最終章第3話 グリフォンという生き物はどうやら超速いようです。この世界では
「何なんだ、明らかにあのミサイルこの村に飛んできてたぞ」
「もしや・・・あの若造、今頃になって狙ってきおったな」
誰だよ。
「うむ、仕方がない。若いの、これを持って行け。ワシからの餞別じゃ!」
ジーサンはあの槍を差し出してきた。
「でもこれは・・・」
「ワシはもう老いぼれていくだけじゃ。それよりだったら、お主が使った方が、その槍も喜ぶじゃろう」
・・・ジーサン。
「その代り、ワシの願いも聞いてくれないかの?」
願い?
なんだろう。
「ミサイル撃ってきたのは恐らく帝国の軍人じゃろう。街をさらに越えた先にある大きな国じゃ。そこを・・・叩き潰してくれんかの?」
・・・。
このジーサン滅茶苦茶根に持つタイプだわ、絶対。
「分かった。ありがとう」
「うむ、頼んだぞ」
よし、行こうか!
「千秋!行くぞ!」
「はい!」
・・・そう言えば歩けば千秋、疲れちゃうか・・・。
何か楽できそうな乗り物は・・・って、オレには最終手段があるじゃないか。
「大空に導かれし偉大なる翼よ!我にそれを預けたまえ!出でよ、グリフォン!!」
オレが召喚術っぽいものを唱えると、青く澄んだ空から大きなグリフォンが飛んできた。
召喚術はどの世界でも使えるんだな。
そして背に鞍、口に鞭までついているという何とも都合のいい設定だ。
「千秋、乗れる?」
「た、高くて私じゃ足が届きません」
千秋も足が長いんだけどな。
でもこのでかさじゃ流石に普通には乗れないか。
「オレに掴まって」
オレがそう言うと、千秋は恐る恐るオレの腕を掴んだ。
「跳ぶよ!」
オレは人間業とは思えないほどのジャンプをして、グリフォンの背に乗った。
重力が強くても思いっきり力を出せばこのくらいは力を出せる。
悪魔の力というものは恐ろしいですねぇ・・・。
「とっても大きいですね、この動物」
このグリフォンの大きさはインド象をも超える。
「前に乗って」
「え・・・駿が後ろに・・・乗るんですか?」
「ん、ああ。落ちそうになっても前からなら掴んでいられるし」
「へ、変なところ・・・触らないでくださいね。こんなところじゃ嫌です」
・・・。
なるほどね、それで少し嫌がる素振りを見せたわけだ。
「そんなことしないよ。さあ、飛ぶよ!」
オレが指示すると、グリフォンは大きな翼を大空に広げ、空の青に溶け込んだ。
「あの・・・駿」
「ん、どうした?」
「手・・・」
手?
「手がどうしたの?」
「お、お腹に触ってます!」
「・・・え?」
「は、離してください!・・・その・・・くすぐったいです」
「ああ・・・ごめん」
・・・。
手の置き場がない・・・。
鞭は千秋が掴んでるし・・・。
千秋が持ちたいって言うから・・・。
オレは手を離した。
次の瞬間だった。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
オレは落下した。
「痛ってぇ・・・グリフォンはまだ空か」
千秋は操作の仕方とか知らないからなぁ・・・。
仕方無い。
自力で登るか。
「鴻漸之翼じゃ威力が少ないか・・・なら、あれを使おう」
秘儀って奴ですよ。
「二‐十八代目二刀秘儀・飛竜乗雲!!」
勢いを増し、凄まじい速さで飛んでいく。
距離を縮めるのに非常に便利な秘儀。
案の定、一瞬でついた。
ここで思った。
一瞬で着く能力だったらエスナを使えばよかったんじゃ・・・?
「・・・」
「・・・」
「・・・すいません、私のせいで」
あれは事故だ。
グリフォンがあんなとんでもない速度で飛んでいるとは、思いもしない。
案外感じないものなんだな。
つかわざわざグリフォンに乗る必要もないような気がするんだが。
「あのさ、千秋」
「はい?」
「エスナに直接飛ばしてもらった方が早いんじゃない?」
「駿は空の旅がしたいものだとばかり思っていました」
気付いてたのか。
先に言ってくれよ・・・。
「楽な方選ぼうよ、ね」
「もしかして駿は気付かなかったのですか!?」
・・・凄く劣等感を感じました。
ああ、オレの頭脳は千秋よりもはるかに劣っているのですね、はい。
「そうときまればさっさと飛ぶか」
「折角ですから、このまま空の旅を楽しむのもいいと思いますよ?」
千秋はニコッと笑いながら言った。
なんだかんだ言って空を飛ぶのは気持ちがいいらしい。
「飛行機と違ってよく見えますから」
「景色が?」
「はい!」
とても楽しそうだ。
「それじゃあ、このまま向かおうか」
オレ達の空の旅は、まだまだ続く。
と、思いきや、すぐに着いた。
どうやら本当にとんでもない速度で飛んでいたらしい。
「ここが王国か」
「えっと、確か軍を滅ぼすのが駿の役目でしたよね」
「んー、そうじゃない?」
どうでもいいや。
さっさと潰して帰り道でも探そうか。