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片瀬の日々  作者: STORM
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最終章第10話 今更ライバルかよ・・・遅くないか?

・・・おい、ふざけんなよ。

なんだあの威圧感・・・。

悪魔ですらあんな威圧感はねぇよ・・・。

「あなた、悪魔に近い気配を感じるわ」

悪魔のようなものですから。

そして暁はすっかりおびえきっている。


オレはこいつが怖い。

悪魔なんかよりもずっと怖い。

「この剣を見ることができただけでもすごいわ。それじゃあ、死になさい」

ちょ、マジやばいって!!


ナナリーのメーネは電撃を纏ったようにバチバチと音を立てながらオレに襲いかかる。

そしてその剣を受け止めた。

ナナリーの剣はとても強力で、その衝撃にオレの剣は悲鳴をあげた。

「ウソだろ!?」

妖刀が音をあげた。

なんとか攻撃をしのいだが、剣が刀に戻ってしまった。

魔力を使い果たしかけている。

これ以上使い続けたらそれこそただの刀になっちまう。

時間をおけば回復はするが、今は無理だ。

「た、耐えきった!?」

あっちもあっちで驚いている。

「マジで決めないと・・・こっちがヤバい」

オレはカスミとゲッカの二本を構える。

「魔力解放・・・そして、魔力のシンクロ!!」

二本同時のシンクロはなかなかキツイが、それでも今はやるしかない!!

「やはり、ただものじゃないわね」

そりゃそうさ、オレは悪魔に準ずる存在になっているんだから。


こいつは強敵だ。

一撃で仕留めなければ・・・こちらが危ない。

しかも暁もいる。

下手に動かれたら暁も危ない。

暁のことだから最低限の防御で助かるかもしれないが、その見込みは少ないだろう。

シロガネの魔力を一気に消費させたあの威力だ。

暁が受けたらどうなるか分からない。

下手すれば死ぬ・・・。

オレから動かねば・・・。


「あなたとの戦いは楽しいけど、そろそろ終わりにしないと」

ナナリーは剣を構える。

「同感だ。オレも待ってくれている人がいるんでね」

オレも刀を構える。

お互い意識を逸らさない。

そして、ピクリとも動かない。

瞬きすらしない。

その状態で一分が経過した。

瞳が渇いてきた・・・。

瞬きくらいいだろう。

オレが目を一瞬閉じた。


その瞬間だった。


ナナリーも同時に瞬きした。

何この襲いかかってくると見せかけて同時に瞬きするって。


その後も何度も似たような動作をしながら30分が経過した。

そろそろ魔力が枯渇しそうだ。

重い一撃を繰り出さなければ。


「神・十八代目二刀流奥義・フレスベルグ!!」

「シェヴァリエ・フィアー!!」


お互いの奥義が炸裂する。

その威力は互角。


オレの奥義は、二本の刀を翼に見立て、その羽ばたきで劫火を巻き起こし、敵を焼き払う鴻漸之翼の第三形態。

フレスベルグの翼に見立てたのだが、フレスベルグが何だか知らない人はwikipediaで調べてくれ。

手っ取り早く説明すれば神話の鳥だ。


対するナナリーの奥義(?)は、光のメーネから高圧(か、どうかは知らんが)の電流を流し、その稲妻で敵を貫く(と、思われる)奥義。

凄まじく強力である。

マジで止めたいくらい強力である。

なお、シェヴァリエはフランス語で騎士の意味、フィアーは英語で恐怖という意味である。

言語が違う物の組み合わせの上に意味が分からないというおまけつきである。

だが、強い。



「ぐああああああああああああああああああ!!」

え、オレ負けたの?

「きゃあああああああああああああああああ!!」

どうやらやられたのはオレだけじゃないようで。

・・・。

「・・・まだ、体は・・・動くか」

「なかなかやるわね、あなた」

「お前ほど強い人間は初めて見た」

マジで強かった。

オレと相討ちとはいえ、今までんな人間いなかったからな。

「今日は調子が悪かったようね」

オレとナナリーはゆっくり、痛みが迸る身体を起こしながらお互いを見つめた。

「あなたの名は?」

「片瀬駿。お前みたいな奴に出会えてよかった」

「改めて名乗るわ。私の名はナナリー・セシル。私もあなたみたいな人がいるとは思わなかった」

どっちも名前みたいだなぁ。

「最終章でようやくライバルみたいなライバルが登場かよ」

「この話、既に最終章なのね・・・」

残念でした。

「真の強敵は、目の前にはいないものだよ・・・覚えておきなさい」

「どういう意味だ?」

「自分で考えることね」

そう言うと、ボロボロの体を引きずりながらどこかへ立ち去って行った。

オレも立つのが精一杯なくらいにボロボロだ。


「駿、大丈夫!?」

「なんとか・・・うっ」

今頃になって傷が・・・。

内部まで損傷しているのか。

血が喉から・・・。

「エスナ・・・治療を頼む」

エスナはほとんど万能の天使。

神に近い存在である。

だが、神には勝てない。

神によくある、能力がひとつだけ特化することがない分、エスナの総合能力は神クラスかもしれない。

「無理だ、お前の損傷を抑えるのに全力でかかった。今は人間界に居座る事で精一杯だ」

ど、どんだけあいつ強いんだ・・・。

「リアなら何とかできるかもしれない」

ああ、そうだ・・・。

リア・・・は・・・そうか、千秋の所に置いてきてしまったな。

ダメだ、もう動けねぇ・・・。

オレの足は少しずつ崩れていく。

そんなオレの体を暁は優しく支えた。

幸い、オレの身体は軽いから持ち上げるのはそれほど苦ではないだろう。

「無理せんでええのに」

「無理したいんだよ、オレは」

「でも、ありがとな。駿が変わってくれへんかったら、命落としとった」

オレですら命を落としかけたんだからな。

普通の人間はおろか、戦闘のスペシャリストですら死んでいただろう。

悪魔の能力あってのこの命だな。

「駿、どうしたら強くなれるのやろか」

「オレにも分からない。でも、オレは自分を本当に強いとは思っていない」

「え、なんで?」

オレは暁に支えられながら一歩を踏み出した。

それと同時に返答した。

「なんでだと思う?」

「ん〜、ウチには分からん」

「・・・オレは心が未熟なんだ」

そう、心が。

「なんで?」

「そりゃあ、人間は完璧な人なんていないさ。一見完璧に見える千秋ですら、母親としての心がまだよく分からないそうだ。オレも同じ。父親としての心はおろか、人を思いやる気持ちも、その戦いに込める思いも、オレにはまだまだ足りない」

なんか話が脱線した。

まあいいや。

ようはオレが未熟だということさえ、暁に伝わってくれればいいんだ。

「そんなこと言ったら、ウチも未熟やないか。ウチだって最終奥義は使えへんし、駿には守られてばっかやし」

「ふふ、守りたいものは最後まで守り切るのがオレの主義だ」

と、言いつつ、今思いついた言葉を吐いてみる。

「頼りにしてもいいんか?」

「勿論。まあ、今回は無様に負けたけどな・・・ははは」

正確には相討ちか。

だが、オレはこれを負けとしてとらえる。

勝てなかった戦いは、負けたと思っていいだろう。

「次勝てばええやないか」

「勿論、そのつもりだ。不可能なんてことはないんだからな」

だが、その言葉を裏返せば、相手がオレに勝つことも不可能ではない、ということになる。

それでもオレは自分を信じて戦うしかない。


守りたいものを守るために・・・。

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