第9章第1話 戦争の爪痕と空気の読めないアイツ
「戻ってきた・・・か」
ここは、オレの家の前だ。
どのくらい時が過ぎたのかはわからない。
ただ、戦争での爪痕がところどころ残っている。
オレの家は、門が壊れていた。
昔からくぐりぬけてきた門だったため、門以上に何か大きなものを失った気がした。
「街には誰もいないか」
見事なまでに誰もいない。
それも、オレ達がロンドンに飛ばしたせいだろう。
「・・・お、お前・・・駿か?」
「・・・お前は・・・」
まさかのこいつの登場か。
何話振りだろう。
数え切れないほどシカトしてたし、名前すら出さないようにしてたからな。
「・・・錬磨」
こいつだけはロンドンに連れて行かなかったからな!
「駿、久し振り!俺今何起きてんのかわかんないんだけど?この前まで何で空に戦闘機が飛んでたんだ?」
バカすぎる・・・。
空気読めよ。
「戦争だ」
「日本は平和主義だぜ?全く意味の分からないこと言うなよ」
この状況を見て戦争じゃないと言い切れるこいつがバカすぎる。
「リア、本部に飛ぶぞ!」
「了解だ」
こいつと話すのも馬鹿馬鹿しい。
さっさと逃げるのが最善だな。
「おい、待てよ!?俺も連れて行けよ!?」
なんか言ってたが気にしないことにする。
数秒と経たないうちに本部についた。
「お前、日に日に魔力が増大していないか?」
「わらわもバカではない。何時までも成長せぬわけがなかろうに」
確かにな。
錬磨と違って。
「まずはオレの妖刀を腰に差さないとな。気が狂う」
親方に作ってもらった剣は飾っておくか。
確かにかなり優秀な剣であるが、オレは基本刀だし。
飾っておくのが妥当か。
「片瀬社長が今戻ったぜ!!」
社員が一斉にオレの方を向く。
「駿!?」
一番初めに声を出したのは、千秋だった。
「おう、ただいま!」
「どこ行ってたのですか!?心配してのですよ?」
悪い悪い。
「ちょっとな、どこかの龍に飛ばされて・・・っと、それはいいか。大丈夫だったか?」
「ええ。私は大丈夫です。現在、骸たちがあなたを捜索しに出ていますわ。今から連絡を入れるので、二日以内には戻ってくるでしょう」
オレを心配してくれたのか。
「悪いが、オレの刀を知らないか?」
「それならあなたの部屋に・・・「ありがとう!」
オレには今、ルインとの契約が気になっているのでな。
「千秋、次帰ってきたときは一緒に飯でも食おうな!!」
「・・・ええ」
オレは刀を装着して、飛び出した。
その時、千秋が悲しそうな表情をしていたことに気付きすらしなかった。
「二人は本部でオレの姉の指示を待ってくれ。ルインはオレと来てもらう!」
影麗とテクノは首をかしげたまま、風の如く走り去って行くオレをただ見つめていた。
「待ってろ、妖刀!全て手にしてやるからな!」
「ルイン、一番先に手に入りそうな妖刀は?」
「ヴリトラですね。気配を感じます。彼女は蛇をかたどった鎧を身に纏った騎士で、真の姿はリジル。毒をその身に宿している妖刀です」
ヴリトラ・・・名前から蛇と分かっていたけどここまで蛇とはねぇ。
「ルインが示した位置まで行けば見つかるか?」
「私は全ての妖刀の力を感知できます。それが、主が私に与えた力」
「妖刀探しには持ってこいだな」
思ったより楽に手に入りそうだな。