最終章第18話 ロストテクノロジーというものは、本当に素晴らしいものだ
オレたちにはもう、この世界でやることはなくなった。
「見つかったか?」
「いいえ、ないわ」
ここ数日間、ずっとほかの方法を探したが今まであった小さな情報たちは全て偽りだったことが発覚。
残る手段はやはりあの方法だけしかなくなった。
「オレは考えた」
「何を?」
「生贄は別に戻るために使われるコストではないんだ。ただ、この刀が欲望のために要求しているだけで、戻るためにはなにも必要ない」
そうだ。
だから、戻る方法は簡単だ。
「オレがここに宿る悪魔を、従える」
そうすればノ―コストで次元を行き来できる。
何も失うものはない。
「ただ、やつは強敵だ。力を寸分された状態ですら神に匹敵する力を持っている」
「そこで力を蓄えるか・・・っつっても、この世界に俺達ほど強いやつらはいるのか?」
「正直いないな。もしいたとしても、探すストーリーを考えるだけ、作者にネタが残っていない」
裏話を持ち込むオレ。
そこでだ。
オレが考えた秘策。
強力な仲間を手にするなら。
「オレの魂を召喚する!」
「は?」
意味わからんだろう。
そのままの意味で捉えたらな。
「正確にはオレの中にある二つの魂。コンタクトがとれる賢者とリリィの魂だ」
「・・・リリィ?」
ああ、はやて姉はあの時島にいなかったからな。
わからんか。
「まあ、みてな」
オレは呪文を唱える。
すでに居場所が分かっているものを召喚するのであれば、オレの魔力特性から何もなくても召喚できる。
どんなに強大な奴であってもだ。
強大な悪魔のときは準備がいるが。
あの悪魔たちは刀が触媒となった。
まあ、なくなってはいないが、魔力を少しだけ提供してもらった。
「いでよ、我のうちに宿りし二つの魂!」
オレが叫ぶと、オレの胸から二つの光が解き放たれ、その光は人の形を取り始めた。
と、同時にオレは少し脱力感を覚えた。
「久しぶりだな」
先に肉体を形成できたのはリリィの方だ。
赤い瞳、銀の長髪、白い肌。
美しい。
こんな体でも、アルビノではないようだ。
「赤い瞳は遺伝だ。銀髪も遺伝。白い肌は女だから」
白いドレスに身を包んだリリィはその名の通り、白百合のようであった。
「言っておくが、私は剣など使えないぞ?」
・・・え?
「使えないといっても、お前ほどに・・・だけど。人を退ける程度の力はあるけど一騎当千の猛者とまではいかない」
そりゃそうそういてたまるか。
「でも」
でも?
「斧なら使えるぞ」
え?
「斧なら百人だろうが千人だろうが、一度に相手しても勝利を手にすることができる」
まさかの斧ですか。
斧・・・ねぇ。
この細い体に大きな斧・・・凄まじいギャップだ。
「その顔は疑っているな。なんなら、相手をしてやろう」
リリィはケータイのようなものを取り出した。
ボタンを一つ押すと、それが縦に伸び、先のほうから両サイドにビーム上の刃が飛び出した。
「ビームアックス・・・そんな技術があるとはな」
いいだろう。
オレも試したいことがあったんだ。
「秘儀・炉心熔融!」
オレとリリィをマグマが包み込む。
というより、ところどころ足場を残してそれ以外の一定範囲の地面が全て熔解、狭いエリアでの決戦となる。
なお、空を飛ぶことのできる悪魔との戦いではさほど役には立たないが、戦車等の軍事兵器にはかなりの効果がある。
熱気も凄まじく、ジリジリと互いの肌を焼いていく。
熱で死ぬ可能性だってある。
「私にそんな小細工が効くと思っているのか?」
リリィは嘲笑う。
・・・なに?
オレの肌はどんどん焦げて行っているにもかかわらずあっちの肌は傷一つない珠の肌だ。
「私はあらゆる環境変化に対応できるリングを装備している。変化に対応できる限界はあれど、地球の中心・・・核の部分に行っても数時間は耐えれる。」
な、なんて技術だ!?
現代科学の数段・・・いや、それ以上上回っている!?
「なら、オレも魔術を使わせてもらおう」
オレはポケットにしまってあったタリスマンを取り出す。
これは魔力を込めるだけでそれこそあらゆる環境のh(略
刹那に魔法雑貨店を教えてもらっていて正解だったぜ。
「これで互いにフェアだな」
「マグマに落ちても平気だが・・・それじゃあ面白くない。マグマに落ちたら負け、としよう」
ルールが決定した。
「行くぞ!」
オレは小さな足場を蹴り、宙に跳んだ。
そして先ほどオレがいた足場はボロボロと崩れ去った。
「ほう、自分が移動した場所は破壊していくつもりか」
「お前の場所を奪い去る!」
「時にそれば墓穴を掘ることとなる」
リリィは目を閉じたまま、斧を振り上げ、そのまま自分の足場に振り下ろした。
その振動はマグマを伝動し、足場をすべて破壊した。
「な、そんなことしたらお前まで」
「心配はいらないさ!」
リリィは斧を振り回して飛んだ。
「なにっ!?」
遠心力ってやつか・・・。
斧が得意な理由はここにもあったようだな。
斧を上に飛ばす勢いで自分も空に飛んでいくという・・・なかなかだ。
さらに事前に振り回す動作は飛距離を伸ばすために使われていたのか。
「と、なると・・・オレが不利か」
「そんなはずはないだろう?」
いや、確かに不利だ。
飛ぶことはできるが、鴻漸之翼を使えば両手がふさがる。
鴻漸之翼なんかで倒せるような相手とも思えない。
なら方法はひとつしかない。
「ハヤブサ!」
オレはハヤブサを引き抜き、魔力の融合を始める。
次の瞬間、オレの背からは隼の如き大翼が生えていた。
「これで五分か?」
「いや、まだ私のほうが不利だな!」
地に落ちようとするリリィは斧を横に振り回し続けた。
次第に回転速度は増していき、竜巻・・・もしくはそれに匹敵する暴風へと変貌していった。
「空斧の魔将。それが私に与えられた称号だった」
そういうと、その竜巻に巻き込まれたオレをリリィは斧で殴りかかってきた。
「エンシェント・クレイモア!!」
斧の刃がクレイモアのような巨大なものへと変わり、オレを切り裂いた。
「ぐあ・・・」
とっさに避けたが、左肩を裂かれた。
骨に到達している。
もう、左腕は動かない。
「右腕だけでも!!」
オレは右腕に持っていたエクスカリバーを縦に振り下ろした。
「真奥義・ゴーレムストライク!!」
まるでゴーレムのように粗暴に振り下ろされたオレの腕の先にある剣。
それで相手を切り裂く・・・ではなく、断ち切るような切り方。
切り方がまずかったか、リリィにあたりはしたが、全く切れなかった。
だが、この奥義の真の使い方は相手を切ることではない。
鉛刀一割から派生したこの奥義。
もともとの奥義とは全く逆のことをする。
その勢いで相手をたたき飛ばす。
鉛刀一割は切れなかったものを切るのに対し、ゴーレムストライクは切れたものを切れなくする。
それぞれの長所と短所を使い分けることによって克服する。
ゴーレムストライクを受けたリリィは勢いあまり、マグマへと落ちて行った。
この技はオレの剣術の中でもトップクラスの衝撃を与える奥義だ。
マグマに浸かったリリィを見下ろした。
オレの勝ちだな。
すべてが終わった後、オレはエスナに腕を治療してもらった。
「なかなかだ。私についてこれるとはな」
「当然だ。それより、戦いの最中に呟いた空斧の魔将って?」
「ここで少し、小話をさせてもらおう」
そういうと、リリィは語りだした。
私たちの家系・・・つまり王族。
あの王家は戦闘の戦闘のプロを作っていたのだ。
人前にはこの力は見せず、戦争になったとき・・・最終手段として駆り出されるだけだった。
戦争らしい戦争も起こらなかったがな。
その時に特に優れた者には称号を与えた。
私は普段は自分は戦えないと言い張っているが、そんなことがあったからそう言っていたのだ。
実際に戦えないわけではないさ。
「・・・なるほどね」
「わかったか。賢者の具現に成功したようだぞ。賢者のところに行ってやれ」
リリィに言われ、オレは賢者のところへ向かった。