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片瀬の日々  作者: STORM
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第9章最終話 悲劇のヒロイン、最後の舞台は名もなき崖の上

ここは・・・崖?

あそこにいるのは・・・千秋。



「千秋!!」

「・・・駿」

千秋がこちらを振り向いた。


・・・!?

以前のような美しさが感じられない・・・。

美しいと言えば美しいが。

何か・・・気力を失っているような顔をしている。

全てを失ったかのような目。

そこにはまるで光はない。


「私はあなたに捨てられました。あなたに捨てられたら、これから私には生きる意味がありません」

涙が一粒、地面に吸い込まれた。

「千秋・・・まさか!?」

「私の人生はここで終わりです。あなたは幸せになってください・・・」

オレに捨てられたと勘違いしやがって・・・。


「仕方がない」

オレはルインを抜いた。

ハヤブサたち以上に信頼できる妖刀。

それは彼女しかいないと思ったからだ。


「お前が死ぬのならば、オレもここで自らの命を絶つ」

「構いません」


え?

おい、そこは止めろよ?

止めるべきだろう?

なあ、そうだろう?

自分で言っててウザくなってきた・・・。


「あなたは自ら命を絶つような人ではありませんから」

千秋は崖の先に足を進めた。

目に、戸惑いは感じられない。

本気で死ぬ気だ。

未来が変わってしまう・・・既に変えてるけど。

「私に、ついてこないでください」

「・・・バカが」




「駿・・・さようなら」


千秋は意を決して空を舞った。

その軌跡に涙と言う悲しみを残して。

それを目にした瞬間、オレは走っていた。


あいつは、本当は死にたくはない。

だけど、オレが他の女と一緒にいるところを見るよりは死んだ方がマシだと考えたのだろう。


オレは良い嫁を貰ったよ。

そしてオレは悪い男だ。


そう思いつつ、オレも崖から飛び降りた。

もちろん、助かる見込みを考えてのことだ。









「バカ!悲劇のヒロイン気取ってんじゃねぇ!!」

「離してください!私は、私は・・・」

だが、千秋の涙は止まらない。

オレは落下していく千秋を抱きしめると、妖槍リアを手に構えた。


「四代目一槍奥義・阿修羅道!!」


強くそれを倒したい、そう願うことで強さを増す。

それが、修羅の道。三代目は剣を得意としていたが、剣を失いその時に使った槍では力不足と悟った時、彼はこの技を編み出した。気だけではどうにもできない奥義。


「海を、割る!!」


その願望が、オレの気を最大限に引き出す。

そして、オレはリアを海底に投げつける。


実際、割ろうとしていたのは海ではない。

オレが割ろうとしたのは、


千秋が張った結界。





結界は魔力だけで構成されたものを全て断絶する。

その魔力が強かろうが弱かろうがな。

だから、リアも槍の形態ではなければここには入れない。

ゲイボルグになっても、結局は魔力で構成された魔槍だから、入れない。


これが割れれば、



オレ達は助かる。






「エスナァァァ!!」




エスナがオレたちを受け止めた。

リアは自力で帰ってこれるしな。



なお、オレはマジで海を割った。

二十分ほどで海は元に戻った。









そして再び崖の上。


「何やってんだよ」

「私はもうあなたに・・・捨てられて・・・。結局求められていたのは体だけでしたのに・・・。私は・・・それでもあなたを憎めなかった・・・」

「オレはお前が嫌いになったわけじゃない。悪いのはオレの方だ。殴るならいくらでも殴ってくれ。殺してくれても構わない。それだけしてもお前の心の傷に比べたらオレの命なんて・・・」

「そんなことはないです。私はあなたの心の支えになれなかった。私はあなたに抱かれることで愛してもらえていると錯覚していた」

「オレは本当にお前を愛している。オレの心が弱かったんだ」

「私はあなたに私だけを見てもらえなかった・・・だから・・・もう死なせてくれればよかったのに」

「・・・死にたくなかったくせに・・・帰るぞ。お前には帰る場所がある。梨瀬を置いて旅立たれちゃオレは困るんだよ」

それにまだ翠香、月読、琉那が生まれてないしな。

オレはあいつらにまた会いたい。

そして、ずっと千秋と一緒にいたい。

翠香との約束を果たしていない。

千秋とずっと生きていたい。

仮に不死になっても千秋と一緒なら幾年もの月日を越えて行ける。



「千秋、さあいくぞ。お前には見せたい場所があるんだ」


オレは手を差し伸べた。


「どこですか?」

「未来、と言えばいいか?」

千秋は驚いたような顔をした。

だが、すぐに落ち着きを取り戻した。

「オレが行方不明になっていた半年、そしてこの間の数か月は、別の時空にいた。半年間は未来。数か月は過去。そこで出会ったオレたちの娘をお前に会わせたい」

「わかりました。ですが」

ん?

「どうやって行くのですか?」

なんだ、そんなことか。

オレに任せておけ。

「オレは時を越える妖刀を所持している。だから問題ない」

と思う。


「そうですか。未来の娘、梨瀬がどのような娘になっているか、興味もあります」

「死ぬかどうかは、それを見てからにしてくれ」


今度こそ賭けだ。

これで千秋が心を動かされないなら・・・見捨てるしかない。

あれを見て心を動かされない千秋など、千秋ではない。

つまり、オレが愛した人間ではないと言うことだ。


どうやら水曜日に更新するのを忘れていたようです。

申し訳ありません。

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