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片瀬の日々  作者: STORM
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第9章第6話 生き物は一定の状況下で弱くなる。それは最低3つあるはずだ

オレは千秋の部屋に戻った。

「駿、無事だったのですね!」

「当然、オレがやられるわけがないだろう?」

自信過剰過ぎるのもちょっとあれだけどな。

今のオレは何にも負ける気がしない。


「もう、夜も遅いです。疲れたでしょう。休みましょう?」

「風呂に入ってからな」

「そうでしたね」

風呂に入らないと次の日が嫌になるんだよな。

なんか・・・変な感覚で。


「お風呂なら既に沸いていますわ」

気が利くな。

流石オレの嫁。

もはや彼女ではない、嫁だ!


「さ、一緒に入りますわよ?」

・・・え?










千秋がやたらとくっついてくる・・・。

いや、嬉しいよ?

嬉しいんだけど・・・。


どこまでも白く、天使の様な身体がオレの脳を刺激して、全身が大変なことになっております。

胸が当たってますよ、千秋さん!

しかも直に!


「ちょ、ちょっと大胆過ぎないか!?」

「駿は私の身体に飽きてしまわれたのですか?」

いや、レベルが高すぎる・・・。

レベルが高すぎてオレには勿体ねぇ・・・と感じてきた。

「ほら、駿。口で仰っても体の方は正じk「それは言ってはならない設定だろう!?」

あくまでこれは18禁ではない・・・はず・・・。


「駿は・・・私の腕の中から離れて行っています。私、それが本当に悲しい。どうして私だけを見てくれないのですか!」


そうか・・・こんなにくっついているのは・・・。


「オレは千秋だけを見ている暇はない!オレには!まだ手にすべきものがあるんだ!」


「あなたの言っていることが理解できません!他に何を手にするというのですか!?あなたは十分強い、十分財力もある、そしてあなたには愛すべき人々も!何一つ生きるのに不自由がないあなたが何故!?」

「後の世に伝えるための伝説。これが今のオレにはねぇんだよ」


それに、この世に散り散りになった妖刀を集結させる。

その使命もある。

だが、オレは・・・こんなオレでも・・・!!


「こんなオレを・・・許してくれ。徐々にお前から離れていくのは分かっている。だが、こんなオレでも「愛」という言葉の意味くらいわかる!そしていくら離れて行っても、愛は決して揺るがない。決して!」


オレは千秋を抱きしめた。

そして、それと同時に彼女の瞳から零れゆく雫が絶えた。


「駿・・・大好きです・・・。ですから・・・今日はこのまま・・・」

「することは、風呂でいいのか?」

「いえ、私の部屋で・・・」












そして千秋とすることを始めてある程度経った時だった。

不意に声が聞こえた。




「もう帰ってきていたとはな、椎名千秋!!」


・・・誰?

褐色の肌の、明らかに日本人ではない少女が立ってた。

灼熱の如き赤髪の中から覗く金の瞳が千秋を捉える。


「あんたを殺すためにおれがどんだけ命賭けてっか・・・あんたはおれの獲物だ!!」


何こいつ・・・。


「覗くなよ、変態」

「別に女の裸には興味ねぇよ。つーかおれ自身女だし」

「オレ男だぞ?」

「・・・うっせぇ!」


おや、逆ギレですか。

最近の若い人は・・・全く。


「駿、逃げてください!」

「バカ、オレは誰のための騎士だ?」

オレの配下には騎士がいる。

だが、その上に立つ者もまた騎士なんだ。


「あの人は四本の(チェーン)を駆使して戦う殺人鬼。私が学生時代に訪れた国で出会ったストリートチルドレンの少女です」

「ああ、殺人鬼さ。そしておれは親にも捨てられたさ。だからなんだ。おれの生きがいはてめぇをぶっ殺すことにあんだ!」


彼女は腕と足に巻きつけた鎖を地面に流す。


「おれは日本人が大嫌いだ。おれの親がその日本人なんだからな!あいつは殺してやったよ・・・おれがな!」


別に聞いてませんけど?

ひとりで勝手に騒ぐのは自由ですけど、こちらには迷惑をかけないでほしいですね。


「てめぇも日本人か。だったらこいつごとぶっ殺す!」


喧嘩上等、すぐに蹴散らして・・・な、なに!?

殺気が・・・増している・・・。

千秋も気を失っちまった。

オレが何とかするしか・・・・・・・・・・え?

体が・・・思い通りに動かない・・・。


「てめぇは自ら墓穴を掘ったのさ。生き物が弱くなる三つの行動。食事中、睡眠中、そして交尾中だ」


まさかこいつ、そこまで計算に入れて・・・!?

「お前・・・そこまで計算して・・・」

「いや、ここに来たらたまたまお前と椎名がやってただけだ」

偶然かよ。


くっ、千秋の身体が気持ち良すぎて体が言うことをきかない・・・。

身体能力が下がるのか・・・。

まるで悪魔と契約する前の様な体の感覚になっている・・・。

悪魔の力も自らが完全にその力に集中できるような状況じゃないと発揮できないのか・・・。


や、やられる・・・このオレが・・・。

刀を手にすることすらできずに・・・。

オレは・・・こんなに非力だったのか?

力を持っていたはずじゃなかったのか?

オレは・・・千秋を守ると誓ったんじゃなかったのか?




無力なオレは力を取り戻そうと必死に集中した。

だが、間に合わない。

「死ね!」

既に鎖はオレの方に向かって飛んできている。


もうダメか。

そう思った瞬間だった。




「魔槍・ゲイボルグ!!」

オレと奴の間に一筋の閃光が通り抜ける。

「くっ、誰だてめぇ!?」


リア・・・助かった・・・。


「我が主をお守りする・・・それが我が使命。ダークヴァルキュリアだ!」

「天使様か!おれは天使すら敵に回すほど堕ちたんだな!ハッ、気分がいいぜ!おれは悪魔に魅入られているんだ!」


悪魔を理解してすらいない癖に・・・。

なお、天使も悪魔もそんなに変わらないものである。


「この槍ごとてめぇを冥府に送ってやるよ!!」


床に刺さったゲイボルグをチェーンで巻き取り、それをリアに投げつける。

速い・・・あの速度は・・・人間じゃ出せない・・・。


「ゲイボルグ・チェーン!!」


リアなら防御で対処できるはず・・・。


「う・・・あ・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・え・・・・。

リア?

リア!?

何刺さってんだよ!?


<主、ゲイボルグは魔槍ゆえに、魔力で防ぐことなどできない。わらわはここまで。主よ、わらわはお主に会えてよかったと思う・・・。もし、これから別れがつらい時があれば・・・今からわらわが送る最後の贈り物に従え・・・>


リアはオレに心を通して話しかけてきた。

ゲイボルグ。

あれは龍をも一撃で殺し、一般人などあの槍の前には無力だった。

それを跳ね返す奴は・・・何者なんだ・・・。


リアが血を流し、苦しそうに眼を閉じた・・・。


「リア!?リアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


その瞬間、ひとつの魂が解放された。

これがリアの言っていた、最後の贈り物なのかもしれない。



その魂はオレに告げた。


<彼女をあの槍に封じ込めろ>










「な・・・ゲイボルグ・・・?」


<リアとやらの魂が宿る妖槍。我は妖刀を作る力を持つ。それを使え>



リアの魂の槍・・・ゲイボルグ!





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