第8章第6話 第一騎士がまさかの・・・その・・・予想外・・・。
「ありがたく行かせてもらう。薬、置いていくから応急処置はしておけよ」
「お前は変わった奴だな。これを持って行け」
オレは第二騎士から剣を手渡された。
「騎士の位が高くなるごとに剣の性能も上昇する。今使っている剣よりはマシだろう。第一騎士は手ごわい。私よりもな」
忠告ありがとうな。
オレは玉座を目指して足を進めて行った。
「ここが謁見の間・・・か」
正面には玉座。
それと、ひとりの騎士。
「お前が第一騎士か?」
「・・・」
シカトかよ。
見た感じ王もいないようだし。
「・・・君主」
君主?
ま、まさかっ!?
後ろかっ!?
・・・って、いねぇ・・・。
「君主っていないじゃないか・・・」
「お会いできて光栄です。私、500年前からあなたに出会うことを待ち望んでいました」
え、君主ってオレ?
しかも500年前って・・・。
まあ、オレも数千年前に来てるからそんなに違和感ないけど・・・。
「私はあなたの騎士です。そして、あなたは持っているはずです。5人で構成される剣の騎士団を」
・・・ハヤブサたちのことか?
てか何で知ってんだよ。
「私の体はあなたの中にある魂のひとつが本来の持ち主です。500年前に私はこの体を預けられました。やがては朽ち果てて行く私の肉体の代わりにこの体を与えてくださった。あなたを守るという使命と共に」
なんか第一騎士のイメージが崩れまくってる・・・。
「この身が滅びようとも、我が魂をあなたに捧げます」
・・・これって仲間を手にしたと解釈していいのか?
<なあ、リリィ。まさかあの体、お前のか?>
オレは数多くある魂のひとつ、リリィに尋ねた。
<あれは私のものではない。確かに私も彼女も女ではあるが、私はもっと雅だ>
ははは、そうですか。
「それでは、お前の名は?」
「私の名はルインです。破滅という意を持つ忌々しい名です・・・」
「・・・オレは好きだぞ?その名。意味は悪くとも、好き好む人だっているんだ。だから自分の名を恨むな」
オレは自分の名前は気にいっていないが。
まあ、変な名前じゃないだけマシか。
一般的な名前だし。
「それじゃ、ルイン。オレに力を貸してくれ。ここの王に会わせてほしいんだ」
「イエス、ユアマジェスティ」
いやオレを本格的に君主としてるよ・・・。
ギアスの世界でも使われてたしね。
「こちらです」
オレはルインに連れられて行った。
ここか・・・。
扉を開けると、そこには王らしき人物が怯えた様子でこちらを見ていた。
「貴様、寝返ったな!!」
どうやらルインに言っているようだ。
「私は言ったはず。我が君主と出会うまではあなたを守ることを約束する。ただし、君主が訪れた時点でその契約は破棄されると。そして・・・」
ルインはそう言って剣を抜いた。
そ、その剣は・・・。
剣の先が王の眼にはまっすぐに映った。
「彼が現れた時点で、あなたの命をこの牙に捧げると。第六の妖刀、タイガ。彼の牙に貫かれ、散りなさい」
よ、妖刀!?
妖刀って5本だけじゃなかったのか!?
っと、その前に。
「まて、その前にこの書類にサインしてもらおうか」
オレは一枚の書類を差し出した。
「騎士剣の作成の許可状か・・・これにサインしたら命は・・・」
「了解、オレは奪わない」
王は頷き、書類にサインした。
残念だったな。
オレは端から殺す気はなかったのによ。
別にこれにサインしてくれれば問題はなかったし。
ただ・・・。
「まだ、私の第二の契約を果たしてはいませんね?」
<覚醒するか?>
「不要」
タイガと呼ばれたその刀は獲物を狙う鋭い眼光を思わせるような輝きを放ちつつ、その先の王の喉を捕らえた。
そして、鮮血が飛び交った。
黄色に煌めくその刀身からポタリ、ポタリと血液が零れ落ちる。
聞こえる音は雫がその下の紅い水たまりに落ちる音だけだ。
「・・・次の王、どうするよ?」
「大丈夫です、王子がいますから」
あ、そう。
まあ、これで剣を作れそうだ。
第二騎士から預かった剣は確かに業物だ。
だが、あの鍛冶屋ならいいものを作れるはずだ。