宝箱と 恋の再出発
日が 傾きはじめ、街路樹の影も 随分と 伸びてきた。
ーここを抜けたら、“白の館”だわ
そう、ブルーグラード侯の亡き奥方は 国王様の 妹君。
ここ 王領の別邸は 小高い山の上にあり、白亜の煉瓦が使われている。
下にすむ 村人達から “白の館”と呼ばれ 親しまれている。
奥方亡き後 病弱なご子息の 療養先に つかわれていたが、
自分が 精霊殿に 住まうようになってからは、一度しか 訪れていない。
若様が 騎士の養成学校に 旅立つ 前日以来だが、
ここに もう一人 目的の人物が いる。
ライラの 幼い 弟だ。
実は、今回 ライラの代わりに同行してくれたのは、
サロちゃんの崇拝者達の 元締めーもとい、サロちゃんの もと婚約者ラヴィくんが
率いていた隊の 副隊長さん。
体は 大きくてごっついけど、心根は とても 優しい。
おまけに 酒が めっぽう強く、もっともっと 驚きなのは・・・
扉の前に 立ったその瞬間、いきなり ばたんと 開いて 脱兎のごとく
飛び出してきた 幼き影。
ごっつい副隊長の 足に ぎゅむっと抱きつき、叫んだ!
「あねうえ~!!会いたかったですうう」
そして、えぐっ、えぐっと、泣き出したいのを 必死でこらえ ぐしゃぐしゃの顔で
ずっと上を 見上げる。
見下ろした顔は 満面の笑顔。
そして、優しく 言の葉を 紡ぐ。
「大きく なったのね、愛する 弟ちゃん♡
いい子に してたかしらん」
そして 頭を ぐりんぐりんとなでかき回す。
「・・・・・・・・・・」
口を あんぐりあけて 見ていた もうひとりの 懐かしい姿。
その人に 近づいて、一言。
「ただいま、マーサおばさん」
バチコーン!!
おもいっきし 頭をはじかれ お怒りを 受ける。
「何考えてんの、この おおばかの すっとこどっこん!
なんで さっさと 戻って来なかったの?
心配したじゃないか、もお・・・」
その後は 言葉にならずに、ぎゅっと抱きしめられた。
「ごめんなさい」
それしか 言えない。
副隊長さん、実は ライラと 同郷で、二人が 逃げる時に 身の回りの世話を 細やかに
してくれた 優しい優しい「オネイサン」であり、
なんと、ライラの 許婚でも あったのである。