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片瀬の日々  作者: STORM
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最終章第22話 シリアスっぽいタイトルしか思いつかんのだが・・・。

「おい、起きろ」

どこかの廃工場。

その外に止めてある車が一台。

高級車のようだ。

そのなかで寝かされている少女を見下ろすひとりの男。

手には銃。

「ここから行ける、夢のそのまた夢に」

「ありがとう、ここまででいいわ」

少女は目をこすりながら工場に入っていく。

「椎名千秋、私はあなたをどこまでも追い続ける、そう、どこまでも」









オレは刹那のところに来た。

「どうした、片瀬」

はやて姉の言っていたことの意味、ここに来る前に気付いてしまった。

オレはひそかに刹那に思いを寄せてしまっていたのかもしれない。

はやて姉にはそう見えたようだ。

別にそれでも構わない。

でも、刹那ならひとりでもやっていける。

オレも手を出すことはできない。

だから、今ここで過去の自分と決別する。


「刹那、剣を交えてくれないか?」

「・・・構わんが?」


オレの読みが正しければ、オレは負ける。

全力を尽くしても、オレは負ける。

刹那の目には、オレを倒すだけの力が宿っている。

オレは臆病だ。

臆病ゆえに、平和な策しか思い浮かばない。

「殺す気で来てくれ」

オレは剣を抜いた。

そして、それ以外の剣を投げ捨てた。


オレが選択した剣はウリュウ。


「オレを超えてくれ」

「ど、どうしたんだ・・・急に」

戸惑う刹那のことなど気にせず、深呼吸、そして奥義。


「神技・悪意マリシャス鎮魂歌レクイエム

「うわああああああああああああ!!」

刹那は遠くまで吹き飛ばされた。


神技は神・奥義とは全くの別物。

神刀を使うときのみ使用することができる。

というより、これを握ったときだけ使用方法が脳裏に浮かぶ・・・これを放した後はすっかり忘れてしまう。

そして悪意の鎮魂歌、マリシャスレクイエム。

神が神へと送る悪意の剣。

一振りで大気を震わせ、黒き旋風を巻き起こす。



「超えてくれ、オレを・・・神技、神の力を超えるんだ」

「な、何故!?片瀬は吾に超えてもらいたいのか!?」

「オレは・・・オレは安心がほしいんだ。この間は賢者にやらせたが・・・もう、オレは逃げない!」

オレは次の神技を繰り出すために剣を振りかぶる。

千秋はオレが守る・・・だが・・・もうひとりの愛する者とは、常には一緒にいることはできない。

・・・だから。

「・・・いいだろう!吾は汝を超えて見せよう!いま、ここで!」

・・・よく言った。

「神技・星屑スターダスト交響曲シンフォニー

剣を一振りする・・・。

たったそれだけで、たったそれだけなのに、星屑が刹那の全身に細かい傷をつけていく。

刹那の体は血で深紅に染まっている。

散りばめられた星屑は想像以上に鋭かった。

だが、オレは攻撃をやめない。

「神技・銑鉄アイアン四重奏カルテット!」

鉄の風が次々と刹那に突き刺さる。

いくらオレが刹那を傷つけても、オレが涙を流すだけで刹那は闘志を燃やし続けていた。

決して膝を折らずに。


「・・・はぁ・・・はぁ」

そろそろ限界か。

刹那は鞘を杖にして、必死に立っていた。

刹那は抜刀術の使い手だ。

オレみたいに抜き身の状態で戦う戦法ではない。

勝負あったな。

やはりまだ早かったか・・・。

「・・・まだだ、まだ私はやれる」

「声が変わったな」

声色が変わったわけではない。

声に封じ込められている・・・言霊、とでも言うか。

それが変わった。

「・・・神技・疾風ゲイル五重奏クインテット

オレは剣を振る。

だが、刹那は笑っていた。

「私の奥義、見てくれ・・・焼殺旋風!」

杖にしている刀とは別の、腰に差されていた刀を一気に抜き放つ。

抜かれた勢いでオレの気を吹き飛ばす。

「・・・私だってこれくらいできるんだ!さあ、次の一撃で決めてやる!」

ついにこの時がきたか。

オレは刀を縦に構える。

刃を目と目の間に、両腕を折り、手は胸の中心に。

神気が刀に集中する。

「是、最強之神技也!」

「吾が心に封じ込められた刃、味わうがいい!」

刹那は右肩を押し出し、刀に手をかける。

対するオレは両手に握った刀を天高く振り上げる。

「神技・蜃気楼ミラージュ大団円グランドフィナーレ!」

「心刀・鮮血桜!」


オレが巻き起こした神風、それを斬った何か。

刹那は心で人を斬ることができる。

一度目にしてはいたが、これほどとは・・・。

オレには・・・できないことだ。

「うぐ・・・」

オレの風は全て切り刻まれ、その上オレの胸には斜めに大きな傷が刻まれていた。

そこからは大量の液体が、止まることなく流れ続けていた。

「片瀬・・・すまなかった」

「安心したよ。お前を守る必要がないから」

オレは痛みに耐えながらできるだけ笑みを浮かべた。

「そ、そんなことない!いつだって片瀬が守ってくれているのは嬉しかったし!」

「もういらない。これでお前とは、もう何もない・・・千秋を守ることに専念できる」

血が足りなくなってきたか・・・少しフラフラする。

真っ直ぐに歩けない・・・。

オレをここまでの傷を負わせたのは、たぶん刹那が初めてだ。

ホント、意識保てねぇ。

「死ぬな、片瀬!」

はは、オレはこの程度・・・じゃ・・・死なないさ・・・。

ただ、少し眠くはなってきたかな・・・。

次に起きた時は、真っ先に千秋のところに・・・いかない・・・と。










「お兄ちゃん・・・」

誰かの声が聞こえる。

「お兄ちゃん・・・お願い、起きてよ」

目を開いた先には蒼穹が広がっていた。

・・・死んだか、オレ。

「お兄ちゃん・・・」

お兄ちゃんなんてオレのことを呼んでた奴いたっけ?

オレが目を声の主へ向けると、そこには大粒の涙をこぼした刹那がいた。

お兄ちゃん?

・・・ああ、そうだった。

オレとは義理の兄弟だったっけ。

でも何で急に。

「・・・おはよう」

「か、片瀬!?起きていたのか!?」

目を真っ赤にしながらオレを見つめている。

「可愛かったぞ、泣き顔」

「な、何を言う!?」

「お兄ちゃんか・・・暁も呼んでくれないしな。確かさらに下に妹がいたが、たぶんあいつもう出てこないし、しかも一回しか会ってないから名前も忘れた」

「べ、別にお兄ちゃんなんて・・・吾にはいらんからな!」

「兄と呼びたければ勝手に呼べ」

「だから―――――」

そう言い放ったものの、刹那は嬉しそうな顔をしていた。


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