そして知るむなしい現状
(前回のあらすじ)
さあ、戦いのゴングがなった。
さあさあ始まりました!魔王討伐への試練!果たして人間達は乗り越えられるのか!!
いざ、バトルスタート!!
……………すみません。あまりにも暇だったのでテンションが異様に高くなってしまいました。
何にもすることありませんでした。すみーっこに丸まってじっとしているだけ。めっちゃ暇だった。
ええと、結果はですね。
スノウの圧勝でした。
もう戦力の差が違いすぎる。適当にいなしてたもんスノウ。
これは、スノウが強すぎるのか相手が弱すぎるのかわからないですな。
「まだ少し早かったようですね。私を倒すくらいのレベルにならないと、魔王には挑む事すらできませんよ。」
えー魔王どんなチートなんだよ。人間達も絶望してるよ。
「日々の鍛練を怠らず、精進なさい。今日は疲れたでしょう。転移ですぐに町へ送って差し上げます。」
ほぼ問答無用で魔方陣を使うスノウ。
途端に人間達の身体は輝きだし、やがて消えた。
…………とりあえず、お疲れ様でした。
「こゆき、お待たせしました。」
「あー…………。あれは、人間達は激弱だったので?」
あの戦力差は涙さえ出てくるものだった。
「いえ、けしてそういう訳ではないのですが……………。やはり、種族と経験の差ということでしょうか。」
可愛そうにね。人間に生まれたばっかりに。
って、そんなことより聞かなければならないことが。
「あの、何故人間達は魔王を討伐しようとしているの?」
どんな話にも、魔王を討伐するというのにはそれなりの理由があったはず。
理由によっては、私もしなければならない事とかあるんじゃないか?
いくら気まぐれとはいえ、特例で転生させてもらったのです。何もしないと、あのアグレッシブな仏様に何を言われるかわかったもんじゃないですな。
という個人的な理由で協力を考えたのです。ええ。
「んー……………少し話が長くなりますが、よろしいですか?」
はいな。時折ツッコミを入れながら聞きますよ。
「事の起こりは、だいぶ昔に起きた事です。私が大精霊になったばかりの頃、人間達の間では、流行り病が広がっていました。人々はそれを、魔の象徴である魔王の行いによる事だと考えました。」
ああ、なすりつけじゃないですか。まあ人間は明確な理由を知りたがりますからね。たとえそれが偽りだとしても、盲目的に信じる事で己を保ちますから。
「魔王率いる魔族達は、相手にしませんでした。戦力差なんてたかがしれています。たとえ千の軍勢が攻めてきてもそこそこ鍛えているものであれば蹴散らせると思っていた様ですし、実際そうでした。しかし、人間達はある武器を使う事にしました。」
ほう?エクスカリバーとかそういう類かな?
「それは聖剣を始めとする、聖なる武器です。その武器だけは、魔王に対抗することができました。」
お、結構いい線いけました!
…………すみません。真面目に聞きます。
「それからというもの、人間達は勇者と呼ばれる者達を百年に一度ほど、送って来るようになったのです。」
うわーはた迷惑な事ですね。
「しかしここ最近、人間達が訪れる頻度が頻繁になってきているのです。」
え、なんで?
「ある村では疫病、ある村では貧困、ある村では干ばつ………と、小さな災害が各地でおこっているのです。
一つ一つは対した事ではないのですが時期が重なり、これまた魔王のせいだ、と………。」
うわあ…………。
「聖なる武器は主を選びます。しかしなかなか見つからないらしく、それなりに強い者を寄せ集めてこちらに送ってくるのですよ。」
それでさっきの人達激弱だったのか。
「人間達の中では強いらしいのですが、精霊や魔物相手ではどうもね…。」
勝負にならないのですねわかります。
「魔族側とは、私達精霊もそれなりに縁はありますし、少し負担を減らそうと思っているのですよ。」
スノウってビックリするくらい優しいな。転生先がこんな優しい人のところでよかったよ。
「そうなんだ。ということは、他の大精霊達も勇者(笑)の相手してるの?」
「いや、一切していません。」
はぁ?
「私以外の大精霊で現在存在しているのは炎、水、植物の三人ですが、全員人間側です。」
え、じゃあスノウが全部やってるの!?
「百年に一度から、一年に一度くらいまで増えました。」
百倍………!
「………スノウ、頑張りすぎじゃない?」
「あまり力の消費はないので大丈夫ですが、あまりにも代わり映えしないのも、こう………。」
人間達に成長が見られないのが残念、と………。
よし、こうなったら私が一肌脱ぐことにしますか。
ここに転生したのも何かの縁。私は何があってもこのドラゴンに味方しようじゃありませんか。
「スノウ、私魔王様に相談して来る。」
「………え!?」
「それから、スノウの負担を軽くする方法を考えてみる。私の親だもん。生んでくれた事に感謝するなら、これくらいはしないと、親孝行出来ない。」
前世では出来なかった親孝行。こっちでは、ちゃんとやろう。
「こゆき………!なんて嬉しいことを言ってくれるのですか!?生まれたばかりだというのに、知能がちゃんとあるばかりか私のために行動してくれようとしてくれている!ああ、娘とはこんなに可愛いものなのですねぇ。もう貴方以外は何もいらないですよ!」
「わっスノウ!?」
スノウが人型になり、もふもふを堪能してきた。
「ちょ、やめ、くすぐった、はは、あははっ。」
「はぁ、手触りが良いですねぇ。これは永遠に手放したくないですよ………。」
「ひゃ、はは、ちょ、スノウー!!」
しばらくもふもふされ続け、解放されたときにはグッタリしていた。
「ははは、すみません。夢中になってました。」
ほんと、手加減してくださいよぉ………。
「魔王様に相談でしたね。良いのではないでしょうか。魔王様は身分にあまり捕われていない人で、民のことを第一に考える方ですし、今から行きましょう。」
え、今!?
アポなしですか!?
「他の大精霊達は人間側なんでしょ?大丈夫なの?」
「大丈夫です。私はいわば中立な立場ですし、無下にはされませんよ。それに私は魔王様と一対一なら互角で戦える自信はありますよ?」
あ、スノウもチート仲間なんですね。
「さ、行きましょう。」
「どれくらいでつく?」
「五分飛べばつきます。」
五分!?前のうちからコンビニまで行くよりも早くつくよ!?
「ほら、あそこです。」
外に出て、指された方向を見れば………。
割と近くに魔王城ありましたよ。
どうやら、私の隣人は魔王様のようです。
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