ」


 台所に案内された俺たちを待っていたのは

予想通りではあったが本田の祖母がいた。

っていうか今更になってしまったが本田の

下の名前は宗一郎なのだそう。本田の祖母は

宗一と略しているが……


 ……ん? 宗一郎?


「もしかして親の車って」

「Honda」

「やっぱりか!!」


 お前の親どっかから名前引っ張ってくるの

好きだな、おい!


「へ? なんで?」

「Hondaの創業者の名前が宗一郎」

「へー」


 豆知識ぐらいに覚えておいてよかった。

”よかった”なんて微塵も思ってないが。


「それでばあちゃん、圭佑って」

「いまぁ、納戸いってじゃがいも取りに

 いっとるよ」

「圭佑が手伝うなんて珍しいな」

「そぉんなこたぁないよ。ばあちゃんの手伝いは

 やぁてくれてるよ」

「ふーん」


 本田はさっき言ったが、最近ここに住み始めた

ばかりだ。もう少しでアパートに戻るつもりだと

言っていたが、この騒動のせいで元のアパートに

戻れないんだそう。そのため弟の生活もいまいち

つかみきれていないのか。


 あるいは俺たち、つまり”お客さん”に対して

多少なりともいい顔をしたいだけなのか。


「こんばんわ、よぉ来たねぇ」

「あ、はい、こんばんは。俺たt……私たちは

 ここには除霊のために訪れただけなので

 そんな食事まで……」

「ええんだよ。孫んとんだちはみーんなええこよ」

「……」


 本田とはこの一件で知ったぐらいの仲だ。だが

この場で「それは違う」という気力はない。

友達というものもどこからが友達でどこまでが

他人で、そしてどこまでが恋人なのかなんて

定義づけされてないのだから。


「ほらこれ。肉じゃがでいいかい?」

「え、あっはい。ありがとうございます」

「んー? そこん子は……」


 スッ


 空気が変わった。これはミコのスキル

「SIGOTO MODE」だ。


「はい私、御前神宮の御前 剛劉の孫であり

 御前神宮の巫女として勤務させていただいてる

 御前 小恋といいます。本日は弟、圭祐君が

 見たと言う霊について調査をしにきました」

「そんな堅くならんくてええよ」

「いえ、これはれっきとした調査でありその

 ためには家族一人ひとりの協力が必要かと。

 そのため……」

「おぉ、やっぱあそこんお坊さんとこのかい。

 面影があるよ」

「いえ、あの……」

「そんで食べれないものとかあるかぇ?」

「……」


 本田おばあちゃんは話を聞いているのか

聞いていないのかよくわからん。ミコは……

反応が薄かったのかちょっとすねてる。


「そうかいそうかい。宗一のいうとった

 人たちってのはあんたたちのことかい?」

「あぁ、そうだよ。前に言ったよそれ」

「カッカッカ、すまんなぁ、耳が遠なって

 しまってな。つい最近は」


 本田のばあちゃんはそういいながら腰を

おろした。近くに用意してあった高めの

いすに。


「ばあちゃん。無理するぐらいなら……」

「ええよええよ。せっかくお客さんが来るん

 なら、ばあちゃんがよっこいしょって

 腰を曲げてるにゃいけんよ、カッカカ」


 ミコが話を続ける。


「その霊を見た話を弟さん以外から

 聞いたり見たりはしてないですか?」

「そんな、ここで話すことじゃないよ。

 晩御飯つくっとるから茶の間でゆーっくり

 しててええよ」

「……わかりました」


 さすがに仕事モードのミコでも依頼者

……の祖母からそういわれてしまっては

手の出しようがない。ミコはこの段階で

何かしらの情報を得ようと思っていた

ようだが、それは晩御飯までおあずけ

ってことか。


「じゃあ家の案内してるから、ばあちゃんも

 体に気をつけてよ」

「わかってるよ」


 本田にまたつられるまま台所を出た。

とはいっても本田の祖母に会う目的は

情報収集ではなく、ただのあいさつなのだ。

顔も合わせたことだし、目的は十分に

達成はしている。


「すまんな、ばあちゃんが」

「いいおばあちゃんじゃんか」

「はぁ、俺がアパートに暮らす前から

 ばあちゃんったらあんな感じなんだよ。

 圭佑はそれに乗っかってかわからないけど

 ばあちゃんに甘えっぱなしだし。

 さっきまでもばあちゃんに連れられて

 銭湯に行ってきたみたいだし……」

「それがどうかしたのか……?」

「さっきも言っただろ? 圭祐にはもっと

 自分一人でいろいろできるようになって

 ほしいっていうのが本音なんだけど、

 ばあちゃんはすぐ手伝っちゃうからなぁ。

 育ちがないと言うかなんというか」


 家族には家族の悩みがある。基本的なこと

と言われれば基本的なことだ。


「けど、お前もなかなか弟思いのいい

 やつみたいでいいじゃん」

「……ただなぁ」

「ただ?」

「圭佑がそのせいでこのお化け騒ぎに対して

 うるさくなってるんだよ。見てただろ?

 最近ばあちゃんの調子が悪いからよ、圭祐が

 その原因はそのお化けだって言い張って

 ならないんだ。だから俺も信じているわけ

 じゃないが、その除霊でばあちゃんの調子が

 よくなるのであれば全力で協力するよ」


 お化け、霊が人に害をなすというのは本当だ。

この物語で散々俺がやってきたことを鑑みれば

余裕でそれが真実だってわかることではあるが、

あくまでこの物語はフィクションであり、本当の

こととは異なる。作者の考えている霊・悪魔の

世界観も正しくはあるのかもしれないし、ないの

かもしれない。はたまたあったとしても俺が

今まで語ってきたものと異なるかもしれない。

それでも俺は本田の言う、霊が原因で人の体に

害をなすという言葉は信じれる。だからこそ

俺は本田の力になれると自負している。


 だからこそ俺はここで尽力するしかない。

ミコについさっきそういってしまったからな。


「ああ…… ありがとう」

「とりあえず納戸に行くか。納戸に圭祐も

 いるだろうし、お化けがいるかどうかも

 見ておいていいだろ」

「そうだな」


 時間は時計を見てないからわからないが

5時半ぐらいだろう。この季節の夜は早く

魑魅魍魎の元気になる頃合いか。


 明かりがついているが少し暗い廊下に

人影が一人、いや二人……


「あ”いたぞ。こいつ探してたんだろ」

「って義堂どこn」


「はなせー!! 俺はこんなやつには

 くっしないぞー!!」

「おうおう威勢がいいじゃねぇか。

 またやるってんのか?」

「よーーし今度はまけねーぞ!!」


 義堂と捕獲されている圭祐君。

あんたら今まで何してたんだよ。


 俺たちが納骨堂から離れて早々、義堂は

知らない間にどこかに行ってしまっていた。

いったいどこで何をしているのかと考えて

いたが、まさか本田の弟を探していたとは。


「それで義堂、お前はなにしてたんだよ」

「こんガキの喧嘩に付き合ってただけだ」

「ケンカ?」


 あまり物騒なことをしないでほしいが……

みたところ俺が想像するケンカのクオリティの

ものではなさそうだな。


「納戸に野菜とりに来たらコイツがいたんだ」

「コイツっつーなコイツって、ガキが」

「ガキって言うから俺もそういうだけだーい」


 仲がよさそうなこと。


「そしたらこんガキが俺に殴りかかって

 きやがったんだ」

「そりゃ納戸にやべーやつがいたら殴るよ」

「けっ、威勢だけいいガキが何言ってやがる」


 それでケンカになったと。


「それで俺が殴り返した、本気で」

「殴り返すなよ!」


 大人げねぇ!! なんて野郎だコイツ!!


「そしたら何が頭に来たのかしらねぇが

 また殴りかかってきやがったんだ」


 それで義堂はそれを止m


「ま、殴る前に殴り返したがな」

「外道かよお前」


 そんな二回も知らないおっかない

お兄ちゃんに殴られてよくそんな平然と

してられるな、本田Jr(ジュニア)…… その

精神力だけは目を見張るものはあるよ。


「それでよくわからねぇが俺と野菜を

 運ぶことで話がついた」

「なんで話がついたんだ!?」


 もっとよく考えてもいいと思う。

義堂あんた扱われてるよ。それも小学生に。


 そういえば義堂はミコの妹、愛ちゃんとも

仲がよかったんだったか。子供受けがいい

正確なのだろうか? 俺にはその理屈は理解

できないが、義堂は根っから優しい性格な

ことは認める。


 ”一瞬見える優しさに惚れる”

的なヤツかこれ? そうなのか!?


「んじゃ俺ぁこいつと台所に行ってくる。

 おら、とっとと行くぞ!

 腹減ってんだ俺ぁ!」

「うるさい! わかってるから!」


 本当にあいつら仲よさそうだな。


 しかしここにきてひとつ疑問が浮かんだ。

あんな勝気な性格の圭祐君が風呂場で霊を

見た程度で、トラウマになったりなんて

ならない気がする。納戸に義堂がいて殴り

かかったのであれば風呂場で霊を見たので

あればその霊に殴りかかってもおかしくは

ないだろ。


 そのことについて聞いてみるか……

って、あいつら行くの早いなっ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ