エンディング5 刹那に煌めく星空
注意・エンディングはほかにもあります。
全て終わった。
あとは普通に暮らすだけ。
戦いはまだ終わらないだろうけど、まあ・・・問題ない。
神を撃破し、元の世界に帰還。
その時、刹那と二人きりになったときがあった。
千秋は何かあるらしく、先に帰ってしまい、その他の人も随時解散。
そんなときの出来事。
「なあ、片瀬」
「ん?」
「吾らは兄妹なのだろう?」
「はやて姉が言うにはな。はやて姉とは同じらしいが、オレとは血は繋がっていないんじゃないか?」
はやて姉とオレ、暁の父親は同じ。
刹那とはやて姉の母親が同じ。
「まあ、血は繋がってないみたいだ」
だが、義理の妹ということに変わりはない。
「そうか・・・うん。分かった、決めたよ」
「ん?何を?」
「わ、わ・・・私は!」
落ち着きがないな。
刹那らしくない。
「はー、片瀬駿!私は・・・もうどうすればいいか分からない!」
いや、こっちの方がどうすればいいか分からないよ。
何がどうすればいいか分からないんだよ。
「だから、今ここに宣言する。私はお前が好きで好きで仕方がない!」
刹那は顔を真っ赤にして、まっすぐにオレを見ることができていない。
「・・・ふられることは分かっている。でも、言っておきたかったんだ。私にだって、斬れないものはあるんだ。いくら心であらゆるものを斬ることができても、実態がない愛情なんかは切り裂くことができない」
これ以上恥ずかしいことはないだろう、そんな顔をしていた。
オレはその光景を黙って見ていた。
黙って見てはいたが、真剣に見ていた。
「もう、胸がはち切れそうなんだ。我慢できない」
ドサッという音がした。
何事かと思って音の先を見ると、刹那はオレの胸に抱きついてきていた。
「・・・好き過ぎるんだよ」
「え?」
「千秋もお前も好き過ぎて選びきれねぇんだよ」
この気持ちは本当だ。
決別したつもりだったが、またこの感情が・・・。
未来が千秋との未来になっていた。
だからオレはそれに従った。
だけど・・・最近、刹那も千秋に並ぶほどの存在になってしまっていた。
「・・・片瀬」
「駿って呼んでくれ」
「ああ・・・駿」
もう、歯止めが利かない。
「い、痛いよ・・・駿、強く締め付けすぎ・・・」
「弱々しい刹那も・・・かわいい」
「わ、私なんて・・・正直あんまり顔は良くないし、女の子らしくないし・・・」
それでもいい。
愛というものはそれだけじゃ表現できない。
てか、刹那は充分かわいい。
サラサラとした黒髪がとても綺麗だ。
赤く染まった顔がとてもかわいい。
「もしかして・・・私」
「刹那、今から・・・旅に出よう。誰もいない、二人だけになれる地へ」
「で、でも・・・私、以前医者に言われたんだ・・・子供は・・・産めないって。それでもいいの?私との間に子供は授かれない」
「愛し合うのに・・・子供は必要か?」
「・・・うん、そうだね」
「口調が変わったな」
「え、そんなことはないぞ?」
「無意識のうちに戻ってたみたいだな、昔に」
「そっちの方がいいなら、私はその口調で貫き通すが」
「そっちの方がかわいいよ、女の子らしくて」
「う、うん、わかった。それでどこに行くの?」
誰にも見つからない。
もしくは見つかりにくい場所。
「南米にでも行くか。そこなら北米やアジアよりも見つかりにくいだろう」
「昔から南米の建物には興味はあった。分かった、そこに行こう」
オレたちの新しい人生が始まるのか。
「エスナ、オレたちを未開の地へ、連れて行ってくれ」
オレが呼びかけると、すぐにエスナは姿を現した。
「・・・お前の嫁には、会わなくていいのか?」
・・・ああ、もう・・・会わなくていい。
オレは違う道を選ぶ。
「千秋、ごめん」
「・・・未練、あるのか?」
「いや、今決別した。問題ない!」
「・・・それでは、南米に飛ばすぞ」
頼んだ、エスナ。
オレと刹那は南米へ飛んだ。
あれから数年経った。
あの強敵からいまだに見つからずにいるのは凄いことだと思う。
子供ができないはずの刹那に、新たな命が宿っている。
「これで、よかったんだよな」
「やはり未練があるんじゃないか?」
刹那の口調は、やっぱり直らなかった。
それでも、そっちの方が刹那らしい。
「そうかもしれないな」
小さな家で、二人、幸せに暮らしている。
「それじゃあ、オレは買い物にでも行ってくる」
オレは財布を手に取り、町へと赴く。
小さな町だが、町民はみんなやさしい。
異国からやってきたオレたちを快く迎えてくれた。
町で買い物を済ませ、オレは帰路に就いた。
そんな時だった。
「駿、ようやく見つけました」
「・・・千秋」
「今まで何をしていたのですか?梨瀬も・・・翠香も・・・私も置いて」
オレは買い物袋を投げ捨て、腰に掛けてあった刀を抜く。
「な、何をする気ですか!?」
「・・・立ち去れ、千秋。オレはもう、お前と共にいられない」
「・・・あなたは私を殺せない」
「ああ、殺せないさ。だが、こうすれば問題ないだろう?」
オレは自分の首に刀を押し当てる。
「駿!?」
「・・・千秋はオレを殺せない」
それを知っていた。
知っていたからこんな真似をした。
「それなら・・・一緒にいられない理由を教えてください。戻ってきた、あの日に何があったのですか?」
「いいだろう。教えてやる。オレには最愛の女性が二人いた。あの日、オレは最愛の女性の片方から、告白を受けた。選べねぇくらいどっちも好きだった。だから、オレは・・・オレはあの日南米に旅立った。過去とは完全に決別するために」
「・・・最愛の女性・・・それは」
「千秋と刹那」
オレは千秋の一途な思いが好きだった。
オレは刹那の凛々しい顔が好きだった。
オレは千秋の手料理が好きだった。
オレは刹那の澄んだ心が好きだった。
「どっちも同じくらい・・・好きだったんだよ」
「何故、彼女を選んだのですか?私にはあなたとの間に子供もいるのに」
「・・・そこが最大の違いだ。オレは刹那の心からの告白に感動した。お前は、もうオレを奪われない余裕を持っていた。それが最大の違いだ」
「私は・・・負けたのですか・・・刹那さんに」
「そう思いたければそう思えばいい。ただ、ひとつだけ言っておく」
「・・・何ですか?」
「人間は勝ちだけの人生を歩むことはできず、負けだけの人生を歩むこともない。覚えておけ」
オレが言った言葉の真意を理解したかはわからない。
でも、それでも、千秋がそれを聞いて変わってくれるなら。
それを理解して変わってくれるなら。
オレはそれをただ、望むばかりだ。
「じゃあな、千秋」
オレは刀を鞘に戻し、投げ捨てた買い物袋を拾った。
「ああ、卵割れちゃったよ・・・まあ、いいか」
今度こそ、家路に就いた。
「刹那、ただいま」
「ああ、おかえり」
オレは買い物袋をテーブルの上に置くと、刹那の横に座った。
「身に子供を宿すと、また違ったものだな。私も昔は刀に手をかけただけでものを切断できたんだがな」
「・・・怖いのか?」
「まさか・・・駿との子だから、そんなことはないさ」
刹那は微笑んだ。
ここに来るまでは一度も見せなかった顔だ。
「ありがとう、駿。私を選んでくれて」
「お前が行動した結果だ。運命ってのは、定められていると思っていたが・・・案外、簡単に変えられるものなのかもしれないな。尤も、これが本当の運命だったのかもしれないが」
そんなことを思いつつ、オレと刹那は軽く口づけをした。
「ふふ、いつしても上手だな」
オレはあそこで刹那をふっていたらどうなっていただろうと、思うときがある。
たぶん、今頃千秋と豊かな家庭を築いていたんだろう。
でも、運命というものはどうなるかなんて、オレには分からない、
これが運命だったのだ。
過去にどうすれば、なんてことは考えても無駄ってことさ。
「運命とは、時に残酷なものだ」
「でも、運命とは時に幸せをも運んでくれる・・・そうだろう?」
「ああ、そうだ」
そう言って、オレと刹那は再びキスをした。
個人的に好きなキャラ、刹那と結ばれる、という話でした。
これ書いてて思ったんですが、駿って酷い奴だな・・・と。
本日はここまで。
これ以降、エンディングが追加されるかもしれないので、一応完結ではないということにしておきます。