第9章第9話 新たな守護神・闇熾天使エスナ、降臨
「あ、駿くんだ!」
オレは本社に戻ってきた。
非常に気まずかったので、逃げてきた。
一応護衛にリアをつけておいたが・・・。
そして、つばさが迎えてくれた。
・・・今一番会いたくねぇのに・・・。
「あれ、どうしたの?」
「ああ、その・・・何でもねぇ」
「何でもなくないよ!何でそんな悲しそうな顔するの?」
「だから何でもないって」
オレはつばさを押しのけて廊下を進んだ。
「千秋さんと喧嘩したんでしょ」
その声を耳が拾ったとき、無意識に足が止まった。
「私のせいでしょ、私が・・・私が千秋さんから駿くんをとっちゃおうと思ってたから・・・」
「お前のせいじゃない。オレのせいだから」
このままだと未来が変わっちまうかも知れないな・・・。
約束を果たせなくなっちまう。
翠香が料理をできるように育てるという約束を。
そもそも翠香すら存在しなくなってしまう。
「あ、つばさ、ちょっと良いか?」
オレはつばさの耳元である事を囁いた。
「・・・えっ!?無理だよ!?わ、私が駿くんの・・・赤ちゃんなんて・・・えっと、今から子作りするの?」
「誰もそんなこと言ってねぇよ!?千秋とだよ!オレは未来に行ったことがあるんだよ。んで、この状態が続けばそこであったオレの娘が生まれなくなってしまうことになるんだよ!」
この状況の打開策を訪ねようとしたら、何勘違いしてんだよ。
「でも・・・どうするの?」
「・・・犯す?」
「犯罪だよ?」
分かってるよ・・・。
だからそんな顔しないでよ。
何その憐れむような目は?
「さっきのなしで」
これ以上言ったらややこしいことになるわ。
それにあの目はキツイ。
精神的に辛くなってきた。
「それで、何でこうなってんですか?」
「え?子作りするんでしょ?」
何時そうなった?
「だってさっきから獲物を狙うような目してるじゃん」
オレそんな目してたのか!?
「あ、千秋さんに電話してみる?」
「ん、ああ。そうしようか」
オレは電話をかけた。
「千秋、あの、ごめん。悪かった・・・だから」
<あなたを許しません>
「ちょ、おい、待てよ!!・・・切れたし・・・」
やられた・・・。
「多分まだ心が落ち着いてないんだと思うよ?」
そうだといいんだが・・・。
あの怒りようは酷かった。
オレは許してもらえるのだろうか。
「オレ、千秋を連れてもう一度未来に行ってみようと思う」
「未来なんてこわいよう・・・私行きたくない・・・」
「誰もお前をつれて行くなんて言ってないぞ?」
なんかさっきから勝手な妄想に走りすぎだ。
オレがいない間に何があったのやら。
「日本に戻るが、お前も来るか?」
「あ、お父さんたちに元気な姿を見せないとね」
日本はあまり被害を受けてなかったから両親ともども元気だと思うけどな。
ま、そうと決まれば日本に戻るとするか。
「・・・リアを置いてきちまった・・・。来るときは送ってもらえたけど、戻る時まで考えていなかった・・・」
「飛行機で戻る?」
「いや、ここで新たな召喚の儀式を行う」
もしよければリア以上の天使を召喚したい。
「大いなる翼を纏いし天界の王、我にその力を与え、契約を結ばん!!」
リアは既にダークヴァルキュリアではない。
それ以前に、天使ですらない。
もう、あいつは妖槍。
彼女は天使の名誉を捨てる代わりに死を免れた。
てか、オレがそうした。
オレの欲望のためだけに。
あいつとは別れたくなかった。
あいつがいなければいろいろ不便だっただろうし。
何よりもあいつが死ぬところなんて見たくはなかった。
リアには本当に感謝している。
だけど、オレには新たな契約を結ぶ。
「そなたが、余を呼んだのか?」
な、すげぇ魔力・・・。
「ああ、片瀬駿だ。召喚魔術を保持している」
「召喚魔力を持つ者でなければ余を呼ぶことは非常に困難であるからな。余はダーク・セラフィムのエスナ。セラフィムは熾天使のことを指す」
正直今でも困難なんすけど・・・。
エスナの話によると、熾天使・セラフィムはオレが知っていた天使のレベルをはるかに超越するレベルの天使であるらしい。
天使系の召喚獣は、このようになっていたことが明らかになった。
下位天使系十数種 < 天使エンジェル < 戦女神ヴァルキュリア < 大天使アークエンジェル < 権天使プリンシパティ < 能天使パワー < 力天使ヴァーチャー < 主天使ドミニオン < 座天使スローンズ < 智天使ケルビム < 熾天使セラフィム
なお、ダーク化した種族は、元の種族よりワンランク高い種族と同等もしくはそれ以上の力を持つ。
まさか今まで最強だと思われてた大天使がこんなに低いランクだったとは。
本当に驚きだ。
そして、オレが呼んだエスナは最上級のセラフィムのダーク。
まさに最強を誇る。
魔力もリアとはケタ違いだ。
みているだけで全然違うからな。
「余の力を持ってすれば、この世の理から外れたことも行うことができよう。望みは?」
「お前とオレで契約を結ぶ。リアは槍に・・・ゲイボルグに宿してしまったからな」
そう言えば、ゲイボルグにさらに薙刀を宿した。
常に力を放出し続けるゲイボルグより、力を抑えることのできる普通の薙刀の方がリアも楽だろうと思ったからな。
「リアの契約者はそなたであったか。余は彼女を昔から注目していた。リアは元々ダークヴァルキュリアでありながら、プリンシパティをも討つ戦乙女であった。彼女が契約してからは一層強さを増していき、ヴァーチャーをも討ち取るほどの戦乙女となった。彼女が妖槍になったとは・・・そなた、何故そのようなことを?」
「それは・・・リアが、殺されそうになったから」
その瞬間、エスナの目つきが変わった。
「彼女が・・・か。相手はドミニオンクラスの天使か?」
「いや、ただの人間だよ。使っていた鎖が・・・何か変わった紋様がついていたが・・・」
「紋様?まさか・・・そんなはずはない」
若干、エスナの言葉が気になったが、エスナはすぐさま話を変えた。
「リアの契約者ならば、余もそなたと契約を交わそう」
「ああ、ありがとう。それでは行くぞ。
我が契約の名のもとに、熾天使・セラフィム、光と同時に闇の象徴を保持しその天の王よ、今、我に忠誠を誓え、その名はエスナ、我が名は駿」
なお、この契約の呪文は適当だ。
それっぽい契約の言葉を述べれば契約されるという何とも都合のいい世界だ。
つか、相手がそれを認識すればいいだけだから・・・所詮かたちだけだ。
「契約を承諾した。余は今よりそなたの剣となり、盾となる。その剣は聖剣より鋭く、その盾は聖楯よりも堅いものとなろうぞ」
実際に剣や盾になるわけではないだろうが、それだけの力を得たということを教えたいのだろう。
ちなみにエクスカリバーは持ってるけどね。
ハヤブサと言う形で。
天使のランクは天使九階級にヴァルキュリアを突っ込んだだけです。