最終章第21話 未来のオレは魔王と子作りをしてしまったようです
カタストロフを服従させた。
はやて姉が。
「なあ、はやて姉。どっからあんな魔力・・・てか生命力を吸収したんだ?あの状況にオレ以外にあんな魔力や生命力を保持している奴なんていなかったはずだが」
生命力は魔力である程度補うことができる。
そしてあの時オレは魔力も生命力も吸収されている感じがしなかった。
「そんなの簡単じゃない。なんだっけ、服従させた刀、カタストロフだっけ、あいつから奪ったのよ」
・・・。
・・・魔王だな。
「さあ、カタストロフの力が戻ったら帰るとすっか」
「待ちなさい」
「あ?」
はやて姉の声にオレは振り向いた。
「駿くん、今こそ決断の時だと思うの」
「は?」
「あなたは本当にこのままでいいの?」
何言ってんだ?
「あなた、千秋ちゃんと本当にやっていけるの?」
何言ってんだ、今までやっていけていただろ?
「言っている意味が分からない」
「曖昧な考え、どうにかしなさい。あなたにはもう一人、思いの人がいるでしょう?」
「何を言ってんだ!?はやて姉、ふざけるな!」
「千秋ちゃん、飽きちゃったの?最近の駿くんからは千秋ちゃんを守らなきゃいけない、一緒にいなきゃいけないという使命感しか感じられないわ」
「バカか!オレは千秋を守らなきゃいけないんだ!梨瀬だって、他の子たちだって一緒に!!」
「・・・守る守るって言うけど、その言葉の意味、分かるの?」
は?
守る・・・外敵から守る・・・ってことだろ!?
そして彼女たちを悲しませるすべてのものから守る・・・。
「千秋の笑顔を、オレは守る。笑うことを許さない奴を潰す」
「それなら、あなた・・・切腹することになるわ」
・・・どういうことだ?
「千秋ちゃん、あなたが戦うとき、他の女の子と話をしているとき、とても悲しげな顔で見つめているわ。一番笑顔を奪っているのはそう、あなたよ」
な、なに馬鹿なことを・・・。
はやて姉・・・。
オレは・・・オレは・・・。
「な、なんだこれ」
はやて姉はオレに一本の刀を渡してきた。
「神刀・ウリュウ。この世界を統べる神の力を借りて作られた刀。伝説の刀匠、片瀬風上・・・まあ、150年後の人だけど、彼が打った刀。漢字では雨龍と書く。私の子孫よ、私とあなたの」
は?
「私はあなたの子を産む。その刀が証拠。駿くん、あなたがこの結末を回避したいのなら、この刀で私を殺すか、自決しなさい」
言っている意味がわからねぇ・・・。
「あなたが本当に千秋ちゃんのことを愛しているなら、私を殺しなさい、その刀で!」
そ、そんなこと・・・できるわけ・・・。
「私を殺せば千秋ちゃん一筋、ということも理解できる。でも、このままいけばこの刀が生み出された結末にたどりつく。それは、私があなたの子供を産むということ」
はやて姉を殺すだと!?
そんなことできるわけねぇじゃねぇか!!(実力的な意味で)
はやて姉には今までお世話になってきた。
基本的に家にいない親の代わりをしてくれた。
「オレにははやて姉を殺すことなんてできない。ましてや自分の命を絶つことなんて・・・オレには、オレには死を悲しんでくれる人ができすぎてしまったから。未来を変えることができるかどうかも、運命。オレは千秋を裏切る気はないさ」
「・・・それでこそ、駿くんよ」
はやて姉は地面に落ちたウリュウを拾う。
「この刀はあなたのもの。最強の剣士には、最強の剣がふさわしい」
そのままオレに刀を手渡した。
「オレは最強なんかじゃない。剣聖なんかでもない。オレは未熟すぎた。剣聖なんて名乗っちゃいけない」
「それなら・・・最強を目指しなさい!何が何でも!」
「剣士たるもの、剣聖を目指すことは当然のこと」
「それで、あなた・・・駿くん、ケジメをつけてきなさい」
?
さっきからそんなことばかり・・・。
はやて姉の件は解決しただろう?
「彼女と剣を交えなさい。彼女もそれを望み、そしてあなたを成長させることになると思うから」
彼女?
千秋のことか?
千秋なんて剣術など使えないが・・・。
「さっきから意味がわからないんだが」
「まあ、お姉ちゃんからのアドバイスよ。その戦いであなたは気づくはず」
何が気付くんだかさっぱりわからないが、戻るまでは時間がある。
「ゆっくり考えて・・・ん?もしかして」
「今思いついた通りのことよ」
そうか、そういうことか。
そうだな、一戦交えるのも・・・悪くはない。
オレは身を翻した。
「戦場へ行ってくる」
コツコツと足音を立てて去っていくオレに、はやて姉は微笑みを見せていた。