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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
SOMA
101/446

101.部活を始めよう

 俺たちがドドーーンとドアに


「異能部・除霊求む」


 と書いたことに対して予想通りであったが

顧問の佐々木先生からお叱りが届いた。無論、

やったのはこいつですと言わんばかりに俺は

義堂を差し出した。大事な仲間を見捨てた

と言われても仕方がないが事実なものは事実だ。

これ以上に真実はないし、これよりも下手な

真実だって無い。


 しかし、そのあとに生徒会長がその様子を

視察しに来た時に、何とかしてこれをそのまま

残せないかと考えてくれたのだが、残念ながら

学校の備品だということで何をどうやっても

この義堂渾身の一筆は消さざるを得ない結論に

至った。


「消すのは仕方がないけど、これこのまま

 丸写しして本当にポスターみたいに

 してあげようか?」

「え、でもこれじゃ”夜露死苦”と同じ

 フォントですからもっと……」

「何のために義堂君が書いたと思ってるの?

 ここは義堂君が部活のためにって先生に

 怒られる覚悟で書いたものを使ってあげた

 方がいい気がするけどね」

「……」


 義堂は馬鹿ではあるが、馬鹿ではない。

何を言ってるかよくわからないと思うがその通り、

義堂には真っすぐで周りがなんにも見えない

馬鹿さはあるが、だからと言って周りの被害

被る事態には絶対にさせないだけの頭はある。

であるならば、あのマッキーで書いた字は

怒られるものだと分かっていて当然だ。それを

見越して書いたのであれば俺もさすがに

何もなかったことにしようなんてできない。


 義堂がそこまで考えて書いたのかは義堂

本人にしかわからないだろうが、正直に言えば

この字は俺個人的にはかなり好みだ。


 義堂、いや俺たち「異能部」すべての性格を

表したみたいに……


「何にも考えずに書いたよね、これ」

「やっぱり馬鹿ってことですか?」

「いやいや、考えないっていうのは僕なりの

 誉め言葉だよ。考えないで何かを”やる”って

 いうのは意外とできないものだよ。義堂君は

 ”考える”ことをしないで”思った”ものを

 そのまんま書いたんだろうね」

「要は真っすぐってことですか」

「そうそう、一点集中って感じかな?」


 この字は消すことになるが、ミコと義堂も

ポスターにこれを興すことには賛成だ。もちろん

俺も賛成ではあるが…… マッキーの字って

落とせるのかなぁ……


 とそんなわけで俺たちの宣伝ポスターは完成。

部室のドアにデッカく真っすぐに貼られた。

ちょっとばかし恥ずかしかったが、これくらい

目立った広告でもいいだろう。っていうか

これくらいやらないと「異能部」はがちで

追い込まれた状態なんだよ。


 その宣伝の効果は……


 あった。それもかなり。


 一応俺たちにも除霊の経験はあるし、生徒会を

通じて公表されている。が、俺たちの存在を

知らない人たちが多かったがために、そんな

知らない部活の功績は興味の外にあったものが

この宣伝ポスターによって、こんな部活が

あったんだなと理解を得ることができた。

もちろん俺たちの活動を度外視している連中

だっていたが、それはもういないらしい。


 理由は俺にある。


 俺が実際に”学校七不思議”の一つである

”秘密の部屋”を解決して見せたからだ。これで

「本当に力ある部活なんだ」と確証を持たせる

確たる証拠ができたわけであり、おかげで

俺たちはただの「お手伝い部」から見事に

「異能部+お手伝い部」にクランクアップした。


 うん、わかっている。まだ俺たちには基盤が

整っていないのも確かだ。まだまだ手伝いの

仕事を断るつもりはないさ。それに霊に困った

人というのも結構まれだしね。


 霊っぽいけど違ったなんてものもあった。

それでも霊障の相談に来てくれるだけでも非常に

大きな進歩だろう。前なんて誰一人として

部室に来なかったんだからな。そこで俺は

新たな発見をすることとなった。


 それはミコの霊に対する知識量についてだ。


 俺は勝手に霊感がないからと実力がないもの

だと決め込んでいたが、ミコ自身もそれを認めて

いる。自分に力がないなんてミコは口が裂けても

言わないだろうが身振り素振りでそれはわかって

しまうものだ。それを補うためにミコは除霊の

実力ではなく知識で戦おうとしたらしい。

”この霊にはこの呪術が効く”だったり

”あれはあの霊の仕業かと思われる”だとかの

知識を異常なまでに持っていた。まぁ、呪術を

ミコが使っても効果がないんだけどね。それは

仕方がないとして、相談諸々には何かの悪魔や

霊に関する書物やグーグルを使わずにパパっと

答えているのは見ていて素晴らしい。今までの

アホ設定が嘘のようだ。


 この巫女のフレンズにやっと得意なものを

みつけることができた。


 が、その知識のおかげなのか、その知識の

せいなのか……


「それで本当に霊に困っている人は誰か

 いたのか?」

「……」

「いないようだな」


 俺たちは本当に霊に困っている人とは

会うことはなかった。さっき言ったように

「これは霊障だ」と断定する人がいない

だけあり、除霊以外の除霊っぽい依頼が

どしどしときた。


「もーーーーーっ! ここは病院じゃ

 なんだよ!!」

「仕方ないだろ。寒気を感じたらそれは霊が

 原因だって思える人だっていないし、逆に

 寒気を感じて俺たちに相談してきても風邪

 でしたーなんてのもザラだろ」

「だったら素直に保健室いけってんだーい!」


 ミコがご乱心なのも無理はない。ここ数日は

霊の相談、じゃないや霊まがいの相談に追われ、

今までの力仕事が終わればあとは部屋でふぅと

一息つく、なんてことはなくなった。仕事が

見つかったと聞こえればまだうれしい気も

しないでもないが、こうも毎日毎日ガセネタの

相談をされれば気がめいるのも無理はない。

俺はそんなことはないのだが、ミコについて

だけいえばそのやる気が空回りしている

状態なんだろう。


「まぁ、今日は別にいいだろ。確か今日は

 定期的な夜の学校探索だろ? 俺たちの

 れっきとした活動ができる」

「成果いまだにないのに?」

「……」

「私まだ霊祓ってないのに?」

「……」


 うーん、ここはかかわらないが吉か。

めんどくさい部長だなぁ。なんでこいつが

部長やってるんだよと今になって思う。


「とりあえず生徒会室に行ってその報告

 しなくちゃな。まぁ、休憩と外の空気吸いに

 いくぞ」

「あ”? どこいくんだよ」

「義堂は……くるか?」

「ここにいるよ、まだねててぇ」


 言い忘れていたが、うちの部室はちょうど

一週間前になんとコタツを導入したのだ!

これはいつものようにここ、つまりは体育

倉庫に放置されていたものを使ったなんて

チープなものではなく、しっかりと俺たちに

支払われた部費で買ったものである。


 俺は反対した。ええ反対したとも。


 が、部活内の多数決で俺の負けは決まり

結局買うことになったのだ……あ、違うな。

確かそのときは俺は多数決じゃ不公平だって

主張してこの話はおじゃんになったはずだ。

ならなんでコタツが部室にあったんだろうか。


「あ、それ僕だよ」

「あんたかーい」


 生徒会長、またお前か。


「神前君が折れてくれないからって、部長の

 御前さんがじきじきに僕のところに来て

 ”僕の”名義で買ったんだよ」

「……それでそのコタツの出資は」

「異能部」

「なんでや!」


 って理由はさっき生徒会長が言ってただろ。

あくまで俺が反対するから、俺という障害を

回避するため、生徒会長を触媒に使っただけ

でありミコが「異能部」の代表として経費から

落とすのは条理だな。


「てっきりどっかからコタツかっぱらって

 きたものかと」

「うちの部活に窃盗の容疑をかける気?」


 ”かける気”、というか俺とミコは一度

学校の備品を盗んでいるだろ。鍵という名の。

そういえばあれは未だバレないままですんで

くれているのだろうか……


「ひとまず今日は活動の日なんだね」

「いや、ほぼ毎日やってはいますが……」

「夜の探索ってこと。なんだかいっつも

 忙しそうだから僕が遊びにいく暇も

 なさそうだね。せっかくコタツ買ったん

 だから僕もあったまらせてほしいん

 だけど」

「会長、まだ仕事がありますので」

「六郷君? ちょっと今のタイミングh」


 俺たちは流れるように生徒会室を出た。

何があったかはどうであれ、夜の活動の許可と

報告は終わった。どーせ夜になるまで俺たちは

なんにもできないんだ。義堂に習って俺も

ちょいと寝てもいいだろう。


「うーーーーん……」

「……」

「……」

「……」

「なんか聞いてよ」

「なんでだよ」


 ほんとめんどくさいな、おい。


「それでなんで悩んでるんだよ」

「私って除霊できないじゃん? いやまぁ

 本気出せばできますけど」

「ああ、できないよなお前」

「そうそう、でもそんなストレートに言われると

 さすがに悲しくなるからやめて。私が

 ああやって風邪だって言って帰らせていた

 人たちももしかしたら霊の仕業だって言って

 いればこんなことにならなかったのでは」


「まーた、過ちを犯すつもりかよ」

「へ? 過ち?」


「だってミコお前って前に霊の仕業だー、とか

 言いふらしてただろ。半年前のことだから

 忘れたなんていわせないぞ。それでミキ

 ちゃんがどうなったか思い出せるだろ」

「うーん、でも」

「それに俺たちの目的は”学校七不思議の解決”

 そんな”お手伝い”が目的じゃないだろ。

 だからもっと気楽n」


「だったら私はこんなに焦ってない」

「?」


「私ってもう高校生で家族で一番若い巫女。

 大晦日に神社のお仕事をやったこと

 知ってるでしょ? あのときに

 私の力をとくと実感したし、もう私には

 成長の時間がないんだなとも思ったの。

 だからすぐに私の尺度を測れるだけの

 大きな”何か”がほしい!」

「ソォイ!」


 ここでココの容赦ないチョップ!

レディーファーストなんてものはない。


「アダァ!!」

「それで何になるんだよ。それにこれは部活で

 これは「異能部」の問題だ。それを部長

 一人で悩んでどうする。


  俺も悩ませろ。って義堂なら言うよ」

「イデデ、どーせまた私のこと馬鹿にする

 でしょ! ど・-・せココのことだから」

「あぁ馬鹿にするよ。ならそれだけ俺のことを

 馬鹿にしてみろよ。間違っていたと示して

 見せるのも部長、ミコの仕事だろ? ほら

 シャキッとしろ、シャキッと。じゃないと

 本当に俺が部長になっちまうぞ^-」


「それはさせない! させるもんですか!

 私はあの日、ココが見舞いに来たときにそう

 誓ったんだから絶対にめげない!」

「それでいいよ、それがミコらしいし、

 それでこそ「異能部」の部長らしいよ。

 あの字のまんまじゃんかよ」


 まっすぐでどこまでも馬鹿を貫く

あの「異能部」のあのポスターのように。


「見てなさい! ココになんて私の立場を

 担うには荷が重いって思わせてあげる!」

「おぉおぉ上等だ。


  それに義堂から朗報だよ」

「え?」


「たぶん、この感じだとれっきとした除霊依頼」


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