最終章第12話 名前だけすごいということはよくあることです。
「・・・凄い」
「ああ、ここ数日で修得できる技じゃねぇ」
空からあの戦闘を見たオレ達はただ、ただ感心していた。
戦闘の終結を見届けてから、グリフォンの翼を翻し、次なる街へと頭を向ける。
「次の街は・・・」
「小僧、メイドの女とやらが見つかった。今から示す街にいる」
急にあの悪魔が口を出してきた瞬間、脳裏に街が浮かんだ。
しかも都合のいいことに方向や距離まで教えてくれるという。
「はやて姉に交信してくれ」
何故かはやて姉が持っていた無線を持ってきた千秋に言う。
「・・・目的地が変更になりました・・・場所は・・・」
以下省略。
翌日、一足先についていたオレたちを追って残りのメンバーもやってきた。
「ここにはるかがいるのね」
「・・・街の人に聞いてみるか」
オレ達ははるかの捜索を開始した。
「すいません、ここらへんにメイドの少女を見ませんでしたか?」
「メイド?最近見ないけど・・・」
「そうですか、ありがとうございます」
まるでRPGの迷惑な勇者御一行のようにひとりひとり聞いていく。
だが、三十人ほど話しかけたが見つかる気配はない。
そして次に話しかけた人だった。
「メイド?・・・ああ、確か次の闘技場での景品だったかな。この街は奴隷制度がまだ残っていてね、景品―――奴隷をかけて闘うことができる。それで、勝者がその奴隷を手にすることができる。死ぬ危険性もあるからなぁ・・・確かそんなに出場者はいないはずだよ。それに銃も禁止だしね」
「そうなのか・・・ありがとう、有益な情報だ」
はるかは捕まったか。
だが、はるかは魔法を使うことができるはずだ。
何故、彼女が捕まるようなことに・・・。
一度集合し、情報収集の成果を話しあう。
「そう、捕まっていたのね」
「ん、おかしいと思わないか?はるかは首席で卒業した強力な魔法使いだろ?」
轟騎が率直な疑問を述べる。
「ああ。魔封じのアイテムを使ったか、それともそれ以上に強力な兵器で捕獲したのか・・・」
・・・確かめようがないな。
「武器は原則的に禁止なんだよな、そこの闘技場って」
「ああ、銃は勿論、刃物も使用禁止だ」
「魔砲は?」
「あれは杖、もしくは銃を使うから無理だろう」
それを聞いたはやて姉は舌打ちをした。
「私が出ましょうか?」
ここで出てきたのは千秋。
確かに、千秋なら洗脳を行う事で相手を簡単に倒すことができる。
・・・だが、オレはひとつの危険性を考えていた。
「それは止めた方がいい。この世界はオカルト的なものは非常に嫌われている。恐らく、はるかも魔法使いだから捕まったのだろう。魔封じでもされたに違いない」
「・・・何が言いたいのですか?」
「・・・お前も魔女扱いされるかもしれない・・・と、言う事だ」
「そんなの洗脳を使えば・・・!」
「一度にたくさんの人間を洗脳できるのか?」
「・・・できません」
よろしい。
そして武器・魔法を使わない・・・という条件でこのメンバーで最強なのは・・・。
「轟騎、はるかの救出を頼めるか?」
久々に俺のターンだな。
現在、俺は闘技会の一回戦を控えている。
「武器はなくてもなんとかなるか」
「次の選手、どうぞ」
俺は足を進める。
たった三回勝つだけで優勝できる。
「対戦相手は小僧かよ!」
「おーっと、新入りに百戦錬磨の戦士が立ちはだかった!」
そんな声が聞こえた。
観客の方からは、「あらら、可哀そうに」だとか、「死んだな、こりゃ」とか聞こえる。
そんなに強いのか、こいつ。
「彼は現在30戦無敗の王者、ここで手に入れた奴隷の数はなんと10人!」
ほう、手ごたえがありそうだな。
ここで俺は微笑をうかべる。
「・・・笑ってやがる」
「ああ、強い相手と戦えるなら本望だ」
「すぐに楽にしてやるよ」
こうして、無敗王者との戦いが始まった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
凄い速さで王者とやらが殴りに来る。
「あのパンチは岩をも砕くと言われる強靭な拳!!」
その拳が俺に当たる瞬間、パシィィィィィィイ、という音が聞こえた。
「な、なんだと!?」
「岩をも砕く?ふふふ、笑わせる」
岩も砕くと言っていた拳をいとも簡単に受け止めた。
弱い。
弱すぎる。
話にならない。
無敗王者とはこの程度のものなのか。
「うぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!」
俺は王者さんの拳を握りつぶした。
骨も粉々だろう。
観客は唖然としている。
それもそうか。
俺の握力は金剛石をも砕く。
岩なんぞとは、次元が違うんだよ!
「所詮この程度か。期待した俺が間違いだった」
俺は地面に蹲る王者さんを見下ろして言った。
泣き声しか聞こえない。
「審判、俺の勝ちだろう!!」
「待て・・・まだだ、右腕が粉々にされても・・・まだ左腕が残ってる!」
粘るな。
この戦い。
俺の勝ちだ。
「審判、ひとつ聞く。殺してしまっても構わないのだろう?」
「ええ、可能であれば」
ふふふ、ならば手加減は無用だ!
殴りかかってくる王者さんの拳を避け、頭を掴む。
そして、握りつぶす。
頭蓋骨は粉砕されただろう。
大量の血と、グロテスクな物体が大量に飛び散った。
「服に血がついちまったな。汚ねぇ」
この光景を見ていた観客は声を出すことができなかった。