第9章第2話 砂丘に潜みし毒蛇の剣
「ここか」
面倒なところだな。
砂漠とは・・・。
現在、サハラ砂漠で砂と格闘中です。
「ヴリトラに近づけば近づくほど私の体が反応します」
ルイン次第か。
オレはさらに歩みを進める。
「・・・暑い」
「シロガネの力を借りれば多少は涼しくなるでしょう」
あ、そっか。
てか絶対零度でもいいけど。
だけど気力消費するし。
「氷の騎士・シロガネ、我に力を貸したまえ!」
なんかカッコつけて呼んでみた。
「そんな呼び方をしなくても私は力を貸す。望みはこの暑さからの解放だろう」
氷の力を引き出し、辺り一帯を適度な温度に変える。
うおおおおおおお、涼しい!!
何これ滅茶苦茶快適!
「君主よ、ヴリトラに近づいているようです」
「・・・あそこがあやしそうだな」
何か少しだけ盛り上がっている砂丘に足を運んだ。
「ここか?」
「はい、この下に埋まっていますね」
地面を掘り起こすなら、この力だ。
「来い、イザナギ!」
「ったく、人が眠っている時に・・・で、何の用?」
なんか・・・ムカつく。
「この砂丘を掘り起こせ」
命令形。
こいつには、命令形。
何でだって?
ムカつくし・・・。
「え?それ、オレの専門外だけど?」
「黙れ、竜巻でも何でも起こして掘り起こせ!」
「お前がやれよ・・・」
マジうぜぇ・・・。
仕方がない。
オレがやるか。
オレはイザナギとハヤブサを構え、聖剣、魔剣に変えるように指示する。
風と空。
その二つが共鳴し、天候を操る。
それが災いし、ひとつの奥義が凶悪になる。
「十一代目真二刀奥義・クロスビーストエッジ!」
ま、竜虎が争うようなイメージだ。
本当に天に竜、地に虎の霊体がここで、直々に争ってくれる。
爪や咆哮が刃となってあたりを荒す。
近辺の街は消滅するほどの勢いだ。
まさに、天災。
「うわっ!」
すげぇ暴風・・・。
龍の吐息でこんな威力かよ。
虎が歩行する度、物凄い震動が伝わってくるしな。
こりゃひでぇ・・・。
砂は散った。
が、やりすぎた・・・。
近辺に村がなかったことが不幸中の幸いだな。
「ヴリトラ・・・」
ルインが呟いた。
彼女の視線をたどると、そこには毒々しい色をした刀が地面に刺さっていた。
「これが・・・」
「まだ目覚めてはいないようです。私の力を使えば、力を開放することは可能です」
折角手に入れた妖刀だ。
覚醒してなければ優秀な刀に過ぎない。
オレはその上を求めているんだ。
「頼む」
ルインはヴリトラを手に持ち、天に掲げた。
「汝が我の所有者かの?」
どこかの貴族ですか、あなたは。
「いえ、私はあなたと同じく妖刀。始まりの妖刀・ルイン。私の所有者は彼、片瀬駿。あなたの君主も彼に当たります」
「覚醒させたものが我が姉君に当たるものとは。これも妖刀の力ぞ。我は彼を主と認めよう」
気迫で分かってくれればありがたいがな。
「そう言えば。姉君、我ら妖刀を強化する武装の完成はいつぞや?」
な、なにっ!?
そんなものがあるのか!?
「創造者はこの時代には置いてはいません。ただ、私には時を超える力があります。それを使えば入手も容易でしょう。創造者はこの時空から気配すら感じませんから」
「だが創造者の魂はオレに宿っているのだろう?彼の記憶が覚醒すれば、オレがそれを作成することができるかもしれない」
「そうですね。確かに、彼の記憶も残っているはずですし」
強化する武装か。
楽しみだ。
「で、その武装ってどんな奴なんだ?」
「騎士によって異なります。ですからなんとも言えません。私にはそれ以外分かりません」
まだ手に入らなくても、楽しみだな。
「主がこのまま生きていても手にするまでに年を取って死ぬであろう。時とは、そう言うものじゃ」
・・・人間の命って短いですね・・・。
「だが安心するがよいぞ。我は不老不死の薬をこの身から生成することができるのじゃ」
不老不死もなぁ・・・。
それはそれで嫌だし・・・。
「それは後で決める。オレは死を求めるかもしれないからな」
長く生きていれば死を求めるという。
オレはそうなりたくない。