第9章第7話 世界には貧しい人だっている。故に募金は重要だ
オレの中には現在三つの魂が覚醒している。
第一に、オレの魂。
第二に、リリィの魂。
そして第三に・・・。
「我は妖剣の大賢者。貴様にはそれだけで十分だ」
そう、第三の魂はルインたちの創造主、妖剣の大賢者様だ。
「妖刀を振るうのは久し振りだ。貴様を地の果てに叩き落としてやるわ!」
現在、オレと彼の魂はリンクしている。
オレの意識を保ったまま彼に身を委ねることができる。
彼がどうして世に妖刀を散りばめたのかは謎だが、彼もまた剣士であったことは間違いない。
「主人格、貴様の奥義を貸してもらおう!三代目一槍奥義・炉火純青!」
槍が燃え盛り、そしてそれを構える。炉火純青は技としての奥義ではない。強化型の奥義だ。その矛先に炎を宿す。
「急に雰囲気が変わったと思ったら・・・その槍はおれには通用しねぇ!おれの鎖の餌食となれ!」
鎖の先端には何か凶器になる棘みたいなものが付いている。
それが赤黒く染まっていることから、こいつは数多くの人間の命を奪い去ってきたと見ることができる。
突如飛び交ってきた鎖にゲイボルグが絡めとられる。
賢者はそれを表情を全く変えずに見ている。
「その程度か?」
賢者の眼(オレの目)が一瞬赤く光る。
次の瞬間、ゲイボルグは自由の身に、鎖は八つ裂きにされていた。
あんな芸当はオレには・・・できねぇ・・・。
槍をまるで剣のような速さで振ることなんて・・・不可能だ。
「この体、気にいった。元の体よりも使い勝手がいい」
そりゃいろいろ入ってるからな。
そん所そこらの人間とは違う。
「な、何故おれの鎖が!?」
「命乞いをするなら今のうちだ。さあ、どうするか。生憎だが我はあいつほど生易しくはない。この機会を逃すのであれば、女だろうが子供だろうが殺す」
ゲイボルグが獲物を捕らえた蛇の目のような煌めきを見せ、命を奪う体制を整える。
「な、なんて野郎だ・・・強さが・・・裁きの龍並に壊れてる!?」
よく裁きの龍なんて知ってるな。
あれは本当におかしいね。
あの召喚条件であの効果。
本当に壊れてるわ。
「・・・分かった、降参するよ。おれもまだ死にたくねぇし」
「そうか・・・っと、で、お前は何で千秋を襲ったんだ?」
そうか・・・のあとに魂が入れ替わったことには気づいただろうけど、一応言っておく。
「おれはいつも供を連れて歩いていたこいつを見るのが嫌だった。それで、おれに情けをかけた。それだけだ。おれの逆恨みって奴だよ」
逆恨みはよくあることだ。
オレも被害にあったことはあるし。
本当に逆恨みって奴は頭に来る。
「まあいいか。お前、なかなか強いな。どうだ、オレのとこで働かないか?やってることは、さっきみたいなことだ。世界中にはどの国にも上に立つ者は狙われる。その状況によってそいつらを殺す・・・あまりよくはないことだけど・・・それでもオレはこの仕事をやっている」
「・・・おれに仕事をくれるのか?」
「それ以外に何を言ってる?」
少女は涙を零した。
「おれの国なんて・・・今までおれみたいな人間に見向きもしなかったんだ・・・。その上、仕事すら与えてくれない・・・。おれは残飯を漁る毎日だったんだ・・・。おれに仕事をくれるなんて・・・ホントにありがとう・・・」
改めて、地球の現状を思い知ったオレであった。
地球上からこんな悲しい思いをする子供が消えればいい。
全ての子供が必要最低限の生活が必須だ・・・。
と言うわけで、オレはユニセフに募金することを決めた。
人の命を奪って人の命を救うのもなんだけどな。
「じゃあ、改めて自己紹介をしようか。お前はオレの社員だからな。オレは片瀬駿。暗殺業者の社長を任されている。死んだはずの元社長が生きていたが、あいつはあてにならないというわけで今も続いている。武器は日本刀・片手剣・両手剣・槍・偃月刀・ハルバートなど、基本的に近中距離の武器なら使うことはできる。使えないのはナックルとか、遠距離武器だな」
生憎、銃は上手く使えないんで。
なお、亮平はハンドガン×2、骸はグレネードランチャーを愛用している。
はやて姉は魔砲と言う未知の銃火器を使用します。
本人曰く、禁術の一種らしい。
「おれは・・・名前を覚えてねぇんだ。物心ついた時には既に親はいねぇし。だから、あんたがつけてくれよ、おれの名前」
「つってもな・・・。千秋、なんか無いか?」
「私はこの子の国の名前はさっぱりなので・・・」
案外名前考えるの大変だな・・・。
「・・・仕方無い、オレのネトゲの武器の名前を付けるか」
「適当過ぎませんか?」
いや、問題ない。
ネトゲって案外いい名前があるんだよな。
「フレア。太陽で起こる爆発の意だ。今のお前には太陽が必要なはずだ。まあ、ちょっとひねってるが」
「フレアか・・・気にいった」
よかったな。
それにしてもフレア・・・随分強かったな。
あのゲイボルグをあの速さで投げるとは・・・リアでも無理だ・・・。
「な、リア」
「そうだな、主。わらわでもあれは流石に無理がある」
リアはゲイボルグに宿った。
だから、これからもずっと、オレと共に生きてくれる。
「お前は最高の友だよ」
「わらわを現世に呼び出した責任、取ってもらうまで帰らないからな」
勿論さ。