第8章第2話 私は見た!神鳥を!盗賊王を!注・第三者の証言です
「さてと、金稼ぎに行きますか!!」
オレと影麗は砦を前に立っていた。
大量の盗賊たちがこちらを見ている。
「大量のザコと1人の首領。どっち選ぶ?」
「ザコ狩りは私の得意分野だ。お前が首領を討ってこい」
それでは、ボスに我が槍術を見せてやろうか。
馬はない。
そもそも乗れない。
だから。
走って突っ切る!!
「一代目一槍奥義・柳暗花明!!」
槍を振りつつ突撃する奥義。だが、ただ普通に振り回しているのとでは威力は違う。真っ向に立つ者を切り刻みつつ大量の人間を吹き飛ばし、それによって新たな道を作る。多数と戦うために作られた奥義である。
一代目の刀の奥義は単数を対象にしているのに対し、これは複数を対象にしているため、恐らく使い分けていたのだろうと思われる。
かといってオレのように奥義を乱用していたとも思えないけどな。
ま、道は楽に開けるものだ。
昔の人間の遺産とは非常に優秀だ。
大切にしないとな。
「・・・」
オレは石でできた扉を開けた。
つか、敵が出てくるのに使ってたから開いてた。
もちろん、中に入る。
おっと、これはこれはたいそうなお出迎えですね。
中には外にいたのとほぼ同じ数の軍勢がそろっていた。
用意周到ですね。
それで、この数の盗賊をオレひとりで倒せと?
結論から行こうか。
無理がある。
槍では一度に数人相手が限界だし・・・。
道を切り開く程度では槍で十分だ。
・・・こうなったら。
「お前らに見せてやる。この駿様が得意とする第二の業を!」
うっわ、さっきのナルシストっぽいセリフだったな・・・。
オレは地面に円状の傷を付け、更に周りには文字を刻む。
人間離れした速度で書き続けたため、案外早くできた。
「出でよ、天から舞い降りし大いなる翼!シムルグ!!」
物凄い強風と共に神の鳥と謳われる巨大な鳥が舞い降りた。
勿論、空から、
天井を破壊して。
その大きな翼が巻き起こす風は突風に匹敵する。
大きさも尋常じゃなく、ゾウよりも大きい。
シムルグの強さは圧倒的であった。
単体でも非常に強力な上、オレも加わることで追撃もできる。
オレの意志を受け取ったかのように上手く連携がつながる。
槍の振りも風で速くなっている。
ただ、時々オレも吹き飛ばされそうになった時もあった。
暫くして、敵はほとんど殲滅した。
一部逃げた奴らもいたが、それが正しい判断だと思う。
オレも人はできるだけ殺したくはないし。
全て片付けたオレは更なる扉を開ける。
ここが最奥のようだ。
これ以上扉もないし、ここだけやたらと豪華だ。
なんかあっさりついたな。
だが、ボスらしき奴はいない。
・・・逃げたか。
まあ、一騎当千の戦士がいれば誰でも逃げるよな・・・シムルグありだけど。
これでも剣を使ってないだけ弱いけどな。
・・・ん?
誰かいる。
この気配。
・・・・・・・・・・・・・・・・ただものじゃない。
「誰だ?」
オレは後ろにいると思われる奴に声をかけた。
「流石、一騎当千の猛者。良くオレの気配に気づいたな」
「オレの感覚は他の人間に比べて鋭敏だからな」
オレが振り向くとそこには大刀を担いだ男がいた。
背丈はオレと同じくらい。
しかもイケメン。
悔しいくらいイケメン。
「お前、盗賊か?」
「まさか。そんなレベルの低いものじゃないさ」
だよな、こんな凶悪な気配、さらにこの気配をほぼ完全に消し去ることのできる人間が世で活躍しないわけがない。
「そうだよな。どこの将軍だ?」
「まさか。オレは・・・盗賊王だぜ?」
盗賊王ってとこの将軍か・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、えええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!
盗賊王!?
王かよ!?
「ちなみに、ここらに派遣されてきた将軍全員討ってます」
・・・・・・・・・・・・・まさか槍でこんな強敵と戦うと思わなかったよ・・・。
ってかなんで敬語?
オレも時々なるけどさ。
「敵なら仕方がない。槍でも貴様を討つ。それに今のオレにはシムルグもいる!」
剣を使いたいところだが、今は仕方がない。
「いざ!!」
そう言い放った瞬間、槍を激しく打ちつけ合う音が響いた。
「瞬発力はいいな」
「オレはちょっといろいろ特別でさ」
・・・特別だからここにいるんだよ・・・。
「後ろを見なくていいのか?」
オレの声と共に、神鳥が盗賊王を襲う。
「問題ねぇよ」
凄まじい力でオレを吹き飛ばし、振り向き際におおきな一振り。
一瞬シムルグは怯んだが、空中に舞い戻り体制を立て直す。
「その程度じゃシムルグはやられないぞ?」
「それはどういう意味だ?」
次の瞬間、
シムルグの首が落ちた。
「なっ!?」
「よそ見はいけないぜ?」
連続で凄まじい突きがオレに襲いかかる。
全て受け切れず、多少は掠ったが、ほとんど傷はない。
二人は一旦距離を置き、次の攻撃に備える。
「二代目一槍奥義・荷電粒子!!」
まあ、一言で言おうか。これははやて姉の魔砲に近い奥義だ。槍先から荷電粒子を解き放つ奥義。まるでどこかの戦闘兵器の様に。二代目は剣より槍を使っていたという噂もあるしな。だからこんな凶悪な奥義が生み出されたのだろう。
「そんな攻撃、オレには効かない!」
盗賊王を名乗る男は大刀を物凄い速さで振り回し・・・え、どのくらいの速さかって?
ざっと秒速1000回転くらいかな?
それで荷電粒子がことごとく弾き飛ばされて行った。
・・・マジかよ・・・。
やはり槍じゃ勝てないのか・・・
「せめて刀があれば・・・」
「ん、お前、真の得物は刀なのか?」
「まあな、圧倒的に刀の方が使い勝手がいい」
それを聞いた盗賊王は槍を下した。
「ほう、驚いた。お前がここまで槍を使いこなしているというのに真の得物が他のものだとは。よし、次会う時までに刀を用意しろ。決着はそのときだ」
「ま、待て!オレは槍でもまだやれる!!」
「槍でオレに勝てる奴なんていねぇよ。本気で戦える奴がこの世界にいたんだ。そいつが真の力を発揮していないのに叩きのめしちゃ、面白くないだろ?」
く、確かに今のオレじゃ勝機は薄い。
刀を用意して本気でかかっていた方が勝つ見込みはあるだろう。
てか、オレの依頼、こいつの討伐だったよな?
「でもオレの依頼お前の討伐なんだが」
「じゃ、こいつの首でも持ってきな」
盗賊王はその辺に転がってたたぶん弱そうな盗賊の首を切り落としてオレに渡した。
こんなものいらねぇよ・・・。
人の首持って歩いてたら変態だろ。
「オレはここを去る。またどこかで会おう。お前、名は?」
「オレは片瀬駿。まあ、隣国からやってきた。お前は?」
日本って隣国だよな?
時代違うけど。
問題ない、無双の中には三国時代の奴らと戦国時代の奴らが共存してるしな。
「オレは名乗る名などないさ。なんていう名だか・・・忘れたよ、もう」
そうか・・・。
「それに、名なんて・・・偃月刀があれば必要はない」
確かに、存在を確かめあうにはそれで十分だ。
「お前の挑戦、受けた!必ず本気で再び剣を交えよう!!」
オレ達は再開を約束し、別れた。
勝利と言う偽りの結果と共に。
確かに結果としては勝利したが、ボスを討つことはできなかった。
だから、真の勝利とは言えないだろう・・・。