何やら、きな臭いです
マリーの処罰は一週間魔法の使用禁止という物で、軽くすんだ。
そして宣言通り、我が家へ遊びに来てくれたので、退屈は全くしなかった。
そんなこんなで、あれから一週間。マリーの魔法使用禁止期間は、本日で終了となっている。
「それにしても、こゆきの部屋って殆ど氷で出来ているわよね。ベッドのシーツとかは違うけど、それ以外の家具は氷だし。寒くないの?」
「んー、別にそうでもないな。氷の精霊だから寒さに強いのかもね。実際、こんな雪山の中で浴衣一枚でも平気だよ。ああでも、暑さには弱いかな。今の王都もちょっと暑い。」
「え、まだ冬終わって間もないわよ?そんなんじゃ夏は大変じゃない。王都は温暖な気候で有名なんだから、バテないようにしなさいよ。べ、別に貴女の事心配したわけじゃないんだからね!」
今日もツンデレ絶好調なマリーさんですね。
「こゆき、ちょっと来客が来てるのですが……。」
と、スノウが部屋に入って来た。
ちなみに、この部屋と家具を作ったのはスノウである。
「来客?」
「はい。人間なのですが……。」
「え、もう勇者来たの?そんな噂聞いたことないけどなぁ。」
「いえ、そうではないと思います。人数は三人で、武装も最小限のようですから。一応、こゆきも私の娘として参加してください。」
ん、ということはもふもふバージョンですか。オッケーです。
「マリー、ちょっと待っててね。」
「ええ、分かったわ。」
うーん。でも、勇者(笑)じゃないとしたら何の用事で来たんだろ?
何か、良い予感はしないねぇ……。
★★★★★★★★★★
私が生まれたあの氷の広場にスタンバると、タイミング良く三人の人が現れた。
「我々はフィオール王国の使者です。本日は、王からの言伝を伝えに参りました。」
なんと、使者ですか。動きが洗練されてたから戦闘職の勇者じゃあないだろとは思ってたけど。
「先日は、魔王の配下を退けて下さった事、感謝致します。あのままでは、どれ程の被害が及んだのか考えられません。しかし、大精霊様が処置をしてくださったからには、もう魔王城から出ないでしょう。」
その魔王の配下は現在私の部屋でおやつを食べながらカードゲームをしていますが。
「そこで、王直々にお礼を申し上げたく、是非王宮へいらして下さい、との事です。」
はー、なるほど。
つまりお礼がしたいからこっちに来てーとのことですか。
……怪しい。絶対それだけじゃないぞ。そんだけの事ならわざわざ呼び出さなくても良いじゃん。使者を送るだけで事足りるのに。
「折角ですが、私は事情があってあまりこの場を離れられないのです。申し訳ないのですが、お断りさせていただきます。」
嘘つけ!スノウひょいひょい魔王城行ってるし普通に人間の町に下りてるでしょ!
「そうですか……それは残念です。では、私達は失礼させていただきます。」
「はい。私も非常に残念ですとお伝え下さい。《転移》」
そして使者が視界から消えると、スノウはため息をついた。
「怪しすぎますね……他に、何か理由があったと思います。」
あ、やっぱスノウもそう思ったんだ。
うーん……気になるな。
よし。ちょっくら下りよう。
「私、ちょっと様子見てくるよ。変化も大分慣れたし、小さい動物にでもなって紛れ込めるから。」
「いえ、そんな危険な事は……。」
「大丈夫。少しだけだから。私が気になってるだけだし、ね?」
「……そこまで言うなら構いませんけど、くれぐれも気をつけて下さいね?」
「分かった。それじゃ、マリーに事情話してくる。」
さてさて、一週間ぶりの王都です!
★★★★★★★★★★
と、王宮に忍び込む前にギルドに寄る。
依頼も更新されただろうし、ちょっと目を通す程度で。
と、ギルドへ着くと何やらザワザワしてますね。
ん、私注目されてるぞ?何故に?
「おい、あいつか?」
「ああ、間違いねぇ。実際に見たから分かる。あんな奴だった。」
「本当にあんなひょろひょろが?」
「まさか魔王の配下を止めるとはなぁ。」
「氷の鎖で封じ、氷のナイフで脅す。いやぁ、見事だったよ。」
……あぁ、あの時の事か。
随分ウワサになってるねぇ。凄い凄い。
そんなにご大層な事したつもりはなかったけどなぁ。
前世では一人で族の中に乗り込んで乱舞してたし、脅しももっとえげつな…げふんげふん。
まあとにかく、そんなに凄い事なのか、あれ。
「こゆき!」
「ん?あ、フラン。」
凄い勢いでこっちにくるフラン。どうしたの君。
「どうしたの?」
「どうしたの、じゃないでしょ!何であんなに危ない事したの!」
「あ、フラン見てたんだ。」
「見てたけどそれはともかく!危険だとは思わなかったの!?相手は魔族だよ!?人間とは桁違いの力があるんだから!」
私人間じゃないよ?フランにとっては獣人だけど、精霊ですよ?
「いや、大丈夫だと思って行動したから、問題ないよ。それに、怪我も何もなかったんだからいいじゃん。」
「もぅ、全く……寿命が縮むかと思ったよ……。」
「そんな事で神経使ってると、ハゲるよ。」
「誰のせいだと思ってんの!?」
いやぁ、フランは実にからかいがいがあるね。マリーとどっこいどっこいだよ。
「あ、これちょっと大事な話しなんだけど。」
と、フランが真面目な雰囲気になったので私も真面目になる。
「ん、何?」
「あくまでも、あくまでも噂だよ?実は、こゆきがあの時王様の前で魔族を止めたから、次の勇者メンバーにって探させてるらしいよ。」
「はぁ!?勇者パーティーって王様が決めるの?」
「そりゃ、国にとっても大事な事らしいしね。えりすぐりの強者達を選ぶらしいんだけど、やっぱ聖剣がないとキツイみたいでさ。異世界から聖剣の勇者を召喚して、本気で挑むらしいよ。あ、あくまでも、あくまでも噂だから!」
そんなに噂強調しなくても分かってるって。
しっかし、大分めんどい事になってるぞ。
これ、スノウが招待されたのと関係あるよね?スノウって勇者の登竜門みたいな物だし。
「あのさ、実は私、今まで氷の大精霊様のところに行ってたんだけど……。」
「はぁ!?マジで!?だから今まで見つからなかったんだ……」
「う、うん。それでさ、大精霊様のところに王様の使者が来たらしいんだよ。それで、王様に呼ばれたらしいんだけど関係あるのかな?」
「ああ、今度こそ勝てるように臣下が大精霊に育ててもらえらばいいとか言ってたらしいから、大精霊を呼んでその場で勇者召喚して、見捨てにくい状況を作ろうとしてたんだよ。いきなり召喚されて右も左も分からない状態の人間はほっとけないだろうしさ。あいつらそういうずる賢い事大得意だから……って、あくまでこれは噂と俺の想像の範囲を超えないんだけど!」
「う、うん。分かったから落ち着け。」
はぁぁ、これは忍び込むまでもなく状況が分かりましたぞ。
しかし、多分だけど王様、魔王を倒す事に意味はあまりないって気がついてるよね?
でも倒すと国民が安心するし、気持ちにゆとりが出来るからやってるのかな?あと単純に領地の拡大とか。
もう決着つけたいだろうね。だから、かけだし冒険者の私でも魔族を止めたからって引き込もうとしてる。
でもノワールを倒す手伝いなんぞまっぴらだし面倒だから嫌だ。
「パーティーに入りたくないから、私大精霊様に匿ってもらうわ。」
「そっか。でも、冒険者とかにとっては勇者のパーティーに入るだけでステータスになるよ?いいの?」
「そんなのいらないよ。」
「ふぅん、そっか……。」
何やら黙り込んだフラン。
と、何かを思い出したのか、顔を上げた。
「あ、そうそう。俺、しばらく依頼受けられそうにない。家で用事が出来たんだ。ごめん。」
「んーん、気にしないで。私は今からでも匿ってもらうし、魔王と勇者の決着がついたら来るよ。」
「じゃあ、俺もその頃辺りからギルドに復帰するから、よろしく。」
「うん。よろしく。それじゃ、またね。」
うん。王宮で調べようと思った事が思いの外簡単に終わったので、一先ず帰りましょう。
勇者が召喚されたっぽかったら、顔を拝みにこようかな。




