第10章第4話 やはり不遇な扱いの錬磨であった。誰も気にしないけど
「この下にあったはず・・・あ、見えてきた」
錬磨の魔術で結構普通に海底にやってきた。
なお、原理は分からない。
興味もない。
錬磨に聞いたら面倒なことになりそうだったので、興味がわかなかった。
「っと、ここか・・・」
「なんかすげー技術があるな」
まあ、自動ドア。
しかもおよそ五千年は海底に沈んでいたであろうと思われるここで。
まったく錆ついていない上に、まだ使える。
多分現代の自動ドアより性能がいい。
「古代の文明ってすげーな」
<当り前だろう。人間が頂点に立つ時代は2度訪れているからな>
大賢者さん、あなたいつの人間ですか?
<我は人間の誕生の時と絶滅の時を目にしてきた。ルインの魔力を使って>
「どうでもいいけどな」
さあ、入ろうか。
暑いな・・・海底なのに・・・。
「暑い・・・」
骸もか・・・。
上着脱いだしな、それが妥当だな。
オレもコートを脱ぐか。
海底だしもう秋だし日本海だし・・・って理由できてきたけど・・・。
「ふう」
他のみんなも上着を脱いだようだ・・・なあああああああああああああ!!!!!!
「その恰好はなんだ!!」
「ん?ワイシャツだが、問題あったか?」
「いや刹那さん、その・・・あの・・・なんといいますか・・・汗のおかげで透けてますよ?」
「・・・!?バ、バカ野郎!見るな!」
じゃあそんな恰好するなよ・・・。
「良いもの見せてもらった、眼福眼福」
骸ぉ!!
てめぇ、人様の妹(一応)になにそんな目を向けてんだ!?
「見るなっていてるだろ!!」
骸は刹那に鞘で強打された。
非常に痛がっていたが自業自得だと思う。
「ワイシャツは大人びた少女をより引き立てる能力を持つ」
錬磨がなんか語ってるけど・・・シカトするのが賢明だ。
「ったく、暑い暑い」
「この施設は快適な温度にさせていただいています」
「あ?どうした、ルイン」
「この看板に書かれていることを読んだだけです」
えっと、どれどれ。
・・・何これ?
読めねぇ・・・。
何語?
英語でもないし、アラビア語でもないし、中国語でもハングルでもない。
勿論、日本語でもない。
「これ何語?」
「超古生代インストレアルフェクトマシアルサティラフィスブルテリア語です」
「どこの言語だよ!?」
「んなことどうでもいいから先に進もうぜ」
「てめぇは黙ってろ!」
「・・・」
やはり不遇な扱いの錬磨であった。
こんな感じでインストレ・・・何とか語について無駄に10分話し合った。
「まるで生き物がいないな・・・ここには生活していけるだけの環境と食糧、そして空気・・・それも植物も存在してるはずなのに」
亮平が呟いた。
「確かにそうだな・・・人気が全くない」
分かってると思うけど人気は「にんき」じゃなくて「ひとけ」だぞ?
ちなみに以前錬磨にこれと似たような会話がある文章を読ませたら「にんき」と呼んでいて轟騎と爆笑した記憶がある。
「人間はこんな場所じゃ生きていけないぜ?普通に考えな。この水圧で人間が生きていられるわけがない」
フレアがもっともらしい答えを寄こした。
「あ、それもそうか」
骸も納得の声をあげる。
「気付かねぇ方がおかしい。ストリートチルドレンのおれだって知ってるくらいだ」
「・・・何で知ってんの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・海に潜ったときに死にかけたから・・・・・・・・」
どんだけ深く潜ってんだよ!?
よく息持つな!
「ここにいられるのは俺のおかげなんだぜ?みんな、感謝しろよ!」
「よし、先行こうか」
「そうしよう」
当然の如く、全員シカトであった。
更に奥に進むと、何やら立派な部屋に出た。
その瞬間、警報が鳴った。
『警告!警告!謁見の間に侵入者、直ちに始末せよ!』
・・・え?
<私に任せろ>
リリィの声が聞こえた。
「ちょっと、まて、何考えてんだ!?うわあああああああああああ」
意識が飛んだ。
結構普通に飛んだ。
てか意識を奪われた・・・リリィに。
<亮平視点>
片瀬が倒れた。
結構普通に倒れた。
そしてすぐに起き上がった。
「片瀬、どうした?」
「気にするでない」
え、逝ったか!?
口調がおかしくなってるぞ!?
「おい、てめぇ何もんだ?片瀬じゃねぇだろ!?」
「おいおい、委員長さんよ。駿が駿じゃない訳ないだろう!?」
「いや、こいつは片瀬じゃない。さっきまでは片瀬だった。だが、奴の気配が感じられない。まるで別人だ」
絶対違う。
片瀬がこちらを振り向く。
「なっ!?」
「はぁ!?」
「・・・やはり」
「・・・ふう」
片瀬の眼は燃えるような深紅の色に染まっていた。
「刹那と骸は驚いているようだが・・・それよりいいのか?護衛ロボがこちらに来たが」
・・・こいつらの始末が先か。
「今のお前は誰だかしらねぇが、片瀬ではないことは確かだ。こいつらを片付けたら話を聞かせてもらおうか!」
銃を構える。
問題ない、10秒で片が付く。
そう思った瞬間―――
「なっ!?」
「我、汝らに次ぐ。最終王女リリィの帰還だ!貴様ら退け!」
『イエス、マイロード』
うわ、ギアスまがいのセリフはいて去ったよ!?
何しに来たの!?
「すまなかった。駿にここに来るように仕向けたのは私だ。ここの王女、リリィだ。深紅の瞳は敵全てに畏怖の念を覚えさせるほどの将軍でもあった。王女自ら戦に出向くとはと何度父上に叱られた事やら・・・」
「で、何故貴様が片瀬に宿っている?」
「運命という名の必然か・・・彼は持っているからな・・・私が一生かけて作り上げたものを・・・既に」
「どういう意味だ・・・」
深紅に染まっていた瞳はやがて太陽のような輝きを失い、別の輝きに戻った。
「・・・なあ、亮平・・・どういう意味だ?」
「俺にも分からねぇよ・・・」
面白い。
片瀬にはもっと興味が出てきた。