第10章第1話 あんまり変わってない未来と重要な情報
「千秋、ここだ」
あれからどのくらい経ったのだろうか。
そして、未来はどのように変わっているのであろうか。
風景は変わっていないことから、大きな変化はないようだ。
「椎名学院に向かおう、そこなら翠香がいるはずだ」
「翠香・・・私が新しい娘ができたらつけようと思っていた名です・・・」
この言葉から、何か運命というものを感じた。
そして椎名学院
「パパ!迎えに来てくれたんだね!」
こ、この声は・・・。
「ああ、梨瀬の頼みとなれば何でもするさ」
この悪魔のような力を悪用しないことを祈ろうか。
未来の片瀬駿!!
「おい、オレ」
「おや、若き日のオレか。久し振りだね」
おいおい、一人称が変わってるぞ?
未来を変えたからか?
「そこにいるのは・・・千秋かな?」
「そうだ。オレが未来を変えたはずだったが、何故梨瀬は以前のようなファザコンなんだ?」
ここ、マジ疑問。
千秋と住んでりゃ、「パパ」なんて呼ばせないだろ?
「ああ、それか。そう簡単に未来は変わらんよ。梨瀬は一時期一緒に住んでたけどメイドとかに世話されるのを嫌がって。だからオレが世話してるってわけよ」
はいはい、そうですか。
これが運命。
「運命・・・面倒なもんだな」
オレがボソリと呟くと、未来のオレはなんか言いだした。
「あ、ちなみに運命は英語で結構種類あるぞ?」
「どうでもいいから。つか、聞いてないから。FateとDestinyと・・・他なんだ?」
答えた自分がバカらしい。
「Doom、Fortune・・・ってとこかな?」
マジどうでもいいわ・・・。
ちょっとした雑学だけどね。
「ああ、そうだ。翠香に会いたいんだが」
「翠香なら今日は首相と会談が入っていたはず」
「梨瀬は?」
「梨瀬は今は片瀬梨瀬。片瀬家の長女って設定になってる」
「じゃあ翠香は椎名家の長女ってことか・・・」
未来ってホント変わんねぇな。
根本的なところは。
「とりあえず、彼女が梨瀬だ」
「かわいいです・・・それにいい子に育ったようで」
ええええええええええ!?
ファザコンなのに!?
「え、マジ?」
「ええ、駿を慕っていていい子です」
いやファザコンだろ!?
ニコッと笑うな!?
こっちが反応に困るから!
二人で騒いでると、何やら本格的に周りが騒ぎだした。
オレたちそんなに迷惑かけたか?
「お、あれは・・・」
「なんだ?」
「ああ、この騒ぎはあいつだよ。最近熱狂的ファンを集めている若手のボーカリストさ。十五歳であの歌唱力。音を扱うのがかなり上手い。通称・音の貴公子」
・・・ああ、あいつがその・・・そいつか。
やべぇ、マジイケメンじゃん!
「で、なんていうんだ?」
「ああ、あれはオレの甥っ子ってことになってる片瀬騏だ」
甥っ子かよ。
ん?
「甥っ子ってことになってるってどういうことだ?」
「ん?ああ、戸籍上は甥っ子。実はオレの息子」
は?
「あいつ、はやて姉の子なんだよ。オレが夜に襲われた時に・・・これ以上は言わなくても分かるな?」
はい、状況は理解できましたよ、このクズ野郎。
オレだけどな・・・。
てかクリスマス企画のことが実現してる・・・。
作者の野郎、これを知ってて・・・。
「はやて姉はオレがどんなに凶悪な力を得てからも魔砲を駆使してオレを撃墜してきたよ。はやて姉には勝てないよ、一生」
・・・悪魔を超えた女、片瀬はやて・・・おそろしや。
「オレだってお前のような力があれば・・・って、やられたのは昔の強大な力を持っていた時だったけど・・・」
「・・・お前、力を失ったのか?」
「ああ。妖刀もろとも全て消えた。力は封じ込められているだけだけど、妖刀は・・・」
なんか深刻そうだ。
「詳しく説明してくれ」
それからいろいろ説明を聞いたが、どうやら未来のオレは力を封印されているらしい。
約10年前・・・現代から行けば7、8年後にオレが千秋の命と引き換えに出した選択だった。
その時に妖刀も全て奪われたそうだ。
妖刀を奪った連中の居所も分からず、未来のオレはもはや諦めモードである。
「ああ、そうだ。封印される瞬間、リリィと大賢者が言っていたことがある」
リリィと大賢者のありがたいお言葉か。
期待できそうだ。
「まずはリリィから。日本海海底に沈んだ青銅の島を探せ・・・と」
青銅の島?
人工なのか?
「それと大賢者。妖刀は、お前の気で全ての力を引き出すことができよう・・・と言っていた」
大賢者・・・もうちょい詳しく聞かせてほしかった。
・・・あ、オレの大賢者に聞けばいいのか。
「大賢者様、ちょっと質問」
<今は眠い、話しかけるな>
睡眠中かよ。