第7章第3話 封印されし王女の魂、何故か変なタイミングで解き放たれる
オレは今、地下に造られた大型の戦闘シミュレーション室にいる。
実際に戦場に立ったように錯覚させることも可能だ。
ここで、オレとはやて姉は人型兵器の試運転をしている。
使い方はMSやナイトメアとは違い、エヴァに近い。
自らの体とシンクロしているように動く。
シンは、オレとはやて姉が操縦より実戦の方がよっぽど強いと確信していたからだろう。
オレの機体は空を飛ぶことはできないが、地上戦では無類の強さを誇る。
本当にオレ自身をこの機体に宿したかのようだ。
この機体がオレの速度で動くんだからな。
相手にしちゃたまったものではないだろう。
下手すりゃ一機でひとつの国を滅ぼすことも可能かもしれない。
某ゼロさんのように、オレたちも国を作ることを検討してみようか。
「やはり駿くんの機体は駿くんの機動力に耐えられるように設計されているわね」
生半可なフレームじゃオレの機動力については来れない。
―――――――神速。
これがオレの速さを象徴する言葉に相応しい。
「はやて姉、そっちはどうだ?」
「魔力の吸収量が私の5倍だわ。全長も5倍だからかしら?体重は200倍くらいあるけど」
身長と体重は比例しないって。
「訓練はこのくらいにして、敵国の情報は?」
「それなら他の人の方が詳しいわ。たまには顔を見せてあげなさい」
ああ、そうだな。
あれを発見してから三日、ずっとこいつの調整に当たっていたからな。
「そうするよ」
えっと、ここを回るのは久しぶりだな。
「お、駿か。夕食ができているが、食べるか?」
・・・刹那・・・か。
「ああ、できればそうしてもらいたい」
朝から何も食べていなかったからな。
「喜べ、私の手作りだ」
「ん?口調戻っていないか?」
「やはり自分に嘘はつけないからな。お前もこちらの方がよかろう?」
「微妙に戻っていないところもあるが・・・まあいいか」
「・・・・・・・・こんな言葉遣い、お前の前でしかしないんだからな・・・」
「ん?なんか言った?」
「・・・べ、別に何でもないぞ?」
オレは刹那に案内されて食堂に向かった。
刹那の料理は美味しかった。
和食ではあったが、昔から仕込まれていたようで、かなりの腕前であった。
技術面と容姿では大和撫子といったところか。
性格が少し外れてはいるが。
どちらかというと洋風の千秋とはまた違った感覚だ。
でもオレ洋食派だから千秋の方がいいな。
「ごちそうさま。それといきなりだが一つ聞いていいか?」
「何?」
「敵国の戦力や治安状況を知っている人から聞いてきてほしい。オレは少し疲れてるからさ」
「わかった。聞いてくるから部屋で休んでいてくれ」
それじゃ、お言葉に甘えるとするか。
オレが仕組んだけどな。
部屋で眠っていると、誰かが入ってきた。
「刹那か?情報収集早かったな」
「ほう、刹那さんにはそんな依頼をしていたのですね。私ではなく」
こ、この声は・・・。
まずい。逃げないと・・・。
「柚季、お前がいるとは・・・」
「私が本気を出せば、先輩が逃げる前にこの部屋は灰になりますよ。でも、先輩はそんなことしません」
ああ、確かにしないよ。
そんな話聞いたらな。
ここはどう動くか。
助けが来るまで時間を稼ぐ。いずれ刹那が来るはずだし。
降伏はオレのプライドにかかわる。
自力で脱出すれば、他の人間にも被害が・・・。
「なあ、柚季。お前はオレに何をしてほしいんだ?」
急にオレは気になって聞いてみた。
「勿論、永遠に先輩と二人きりで過ごしたいんですよ」
ダメだ、こいつ完全に逝ってやがる・・・。
刀を取るにしてもな。
あそこまでかなり距離がある。
もし柚季が無詠唱魔法を使うことができるのならば、絶対にオレは死ぬ。
そしてオレの死体で弄ばれる・・・。
<汝、我の力を欲すか?>
え?
心に女性の言葉が響いた。
<我が名はリリィ。今は亡き王国の姫だった。とある事情で我が魂が貴様の体に封印されていて我が動けなかったが、先日現れた黒き天使によって魂が解放された。だが、体がないので汝の体を借りるほかない。今はそこの少女から逃げたいのだろう?>
ん、まあな。
<我に任せよ。暫しこの体を貸してもらおうか>
急にオレの意識が飛んだ。
<リリィ視点>
体が自由だ。
久々だな。
変化があるのは・・・体が男になった程度か。
よく鍛えられている。
使い方さえ間違えなければどんな戦でも無敗であろう。
「貴様、そこに跪け」
声に違和感があるな。
元々多少低めの声だったが、それでもこいつの声の方が低いな。
「せ、先輩?ど、どうしちゃったんですか?」
雰囲気の代わり用に驚いているのだろうか。
「め、目の色が・・・」
ほう、眼の色生前に戻るのか。
我が深紅の瞳には誰もが恐れ戦いた。
これに剣があればな。
「貴様、我が剣の錆になりたいか?」
あの小僧もこれほどの畏怖を与えれなければダメだな。
我の手にかかればこのような小娘なぞ、瞬時に恐怖の顔になるわ。
<ほう、逃げだしたか。そろそろ体をあいつに還してやらねばな>
ここで我の魂を体の奥に封じ込めた。
<駿視点>
「・・・戻った?」
意識が戻った。
あいつのせいなのか?
まあ、これから色々あるだろうな。
あいつのことはこの戦いが終わったら聞こうか。