第8章第7話 彼女の持つ、第六の妖刀の出所を突き止める
オレ達は無駄に豪華な装飾が施されている城の廊下を歩いていた。
そろそろ第二騎士の場所だ。
少し歩くと、第二騎士が座っていた。
「目的のものは手に入れたのか?」
「ああ。それと、ありがとう。この剣はあんたのものだ」
オレは剣を返却した。
使ってないけど。
「貴様は凄い奴だ。真に剣を捧げるべき相手は貴様だったかも知れん」
いやいや、そこまで凄くはないさ。
「私を倒せる剣士など、この世に彼女しか存在しないと信じていたからな」
確かに、今まで戦ってきた相手でもなかなかの強敵だった。
人間以外も含めたランクで見れば中の上くらいだが、人間という意味では恐らく最強の部類だっただろう。
他の奴らもはや人間じゃねーし。
「第二騎士よ、あなたの君主はこの世にはもういません」
そりゃ、喉を一閃されたからな。
あれほど綺麗に血が空を舞うなんて思ってもみなかった。
「貴様が殺したのか?」
第二騎士がオレをキッと睨みつける。
「オレは手を下してはいない」
オレ、必死に抵抗。
「私が喉を貫きました。彼との契約は、第一に真の君主が現れるその時まで私が彼の騎士となること。第二にそれまでは私が手を下さないということ」
結局、王はそれに同意していたんだ。
いずれはこうなると、彼自身も分かっていたはず。
ただ、その時が想像以上に早かったから動揺していただけだろう。
「あなたに問います。私と共に新たな君主に剣を捧げますか?答えによって殺すなどはしません。正直な気持ちが知りたいだけなのです」
ルインは真剣な顔で、第二騎士は深く考えるような顔で、黙ったままだった。
実に見事な沈黙である。
「彼は守る必要はない。私がこう判断したんだ。守らなくとも彼は自分自身で逆境を乗り越えるはずだ。彼にはそれだけの力がある」
「そうですか。しかし彼はまだ、力の真の使い方を知らないようです。それを教えることが私の役目です」
・・・真の力?
確かに魂の大半が解放されていないらしいが。
城を出て、鍛冶場にやってきた。
そこでは影麗がお茶を飲みながら待っていた。
「流石だな。城に乗り込んでも帰ってくるところは」
「当たり前だ。この程度じゃ死なないさ」
今までもっと酷い窮地を脱してきたからな。
「それで、親方!剣は出来上がっているか?」
「あと二日待ってくれ!お前の剣の腕は間近で見たからよく分かるよ!騎士様の中でもトップクラスだ!」
第二騎士に勝ったからな。
第二騎士は強敵だったが。
「親方、次にあの剣闘士が戦う日は?」
「三日後だ。それまでに挑戦者が現れなかった場合、猛獣を三頭、闘技場で戦わせるそうだ。猛獣二頭までは難なく倒したほどだしな。並の人間じゃ勝てやしないさ。第四、第五騎士も敗北するほどだからな」
だいたい分かった。
所詮人間さ。
オレが本気を出せば。
「ルイン、その日一日その刀をオレに貸してくれないか?」
「君主が言うのならば、私は従うまでです。それに、タイガはもともとあなたの持ち物ですから」
またオレの魂のひとつが与えたのか・・・。
オレの謎は深まるばかりだ。
ったく、二年前が恋しいぜ。
その夜、オレはルインに刀を授けた人物について尋ねてみた。
「この刀は代々東の島国に伝えられていた伝説の刀のひとつです。ある人物が、それに伝説の剣を封じ込めにあらゆる時代を駆け巡っていました。タイガはその時作成された刀のひとつで、大地を司る力を保持しています。500年前にその人物が私にタイガを預け、去りました。「この刀はもともとは片瀬駿という人物の持ち物だ。もし、彼と出会うようなことがあれば、命を賭して彼を守りなさい。恐らく我は彼の中にいるから」と、言っていました。言われたとおり、私は待ちました。そして、あなたが現れた。あのお方の気配がしたので、瞬時に分かりました・・・あなただと。それからその人物は、このほかに5本の刀を持っていました。私にないということは恐らく君主が持っているはずです」
・・・オレとあの刀が巡り合ったのは必然だったというわけか。
てか、一方的に話されて話に割り込めない・・・。
「あー、だいたい分かった。もういい。寝る」
もう聞きあきた。
長い、校長の話並に。
・・・そう言えばあの校長どこ行ったかな・・・。
数日が経過した。
「あんちゃん!今日は剣闘士に挑戦する日だぞ」
親方が朝から起こしに来てくれた。
鍛冶場に泊まってるからな・・・。
勿論、金は払ってるぞ?
城から奪った奴だけどな・・・。
「剣は・・・まだだっけ?」
「すまんねぇ。第一騎士様から借りてくれよ」
そうするか。
刀だしな。
そっちの方が使い勝手がいいかもしれない。
「御武運を」
そう言ってタイガをオレに貸してくれた。
<確かに元の主の魂が感じられる>
「そりゃな。オレは実質、色々な魂の集合体だからな」
悲しいがな。
<主の手に渡った今、我は再び力を貸そう。全てを薙ぎ払う主の大牙とならんことを>
心強い言葉だ。
お前の力、見せてもらうぜ。
オレはタイガを腰に差すと、剣闘士が待つ闘技場へと向かった。