第8章第4話 西洋の王国で出会った鍛冶場の旦那。どうやら腕はいいらしい
「・・・この王国は・・・」
「ほう、これは素晴らしい。かなりの大国だ」
再び数日間歩きに歩いて噂の王国に訪れていた。
「そう言えば影麗、君はついてこなくてもよかったんだぞ?」
「あてもない旅をしているといったであろう?それに私は西洋に一度訪れてみたいと思っていたしな。道が分からなくて困っていたところにお主が世界地図とやらを描いてくれたおかげでここに来ることができた。礼を言うのはこちらの方だ」
・・・ははは、そうですか・・・。
「で、鍛冶場は・・・あそこか」
オレは遠くに煙が上がっているのがよく見えたので、影麗と共にそこへ向かった。
「確かこの辺だったな・・・あ、すいません!」
「なんだ?」
ちなみに、リアに同時通訳してもらってます。
「あなたはどれ程強力な剣を作れますか?」
「剣闘士のグラディウスから王の剣まで作ってるぞ。何たっておれはこの国一の鍛冶屋だからな!!」
多少は期待できそうだな。
「なら剣を一本、特注で切れ味抜群の片手半剣が一番いいかな。勿論、頑丈にな」
「そんな剣は王様から許可が下りないと・・・」
ちっ、面倒だな。
仕方無い。
オレの力を見せつけてやるか!
噂のバケモノ剣闘士とやらを叩き潰してやるよ!
「・・・王はあの剣闘士を倒せば認めてくれるか?」
「そりゃあ、今まで王様直属の騎士も5人中2人やられているからな。幸い、一命は取り留めたそうだが・・・」
「・・・そりゃあいい。オレが直属の騎士5人同時相手にしても倒してやるさ」
「ほう、ならば王国第三騎士のこの私を倒してもらおうか?」
なんか来たし。
「貴様はこの短剣で十分だ」
「後悔しても知らないぞ?」
「貴様こそ!」
オレのこの・・・いつかの100均包丁・・・よりは高級だと思うけど安物の盗賊から分捕った短剣で十分だ。
あ、そう言えば高級でふと思い出したけど、書道用の半紙の「高級」って書いてあって安物の奴って絶対高級じゃないよな?
正直、PB商品のリサイクル半紙とか言うのとそんな大差ねぇし。
他にも小学校の彫刻刀とかにも高級ってついてるし・・・終いには超高級とか出てくるし。
結局5000円しないし。
オレの彫刻刀は近所の大工やってるおっさんからもらったから高級だと思うよ?
職人の道具ってのは高級だからな!!
まあそんなことは置いといて。
オレ達は鍛冶屋の目の前で迷惑がてら決闘を始めた。
オレと騎士様が剣をぶつける度、ギャラリーが集まる。
「おお、騎士様と東の者が戦っているぞ!!」
「東の者は短剣じゃないか!あんなものでよくここまで・・・」
こんな声が聞こえてくる。
「どうした、王国騎士とはこの程度か?」
所詮普通の人間の中で剣が多少上手く扱える人間だろう。
オレなんていろいろ人外だからな。
悪魔と契約してたり、いくつもの魂の集合体だったり。
「くっ、何故このようなものがこの国に!?」
今だな!
「焦りは死をもたらすぞ?」
オレは一瞬できた剣の振りの隙を狙って頬に大きな傷を刻印した。
騎士様は物凄い悲鳴を上げ、顔を押さえてよろめいた。
「わ、私の・・・私の美しき顔に・・・傷があああああ!!」
このナルシストが!
「武器がナイフでよかったな。剣だったらリアルに死んでたぞ?」
相変わらず顔を押えこんでいる騎士様を上から見下ろしてそう言い放った。
良い気味ですね。
普段から自信過剰な人を貶すのは。
そしてギャラリー。
「あ、あいつ何者だ!?」
「騎士様をあんな短剣で・・・」
「もしかしたらあの剣闘士も倒せるんじゃないか!?」
「ひとつ言う。斬れない刃物ほど危ない物はないからな!」
オレは昔(約10年前)大工をやっている近所おっさんからそんな事を聞いたことがあったので一応言っといた。
明らかに危ないのは自分の方だが・・・。
ちなみにその大工のおっさん、現在は引退したがマイスターの称号を持っているという。
息子も息子でビジネスを成功させたらしく、かなりの金持らしい。
さてと、
「鍛冶屋の旦那!オレの実力は見たか?オレはこれから王族の騎士を全員ぶっ倒してくるから剣を作って待ってろよ!!あと、影麗!お前はついてこなくていいからな!」
オレは騎士様が忘れて行った高級そうな剣と鞘を拾って腰に差すと、上の方に見えるいかにも城らしき建物に向かった。
にしてもあの騎士。
あんなに弱いのにこんな装飾された剣使いやがって・・・。
柄にサファイアが埋め込まれているぞ?
あんな奴は安物の剣で十分だ。
ま、装飾されているからなんだって言うけどな。
オレの妖刀なんて装飾はそれほどないけど材質不明の新素材だし。
もしかしてオリハルコン?
んなわけないか・・・。
にしてもあの刀どこ行ったかな・・・。