え、私が娘ですか?
(前回のあらすじ)
ドラゴンさんに私は娘だと言われました。
「私が、娘?」
「ええ、そうです。」
ドラゴンさんはそう言っていますが。
正直何が何やらよくわかりません。
「………?」
「貴方は私の魔力が生み出した、精霊なのです。なので、貴方は私の娘ということになります。女の子でしょうし。」
待った、ツッコミどころが多すぎて理解出来ない。魔力?精霊?
質問責めした私に懇切丁寧に説明してくれたドラゴンさんによると。
・ドラゴンさんは氷の大精霊という、ものすごい力を持った偉い人である。
・大精霊ともなると、望めば自分の魔力で子供ができる。
・今まではつくってこなかったが、他の大精霊がうるさかったので、とりあえずつくる事にした。
・それで出来たのが私。
ということらしい。
どうでもいいがこの別世界とやら、すごいファンタジーですね。
「貴方が、父親?」
「ええ、そうですよ。私が父です。」
よかった。あってた。声と雰囲気的に男かな?くらいにしか思ってなかったので、ほっとした。
「しかし驚きました。他の大精霊からは生まれたばかりは知能皆無と聞いていたので、めんどくさいと思っていたのですが、貴方は違ったようですね。安心しました。」
どうやら精霊でも、赤子は同じようなものらしい。
転生したとか言う気はないので、自分の中で解決してくれてよかった。
そして、気になっていた事が一つ。
「私の名前はあるの?」
ずっと貴方で統一してたから、教えてほしい。
「名前、ですか…………ふむ、考えた事がなかったですね。」
えっ!?名前ないの!?
「私は人々に氷の大精霊と呼ばれ続けてきたので、それが名前みたいになってましたからね。」
寂しい!寂しいよ!
「貴方は、何か希望はありますか?」
子供に名前聞くんだ…………。
でも、そうだねぇ。一応転生したけど、記憶は残ってるし、前とほぼ一緒なので。
「こゆき、がいい。」
ちょうど氷の精霊ですし、ピッタリですね。
「こゆき、ですか。いい名前ですね。氷の精霊ともイメージがあっています。」
「貴方の名前も、考えていい?」
氷の大精霊なんて名前悲しい。
「私ですか?………そうですね。子供に名前を考えてもらうのも、なかなか良いです。お願いします。」
よし!では、私がこゆきなので、その父にあたるのは………。
「スノウ、っていうのはどう?」
「ああ、良い名です。こゆきにスノウですか。親子らしいですね。気に入りました。これからはそう名乗りましょう。」
よかった。気に入ってもらえたらしい。
前の世界では安直だと間違いなく言われますが、喜んでくれて嬉しいですね。
すると、スノウが何かに反応した。
「ん?」
「スノウ、どうしたの?」
ある一点を見つめるスノウ。
「来訪者のようですね。安心してください。今回はすぐに終わります。」
なんだなんだ?
すると、スノウが見つめていた場所が突然光った。
「な、何!?」
「大丈夫です。転移の魔方陣が作動しているだけですよ。」
転移の魔方陣だあ!?
しばらくするとその光はやがて複数の人の形を作り始める。
するとスノウも輝き始める
「スノウ!?」
スノウの光は、やがて人の形を作り、そして消えた場所には美しい男性が立っていた。
その人はスノウの鱗と同じ色の髪と、瞳を持った、彫刻のごとく美しい人でした。
「スノウ、だよね?違う人じゃないよね?」
「はい。スノウですよ。」
にこり、と微笑まれる。
やばい。ノックアウトしそうになった。
「人の姿になれるの?」
「ええ。ある程度魔力がついたら可能ですよ。こゆきにもできます。」
へー。私にもできるんだ。ってそういえば、私どんな姿してるんだ?
なんて思っている間に、転移の魔方陣から光が消えた。
そこにいたのは八人程の人間達。皆武装してる。
え、何なの?何がおこっているのですか?
すると、スノウが一歩前に進み出た。
「よくぞここまで辿り着けましたね。まずはそのことに対し称賛を送ります。」
微笑みながら話を進めるスノウ。
「私はこの氷山の主、氷の大精霊のスノウです。この場所まで来たということは、貴方方は魔王の討伐へ向かうのですね?」
「はい。我々は魔王を討伐し、世界を平和にしたいのです。」
はい。ちょっとよくわかりません。空気を読んで黙ってましたが、全然理解出来ないのでつまらん。
すると、スノウが説明してくれた。
「彼等は、魔王の討伐へ向かうもの達ですよ。」
へー。魔王っているんだ。
「魔王がいる魔王城へ行くには、私達が住むこの氷山を通り抜けなければ行けません。」
ふむふむ。
「私はこの氷山を抜けてもいい実力を持っているのか、試すのです。見事私に勝利したものだけが、ここを通す事を許します。」
あ、なるほどそういう事でしたか。手間をかけさせてすみません。
「あの、その子供のドラゴンはいったい?」
今まで蚊帳の外だった人間達が恐る恐る声をかけてきた。
「ああ、私の娘ですよ。」
「こゆきといいます。」
っていうか、子供のドラゴンって私のことだよね?
私ってどんななんだ?
ってそこに鏡みたいな氷があるじゃん。
どれどれ。
………………………ん?この犬みたいなのは私ですか?
なんか、全身がもふもふのふわふわです。
色は白で、耳みたいなのの先とか手足の先とかだけ青ですね。
「スノウ。なんで私スノウとこんなに見た目違うの?かっこよくない。」
「ドラゴン型の精霊の子供は、大体そんな姿ですよ。魔力がついてくると、私のような姿になれます。」
よかった。一生もふふわでいるのかと思った。
もふふわはそれなりに好きだったけど、自分がなったら微妙だった。
「あの、そろそろ…………。」
「ああ、すみません。娘の愛くるしい姿を見ていたら、貴方達の存在を忘れかけていました。」
そんなこと言ったらかわいそうですぞ。
「では、いきます。」
そういうとスノウはさっきのドラゴンの姿になった。
あ、さっき大きく感じたのってもともとの大きさもあるけど、私がちっさいからだ。
といっても、人間達の十倍近くはあるんだけどね。やっぱ大きいな。
「魔王を討伐し、世界の平和を取り戻したいなら、その覚悟を私に証明してください。」
こうして、戦いの火蓋は気って落とされた。
ってそういえば、魔王がいるって大丈夫なの?私達戦ってていいの?
「何なんですか!?この愛くるしい姿は!自分の娘とはこんなに可愛いものだったのですね。でも他の大精霊のように沢山は作りません。一つをしっかり愛でるのが良いのです。ふふ、楽しみですねぇ………。」
その時、こゆきに悪寒が走った。