最終章第7話 弱小悪魔など、瞬きする程度の力で抹殺可能だ
「洞窟ってここか」
「それより、ここから見える景色は綺麗ね。もう少し見物していきましょ」
「私は構いませんが、駿が怒っているようですよ」
はやて姉はどこからのんびりしたセリフが出せるのか。
そこがまさに謎。
一刻も早く帰りたいってのに!!
「本当に綺麗・・・ん、あれ?あそこにいるのって轟騎じゃない?」
え?
んなバカなことが・・・。
「バカなことは起こるもんだ」
轟騎が平原で遠くを見渡していた。
その上、他の連中まで来ていやがる。
あれは・・・亮平、骸・・・つばさまで巻き込まれたのか・・・。
他の連中は多分これからも空気で過ごすだろう。
レギュラー以外の連中は出すのも面倒だ、と作者は語っているぞ。
そしてそもそもどんな性格か忘れてしまった上に、最初から読みなおすのもめんどくさいと言い張っている作者がいるぞ。
「バカな作者はシカトしておくか」
裏話はこれくらいにして、
「てめぇら、何でここにいんだよ」
「おお、やっと見つけたぜ。あれから大変だったんだ。お前の部屋を覗きに行ったら千秋さんとやっててな。んで急に光が発せられて気づいたらここにいたんだ」
イケメン率が高いこのメンバーで唯一の普通と思われる轟騎は語る。
つかこいつ見てやがったのか!?
「うん、千秋さんが意識が朦朧としている中で全然ビクともしないお前には正直驚いた」
そんなこと言わんでいいわ!
「それで、オレはこれから帰る予定だが。お前らはどうするんだ?」
「ん?俺はお前の無事を確認しに来ただけだから帰るよ」
「そうか・・・でも、どうやって帰るんだ?」
「そうだな、どうやって帰るんだ?」
・・・。
「帰り方しらねぇのかよ」
「当たり前だ」
「てかお前最近キャラ変わってきてないか?」
「・・・どうせ最終章だ!」
うわ、この人言いきった・・・。
「とりあえずオレたちは帰れる手がかりを虱潰しにしていく」
「んじゃ、俺達も便乗するか」
と、言うわけでRPGで言う、轟騎が仲間になりました的な展開が起きた。
「最初はどこ行くんだ?」
「そこの洞窟です」
轟騎の問いに、千秋は簡潔に答えた。
「案外近いんだな」
「近けりゃ近いほどいい」
「そうだな」
いつの間にか目を覚ましていた亮平と骸も一言ずつ発した。
多分、セリフの数が減るだろうから今のうちに稼いでいるんだな。
「・・・女性陣がいないぞ」
「つばさちゃんはいるけどな」
「他にも連れてきたのか、お前らは」
「うん、えっと・・・メイドさんと、未来人と、エセ関西人と・・・」
メイド・・・はるかか。
未来人・・・未来の梨瀬や翠香か?
エセ関西人・・・これは暁だな。
「他には刹那さんとかなんか鎖持ってる人」
「刹那はいるとは思っていたけど、まあ・・・だな」
何が「だな」だ。
自分で言っておいて自分で理解できず。
「そいつらも探さなきゃいけねぇのか・・・。しかたない、探すとするか。洞窟は後回しだ」
今帰ってもな、また来るのも面倒だ。
「召喚を行う。千秋、広い場所に魔方陣と三角形を描くのを手伝ってくれ」
「はい、分かりました」
数分後、比較的小さめの召喚陣が完成した。
オレは基本的に用意は簡単なものでいいのだが、ここは異世界。
何が起こるかはわからないので、一応正しいやり方で召喚を行う。
召喚に必要な短剣の代わりに刀を用いることにした。
ローブは残念ながらないため、使わずに行う。
聖水は魔術を使う時に必須なため、はやて姉が持っていた。
はやて姉の魔砲は直接は関係はないのだが、生命力に魔力も消費して魔砲を放つ奥義もあるそうで・・・。
なお、はやて姉には魔力はなく、他の人から供給しなければならない。
しかも消費する生命力も自分以外の生き物から奪うなど、自分は何も失わないという非常に都合がいい設定になっている。
オレが召喚するのは、今回は天使ではなく悪魔。
悪魔と言えば悪いイメージがある。
だが、実際にはそうではない。
天使だって悪魔よりも悪い天使もいる。
力を借りようとすれば、悪魔も力を貸してくれる。
それに、悪魔よりも天使の方が召喚が面倒なような気がする。
いつかは神の召喚も行ってみたいものだ。
そんなことをしたらいつか天罰が下るかもしれないが・・・。
まあ、そんな感じで召喚をしてみた。
「要求は?」
結構テキトーな悪魔だった。
「人探しを手伝え」
命令口調、これ重要。
悪魔には自分の方が絶対的に上だということを教えてやらねばならない。
だから重要。
悪魔に謝ったり、礼を言ったりも厳禁だ。
反逆するかもしれない。
そして悪魔の答え。
「どんな人間だ?」
案外普通。
すんなり聞き入れてくれるとはね。
「刀を装備した女、拳闘士の女、鎖使いの女、メイド服の魔術師の女、未来人の女・・・」
「ひとつ言わせてもらおう。刀を装備した女なんて山ほどいる」
なに!?
ここは軍事国家ではなかったのか!?
「拳闘士の女はこの近辺にひとりいる。顔の風貌は貴様に似ている」
恐らくそれが暁だろうな。
「メイド服の魔術師。これは案外簡単だ。この世界ではメイドは銃よりも剣・・・ましてや魔術など使うやつはメイドはおろか普通の人間にはいない。魔女狩りが行われているくらいだからな」
悪魔曰く、そうらしい。
オレはしらん。
「鎖使いの女。鎖使いなど聞いたこともないが、腰に沢山の鎖をぶら下げた女が先ほど気配を現した。貴様の後ろに」
ん?
後ろ?
「いててて・・・」
「いた」
時間軸はやはりずれているようだ。
「最後、未来人と言われても意味が分からない。刀を装備した女よりも情報が少なすぎる。ふざけんな」
文句言われたし。
「分かった。お前はこのままオレのそばに拘束しておく。当分はオレの指示に従え。刃向うようであれば、殺す」
「人間如きが・・・この三角形さえなければ!」
「ふふふ、オレを舐めてもらっては困る!」
オレは調子に乗っている悪魔を見ながらパチッと、指を鳴らした。
すると、オレの後ろには強大な天使が凄まじい気を漂わせながら現れた。
「・・・天使だと!?」
「悪いがエスナは天使としての地位は低くはない。悪いがエスナ、名乗ってくれ」
「エスナ。階級は熾天使だ。貴様のような弱小の悪魔など、瞬きする程度の力で抹殺可能だ」
実際そうです。
「それじゃ、絶対に従えよ。オレは熾天使なしでも貴様程度の弱小悪魔は捻り潰せるから、その点だけ要注意な」
オレは警告して、無理やり悪魔を従えた。