番外編:バレンタイン企画。チョコレートより甘い甘い私を・・・いかかですか?
遅れた事情は後書きで。
2月14日。
これは男たちが女性からのチョコレートを必死に待つ日だ。
今年は逆チョコとか騒がれているが、気にしない。
一条財閥御曹司・一条錬磨もその一人である。
彼は毎年、その非常に整った顔立ちで無駄にチョコレートを集めて轟騎たちに見せびらかす。
そして毎年轟騎たちに殴られる。
だが、錬磨はMだから問題ない。
駿ははやてから毎年貰っていたので特に関係ない。
今回はそんな奴らはほっといて、駿のバレンタインデーの話をしましょう。
「2月14日・・・か」
これはオレにとって非常に辛い日である。
オレはチョコレートが嫌いなのだ。
だいたい原材料のカカオって確かスパイスの一種だろう?
んなことどうでもいいか。
そして確実に千秋からもらうことは確定している。
「はやて姉から確実にもらう上にさらに加算されるとは・・・しかもはやて姉は食わないと怒るし」
マジでチョコレートはダメなんだ。
あの無駄にしつこい甘さ、そしてそこに隠れる苦さ。
纏わりつくように残り続けるあの味は、さっぱりした甘さが好きなオレには向かない。
オレは和菓子派だ。
洋食派だが、和菓子派だ。
羊羹とかのほうが好きだ。
千秋にこのことは話していない。
しかもはやて姉は知っててチョコレートを寄こしてくる。
「今年も死んだな、こりゃ」
なお、ホワイトチョコなら多少はマシだが、それでも無理。
生チョコ?
何それ?
とにかくオレはチョコが大嫌いなのである。
さあ、どうやって攻略しようか。
オレがチョコ嫌いなのははやて姉を除いて轟騎しか知らないし。
「この日をどうやって乗り越えようか」
「駿、おはようございます」
考えているうちに廊下で千秋に出会った。
ちなみに現在地は片瀬家本家。
千秋はオレの家に泊まりに来ている。
家にはオレと千秋しかいない。
確実にやられる。
「今日時間はありますか?」
「・・・まあ、ある」
「よろしければ・・・その・・・デ、デートしませんかっ!?」
少し恥ずかしそうに言う姿が初々しい。
「いいよ」
「はい!どこに行きましょうか?」
千秋の笑顔が輝かしい。
その笑顔がもっと見たくてオレはある場所を選んだ。
「海に行こうか」
千秋は海が好きである。
オレと初めて出会った場所も海だった。
千秋が都会での暮らしに飽き、一度も見たことのない海を見に来た時にオレと出会った。
その海だ。
千秋の願いにより、海だけは昔のまま。
全く変わっていない。
「少し寒いな」
オレはそっと千秋を抱き寄せる。
・・・オレコート着てないじゃん!
まったく、ここは雪が降る地域だってのに・・・。
今は降ってないけど。
「私は暖かいですわよ。駿がそばにいてくれるから」
「思ってくれてるだけ嬉しいよ」
綺麗な海。
昔は何とも思わなかったのに。
今はこんなにも綺麗に見える。
バレンタインデーと言うことも忘れるようだ。
・・・バレンタイン?
「・・・・・・すっかり忘れていた」
オレは青ざめた。
「どうしたのですか?顔色悪いですわよ?」
千秋がそっとオレの顔に手を当てる。
「な、なんでもない。大丈夫」
オレは精一杯笑った。
つもり。
どうせバレンタインにチョコを贈るなんて製菓会社の策略だ。
販売促進のための策略だ!
「海・・・綺麗ですね」
「・・・」
もう言葉も出ない。
「駿、具合が悪いなら帰りますけど・・・」
「いや、ただの気持ちの問題さ・・・そう、気持ちの・・・」
「やっぱりダメですわ!ちゃんと帰りましょう!」
千秋はオレを車に乗せた。
てか、運転してきたのオレなんだけど・・・。
「千秋運転できんの?」
「はい!大丈夫です!小さい頃から習って来ました!」
そして千秋はアクセルを踏む。
・・・ちょ、ちょ、ちょっと、待て!?
なんだこの運転は!?
お前・・・この車チューンすれば首都高で戦えるぞ!?
まさに天才少女。
スポーツも天才的、学問も天才的、そして運転も天才的。
まさに理想の少女。
千秋の素晴らしさを再び思い知ったオレであった。
その夜、オレはベッドで寝た。
普通に寝た。
何事もなく寝た。
千秋と一緒に。
翌日
「2月15日」
オレはベッドの中で呟いた。
「どうしたのですか?」
「いや、昨日はバレンタインなのにチョコはくれないんだなぁ、と」
それを聞いて千秋は忘れてたかのように言う。
「す、すいません!すっかり忘れていました!」
よかった・・・。
「今から作りますね!」
千秋は即座に下着姿になると、箪笥を開いた。
そして凄い速さで服を纏っていく。
「ちょっと待て」
「は、はい?」
半裸状態の千秋を呼び止めるのは少し気が引けたが、一応かけた。
「あの・・・作らなくていいよ」
「ダメです!好きな人に贈るのに私は忘れたんですから!」
「実はオレチョコレート嫌いなんだよ」
千秋は驚いたような顔をした。
「そんな人もいるのですね・・・」
「だからバレンタインのチョコの代わりに・・・」
「ん・・・」
オレはチョコの代わりに千秋の唇を頂いた。
強引に。
「オレはこっちの方が欲しかったよ」
千秋の顔は真っ赤だ。
千秋は俯き、
「・・・別にディープでもよかったのに」
と、残念そうに言った。
そう言えばディープはしたことあんまりないなぁ。
「ディープにするか?」
「は、恥ずかしいので止めてください!そう言うことは朝からは・・・刺激が強すぎます」
千秋はそう言ってさっさと朝食を作りに行ってしまった。
それがオレと千秋のチョコレートよりも甘い一日が始まりだった。
本当は一昨日投稿する予定でしたが、見事に「RAGING BATTLE」との発売日がかぶってしまい、土日はでゅ↑エルして勝手にサティスファクションしてました。
見事に勝手な言い訳ですね、すいません。