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宝箱と 恋の再出発
旅立つ前に 最強乳母を送ることにしたが、
道中は 決して 気持ちのいい旅路ではなかった。
馬車の中で 向かいに腰掛ける乳母は 始終だんまりを通し 無視を貫いている。
「・・・マーサ、本当に 分からないんだ!
その、女性のこと・・・
良ければ、どんなひとか 教えてもらえないか?」
それほどまでに 存在感があるとは、いったいどんな ひとなのか。
ーはやり熱から 人々をすくった 救国の乙女
ー両親の命と 国を奪われ、放浪の末に 自分が連れてきた 孤独な幼少時代
ーいとこ(世継ぎの君)さえも 魅了した その笑顔
ーそして、自分と 契約婚約まで交わした 想い
周りの話では いつも ひとのために 笑顔で 走り回っていたことしか きかれないその人とは。
「出会いは はだかんぼうを ばっちりみたことですね…」
えっ、それって 俺最低じゃん(。・・。)
大事なことを すっぱり抜かしてはなす 乳母に、ますます どん底に落とされる 若様だった。