世界のキリトリ。
僕の世界を切り取って
君にもちょっとでいいから見てほしかった。
たからものを見つけた子どもみたいに、
ちょっとはしゃいだ気持ちになったの。
写真を撮った。
僕にしては珍しいことだった。
綺麗な秋の空だったから。
日が沈みかけているくらいの、
雲がくっきり光り輝くような。
本当に美しくて、全身の力が
抜けてしまうくらいの空で、
柄にもなく、マンションの
最上階にまで上って撮った。
僕にしては珍しいことだった。
「君に見せたくて。」
そんなふうに冗談っぽく言って
君に画面を見せたら、
君はわあ、きれい。だなんて言って
並一通りに褒めてくれた。
「でも次は、一緒に見たい。」
なんてまた、冗談めいた
台詞を言ってみる。
画面の中に切り取った僕の世界。
本物のようで、実はそうじゃない。
僕が、パズルのピースみたいな
この一枚の写真を君に見せたって
君は僕の見てた全部を知って
感動することはできない。
僕と同じ気持ちにはなれない。
でも、君に見せたかった。
なんでだろう。見せたかった。
「じゃあ、今日は一緒に帰ろ」
君がそう言って笑うから、
僕はどうしていいかわからなくて。
「…うん」
昨日の空はどこにもなくて、
でも、代わりにそこには君がいた。
「写真、撮ってもいいかな」
僕の三歩前を歩く君と、
薄紫色の空。
「…きれい」
君に向かって、そういったつもりだった。
僕にしてはとても珍しいことだった。
名無し短編でしたん。
読んでくれてありがとう。
しゃしんっていいよね。




